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連載エッセイ [19]
異常気象を追う
吉野正敏

 
北アメリカの五大湖と雪
 
五大湖東岸の雪

 北日本から西日本の日本海側では雪が多い。北陸の山間部では2m以上の積雪はまれでない。雪の多い年には、山間部では3-4mも積もり、“異常な”深雪地帯である。
 これは日本海岸に沿って対馬暖流が北上し、海面の温度が比較的暖かいところへ、北西ないし西の低温な気流(冬のモンスーン)が吹いてきて、海面から水蒸気とエネルギーをもらい、その気流が陸上やさらに内陸の山地で強制上昇により雪雲を発生し、降雪となり、積雪をもたらすためである。このような冬の日本海側の積雪については、日本人ならおそらく誰でも知っているだろう。しかし、全く同じ現象が北アメリカの五大湖の周辺地域でも見られるということは、意外と日本人は知らない。
 中緯度で、西に暖かい水面があり、東に陸地・山地がある地域なら、どこにでも起こりうる現象なのである。ただし、冷たい気流が渡るこの水面の幅はおおよそ100km以上なければ、充分に水蒸気やエネルギーをもらえないので、そのような限定条件はある。五大湖の場合、あとでそれぞれについて述べるように、さまざまな形をしている。したがって、積雪分布に及ぼす影響もさまざまではあるが、非常に大まかに言って、上空は西風だから湖の西岸は少雪、東岸は多雪である。
 日本人には、五大湖のスケールについて、いま一つ実感がない。面積だけでは不十分であろうが、(表1)に五大湖と日本で最大の琵琶湖の比較を示した。

(表1)北アメリカの五大湖と琵琶湖の面積

湖名 面積(km2

スペリオル湖 82,367
ミシガン湖 58,016
ヒューロン湖 59,570
エリー湖 25,821
オンタリオ湖 19,009
************************
琵琶湖 670


 驚くなかれ、スペリオル湖は琵琶湖の123倍、五大湖のうちの一番小さいオンタリオ湖でも28倍である。日本の中部地方の面積が約60,000km2だから、ミシガン湖やヒューロン湖とほぼ同じである。陸面と水面の違いはあるが、日本の中部地方の日本海側の積雪分布と、五大湖のそれぞれの湖の東岸の積雪分布とは、気象や気候の分布現象としてほぼ同じスケールと考えてよかろう。五大湖のたとえばミシガン湖の西岸と東岸の差は、日本の中部地方の日本海側(北陸地方)と太平洋側(東海道地方)との差に対応する地域スケールであることを留意したい。

五大湖周辺の積雪分布

 五大湖周辺の積雪分布を少し詳しく見ると、(図1)のとうりである。西のほうから述べよう。先ず、スペリオル湖の東岸と、南岸のほぼ中央部で北方に突出した半島部は300cm以上の地域がある。その地域を取り巻いて250-300cmの地域が南岸と東岸に広がる。五大湖の中ではそれぞれの対岸と比較して最もはっきりした対照をなしている。これはスペリオル湖が東西約500kmに及ぶためであろう。南岸の半島部だけを考えても、北西ないし西の風は湖面を100-200km渡ってきたことになる。
アメリカ合衆国における2008年6月の洪水
(図1)北アメリカ五大湖周辺地域の積雪深の分布(K.C.Heidorn.の資料による)

 ミシガン湖はぶら下がった瓜の形をしており、南北に長く450-500kmあり、東西は狭いところでも100km、平均すると百数十kmあろう。風上に相当する西岸は南部を除いてほとんどが100-150cmだが、湖をわたってきた風は東岸には200cm以上の積雪をもたらす。さらに湖岸をはなれ内陸に100kmくらい入ると250-300cmとなり、ミシガン湖西岸と東岸のコントラストが明瞭である。丘陵・山地の地形の影響もあるが、ミシガン湖の上を吹送する距離が長いことも理由の一つであろう。日本の北陸沿岸から、福井・石川・富山・新潟各県の内陸山間地における豪雪地帯の出現と、同じ位置関係である。
 ヒューロン湖は五大湖の中では形が最も悪い。しかし、北東が頭、南西が尻尾の飛ぶ鳥のようにも見える。鳥の左羽根から尻尾は西風の上流で、鳥の頭から右側の羽根は西風の下流に相当する。前者は200-250cm、あるいは150-200cmであるのに対し、後者では250-300cmの地域が広い。すなわち、湖の影響で50-100cm大きくなっている。
 エリー湖は西南西から東北東に延びる割合簡単な形をしている。ちょうどその影が東に映ったように250-300cmの地域がありその中に300cm以上の地域がある。200-250cmの範囲も、エリー湖を西南西に飛んでゆくロケットと見ると、ロケットのあとの噴煙の軌跡のようにもみえる。しかし、やや南側にずれていることは上空の気流が西南西でなく、真西か、やや北の成分をもっていることを推定せせる。とにかく、南岸と北岸のコントラストは見事である。
 オンタリオ湖はほぼ東西に延びるので、その影響は東岸から内陸方向の東に200km延びる300cm以上の地域となって現れる。五大湖の中ではオンタリオ湖の面積は一番小さいが、上空の気流の方向と湖の長軸の方向がほぼ一致しているので、積雪に及ぼす湖の影響は大きい。すなわち、気流の上流部であるエリー湖の西端部は100-150cmに対し、下流部の東端では300cm以上で、これは五大湖中の最大のスペリオル湖の影響よりも大である。

積雪の地域差、年による変動と人間活動

 (図1)に、シカゴ・デトロイト・トロントの位置を記入したが、いずれも積雪深の浅い地域にある。このほか、たくさんの中小都市があるから、都市の立地と積雪深との関係を一般化するのは無理であろうが、湖は船舶による物資の輸送に好条件をもたらすから、湖岸で、しかも雪が少ないことは望ましいことには間違いない。
 さて、温暖化した場合、積雪の地域差はどうなるだろうか。最初に述べたように水面温度と気温の差が重要である。日本の北陸沿岸の暖流の表面温度の上昇と気温の上昇とは並行してはいないであろうから、将来、温度差が大きくなるか、小さくなるかで雪の量はきまる。五大湖の湖水は外海からは孤立している。一方、日本海側の暖流は世界の海域と連動しているので、将来の温暖化の影響は異なる。
 また、一般的に言って、冬のシベリア高気圧は強大で、これがかかわる日本海上の季節風は強い。しかし、北アメリカ高緯度の高気圧は小さく弱い。したがって両者に及ぼす温暖化の影響も当然異なる。こう考えると、にわかには答えが出ない。今後の研究に待つところ大である。
 ただ言えることは、例え温暖化で積雪深が減少するような長期傾向があっても、その間には必ず寒冷で豪雪の年がはさまる。そのとき、少雪に適応した社会・経済が受ける損害額は莫大にのぼることが見込まれる。その対策はいわゆる異常気象対策の一つではあろうが、われわれはまだ経験したことがないものである。


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