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連載エッセイ [6]
風を歩く
吉野正敏

 
宝風(たからかぜ)
 
 夏、東北地方の三陸沿岸にはオホーツク海からの冷たい北東の風が霧とともにやってくる。人びとは、この風を「やませ」と呼び、冷害をもたらすので、古くから注目してきた。気象学的には偏東風とも言う。
 この冷たい湿った東よりの風が北上山地や奥羽山脈を横断するとき、風上側斜面では雲をつくり、雨を降らせる。そして、風下側斜面を下降するときは乾燥し、高温になる。いわゆるフェーン現象である。秋田県側では、雲が少ないので日射量も多く、コメの生育には好条件をもたらす。秋田県側と岩手県側の気温・湿度・日射量のコントラストははっきりしており、岩手県側が冷害に苦しんでいるとき、秋田県側では平年作以上という場合さえあったと言う。平成の大凶作と言われる2003年には、東北地方全体の平均では作況指数は80であったが、岩手県の作況指数は73で、近年まれに見る深刻な冷害であった。この年、秋田県だけが平年作であった。
 田沢湖町は奥羽山脈の日本海側、すなわち、「やませ」に対し、風下側にあり、風下斜面に刻み込まれた谷を風が吹き降りてくるところに位置している。町の中心部の生保内(おぼない)の周辺は高温で乾燥した風によって、良いコメができるので、この風を「宝風」と呼ぶ。タカラカゼは生保内の民謡に歌われて、広く知られている。生保内の物産店には、宝風の名を付けた酒や味噌などいろいろな物が目につく。町内にはレストランの名前にも、宝風を名乗るものがあり、風の名前が観光資源にまでなるのは、私にとっては嬉しい。
 (写真1)は宝風が生保内に向かって吹き降りる谷を国道46号線が横切るところにかかる橋「宝風橋」の表示、(写真2)はその橋のすぐ横にある偏形樹で、風が上流(写真右)から、下流(写真左)に向かってよく吹くことをしめしている。写真中央部には生保内の街が遠望できる。
宝風橋
(写真1)宝風が吹く谷を国道46号線(盛岡―秋田)が
またぐところにかかる宝風橋の標識

(写真2)宝風橋の横の偏形樹。
宝風が谷の上流(写真右)から下流(写真左)へ向って
よく吹くことを示す。中央が生保内の街。
いずれも、吉野撮影
 フェーン現象にともなう局地風に、その土地固有の名称がついている例は、日本にも、外国にもたくさんある。しかし、“宝物”の“宝”をつけた風の名前はまだ知られていない。よいイメージを持たれている例は、私の知る限りでは次のようなものがある。その一つはカナダのアルバータ州、カルガリー付近はロッキー山脈を西風が吹き降りてきて、やはりフェーン現象のため高温・乾燥したシヌックと呼ぶ風が吹く。カルガリーには、シヌックセンターと呼ぶ大きなショッピング・センターがあり、親しまれている。町には、“シヌック”と言う名のホテルもある。また、“ウエストウィンド”と言う名前のホテル(日本流に言うならば旅館西風屋)もあり、いかに、この風が人びとによいイメージを与えているか、わかる気がする。
 ヨーロッパアルプスはフェーンの名の発祥の地だから、フェーンに関する地名や地域名がたくさんあり、フェーンがもたらす恩恵に目をつけた名もある。例えば、オーストリアのインスブルックの西方、エッツ谷の中には、“フェーンガッセ(フェーン通り)”と言う名の谷がある。この谷では、春、温暖で乾燥したフェーンがよく吹き降りるので、他の谷より早く雪が消え、農作業を早く始めることができる。作物の播き付け後の成長もよいので高い生産量をあげられる。“宝”とまでは表現しないが、やはり好い効果をもたらすフェーンへの長年の想いが感じられる名称である。
 日本とカナダとオーストリアでは、歴史も異なり、文化も違うが、土地に結びついた生活をする人びとが、フェーンの効果をこのように同じく捉えているのは、興味あることと思う。

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