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連載エッセイ [14]
異常気象を追う
吉野正敏

 
花の異常季節
 
狂い咲き

 花の“狂い咲き”という現象は昔からあった。手元の辞典をひいてみると、「草木の花が、その季節でないのに咲くこと」で、「通常は春に咲く花が初冬のころに花を着けることを言う」と書いてある。“二度咲き”という言葉も日本語では使われる。だから、けっして最近の新しい現象ではないことがわかる。
 ところが、この“狂い咲き”現象が頻々と、しかも、かなり広く世界的に起きておきているらしいのである。すでに、日本では2006年10月、九州や中国地方の6県でサクラが季節はずれの開花をしたことが報じられた。その時、龍谷大学の増田啓子教授は、10月に狂い咲きするサクラが昨今めずらしくないことを指摘している。翌年の2007年9月22日には大阪府豊中市北桜塚の大門公園ではサクラが花を咲かせた。夏の猛暑で葉が枯れ落ち、サクラが季節を“勘違い”したのだろうと、マスコミは報じた。
 今年の9月21日−26日、先週のことだが、東京で国際生気象学会が開催され外国から約200人、国内から約100人もの研究者が集まった。そこで季節学に関する分野の研究発表があり、何篇かが、最近の異常な季節現象について報告した。狂い咲き現象や春の植物季節の早まりがこのように世界的だとは思っていなかった私にとっては、よい勉強であった。以下、その結果を紹介しながら、花の異常季節について述べたい。

中国の“二度咲き”現象

 中国は季節現象に関する記述は3千年以上前からあり、季節の認識も深い。近代的な季節学の発達もいちじるしい。中国科学院の地理研究所(最近の名称は地理科学と自然資源研究所)はその中心で、季節現象の観測記録を整理・刊行し、研究成果をあげている。その一つが今回の発表結果で、(表1)にその1部をまとめた。ただし、ここでは“二度咲き”と訳したが、彼らは、英語ではSecond Bloom、すなわち、“第2回開花”と呼んでいる。また、(表1)の値は、中国において正規の季節観測を行っている46観測所の22地点、23種についての記録の集計である。

(表1)中国における二度咲き現象の変化(Q.-s. Ge et al.,2008)

  1960年代 1970年代 1980年代 1990年代 2000年代

二度咲き現象
をみた種の数
3 6 15 10 11
二度咲き現象
を報告した地点数
2 8 11 9 11



 (表1)をみると、二度咲き現象は1980年代に急に増加し、その後横ばい、二度咲き現象を報告した地点数は1970年代すでに増加し、1980年代以降、9ないし11という大きい値である。22地点中の11地点は半分で、観測所の分布は必ずしも中国の全気候地域を代表しているとはいえないかもしれないが、約半数の地点ということは注目に値する。
 日本のサクラとおなじバラ科のサクラ属Prunusについてみると、中国で1960年代, 1970にはPrunus persicaの1種、1980年代にはP. persica, P. salicina, P. triloba, P. triloba var. plens の4種、1990年代には P. persica, P. salicina, P. triloba var. plens の3種、2000年代には0である。
 もちろん、2000年代はまだ終わっていないから、最終的にどうなるかはわからないが、1990年代より地点数はすでに増えており、過去最大の1980年代よりも増えるであろう。
 これらの原因は、中国の研究者達はやはり地球温暖化とみている。植物生理学的な過程についての研究が待たれる。

春の早まり

 春の草木の芽生え、開葉、開花など地球温暖化とともに早くなってきている。では、どのくらい早くなっているだろうか。
 スロバキアの北カルパチア山脈では、2006年末から2007年にかけた冬は250年前に観測が始まって以来の暖冬であった。観測所は海抜115mから1,354mまで10地点あるが、春の植物季節現象に最も関係が深いのは冬の期間における0℃以下の日平均気温を積算した気温なので、その値をこの10地点について求めた。その結果、非常に寒い冬には、地形に起因する気温の逆転が明瞭に出て、海抜600−900mが最も低温で、海抜1,300mくらいのところは900mよりやや暖かい。しかし、温暖な冬にはこのような逆転現象はみられず、地域差も小さいことが明らかになった。これは、スロバキアのブラティスラバ気象局の人達による研究の結果である。これに従えば、北カルパチアでは春の季節現象の早まりは地域的に差が小さくなってきたことが推定される。
 上に紹介した中国の人達の研究では、1963年から2007年までの観測結果を分析すると、約5.5日早くなっており、10年に1.25日の率で早くなっている計算である。しかも興味あるのは、この傾向は中国の東北地方で最も明瞭、次いで華北平原、西北中国の東部地域である。これは、温暖化が高緯度ほど明瞭であることを反映しているのか、あるいは、中国東北部は夏かなり高温になるので、春の気温上昇も早くなってきたのが原因かと思われる。
 オーストラリアでは1983年から2006年までの24年間について調べると49種のうち8種が春の開花が平均1.8日/年の割合で早まっているということを、オーストラリアのメルボルン大学、南オーストラリア大学の研究者らが発表した。アカシアの仲間Acacia paradoxa や、Wahlenbergia strica が最も顕著だという。この割合は日本や中国の例では考えられないような大きい値で、気候条件の差か、種の特性なのか、今後の検討がまたれる。
 今回の国際会議では、日本の研究成果ももちろん発表された。東京大学の藤沢・小林博士らによると、1977年から2004年までの28年間に黒石・北上・横手・山形・福島・鈴鹿の6地点でリンゴの開花は0.21−0.35日/年で早くなった。これは3月と4月の平均気温との相関が有意であるという。
 すでに、この連続エッセイ「異常気象を追う」の[3]で、エル・ニーニョの年とラ・ニーニャの年におけるサクラの開花日の差を述べたが、日本の場合についてみると(表2)のとうりである。


(表2)地域の数で示す日本におけるエル・ニーニョ年とラ・ニーニャ年のサクラの開花日

開花日 エル・ニーニョ年*

ラ・ニーニャ年**


非常に早い 18 0
早い 30 5
平均から、やや早い 9 5
平均から、やや遅い 5 18
遅い 3 23
非常に遅い 0 14

合計*** 65 65

*)エル・ニーニョ年:1972、1976、1977、1982、1987年
**)ラ・ニーニャ年:1965、1970、1974、1975、1988年
***)日本は13地域に区分し、5年の総計で65となる


 (表2)をみれば、エル・ニーニョ年は開花が早く、ラ・ニーニャ年には遅くなる状態がはっきりする。詳しくはこの連載エッセイ[3]の“お花見”を読んでいただければ幸いである。

十月桜、その他

 日本には、サクラの品種は多い。近年の地球温暖化とは関係なしに、あるいは、異常気象とは関係なしに、われわれの祖先は変わった新しい品種を育ててきた。その中でも、十月桜は八重で白から薄ピンクまたはやや濃いピンクの花である。冬桜は秋から春にかけて咲く一重で白色または薄いピンクの花である。広い意味では、十月桜も含めて、冬桜と呼ぶ。 一方、四季桜というのもある。こう考えてくると、サクラの専門家でない私には、園芸品種の系統や特性は整理つかないのが正直なところである。
 しかし、最近の異常な9月・10月の開花はソメイヨシノなど、本来は春3−4月に年1回咲いていたサクラの話である。夏にできた翌年の春に咲く花芽はやがて休眠状態に入り、冬になって気温が5−7℃の時間が800−1,000時間になると目覚める。これを休眠打破という。花芽は2−3月になって気温があがるにしたがって大きくなり、やがて開花する。 だから、冬の気温が充分に下がらないと休眠打破がよくできず、春の開花が遅れたり、場合によっては不発に終わる。しかし、あるものは秋に持ち越し、何らかのチャンスを捕らえて、9−10月に開花するのではなかろうか。
 サクラの野生品種・園芸品種は本来このような特性を強くもっているので、十月桜・冬桜・四季桜など、いろいろな季節に咲く種々の桜ができたのではなかろうか。
 また、最近の地球温暖化によるソメイヨシノの秋の異常開花も、上記のような特性があるので、日本では四国・九州などを中心にして冬は暖かく、夏は高温になる地方によくみられるのだろう。


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