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連載エッセイ [20]
異常気象を追う
吉野正敏

 
冬の雷
 
冬の雷、夏の雷

 世界的にみれば、中緯度では雷が活発なのは夏である。積乱雲がよく発達するのは中緯度では夏だから、積乱雲の中に発生する雷が夏に多いのは当然である。四季がない熱帯では毎日のように午後から夕方にかけて雷をともなう夕立がある。特に雨季にはこの雷雨活動がはげしい。赤道地方では雷日数は100日以上に達し、ナイジェリアやケニヤなどでは180日を超えるところさえある。2−3日に1日は雷雨があるという頻度はすごい。一方、高緯度では積乱雲の発達が悪いので、雷の発生は少ない。
 日本でも雷は夏に多い。しかし、本州の日本海側では冬にも多く、これについては、この連載エッセイ[10]“雷雨活動”にも述べたので、参考にしていただきたい。特に東北・上越や中越・北陸・山陰地方で、季節的には晩秋から冬に雷日数が多い。
 かなり以前のことだが、石川県小松基地の航空自衛隊機が冬の雷に打たれて墜落した。その時の隊長の談話が新聞に載っていたが、「。。。。冬に雷があるとは思っていなかった。。。。」とあった。私はこの記事を読んで、“この人たちは、アメリカか日本のごく一般的な気象学の教科書で学んだだけで、日本の局地気候学をまったく学んでいなかったのだろう”と思った記憶がある。
 日本海側の代表的な4地点における月雷日数を(表1)に示す。11月・12月・1月に極大となることがよくわかるであろう。夏の7・8月にも頻度は大きいが、晩秋から冬の1月または2月までに集中していることが明らかである。比較のため、太平洋側の銚子をあげた。ここでは全体に雷日数は少なく、夏から初秋にかけて頻度の極大がある。
(表1)日本海側の諸地点における雷日数。比較のため、太平洋側の銚子もあげた。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

酒田 2.5 2.0 1.4 1.1 1.8 1.8 2.3 3.1 3.2 4.8 6.2 5.7 36.0
輪島 3.5 1.8 0.9 1.1 1.7 1.9 1.9 2.7 2.7 3.2 5.6 5.7 32.7
金沢 5.9 4.3 1.3 1.1 1.3 1.6 2.7 2.9 2.0 2.4 4.9 7.2 37.4
敦賀 5.0 2.8 1.1 1.0 1.5 1.4 3.2 3.2 2.5 1.3 2.4 4.8 30.2

銚子 0.6 0.8 1.0 0.8 1.2 0.8 1.3 1.5 1.4 0.9 0.9 1.0 12.2

(注:雷日数は、雷電または雷鳴があった日数で、弱い雷鳴のみの日は除く。1971−2000年の統計。理科年表による)

 また、本州の日本海側では最近、雷日数の増加が明らかである。1970年前後の約30年間を比較すると、北陸では9.2日も増加している。秋田上空の成層圏下部の気温は−4.0〜−5.5℃/100年の割合で寒冷化しているが、地面付近の気温は温暖化しているのだから、大気の不安定度は大きくなる傾向にあるためと指摘されている。地面付近の気温の上昇はいわゆる地球温暖化のためとしても、下部成層圏の気温はどうして寒冷化しているのか、その原因はまだよくわかっていない。

“雷おこし”と“ハタハタ”

 日本海岸では、以上に述べたように冬の初めに雷の頻度が高い。雷は冬の季節風の吹き始めの指標であり、雪の季節がやってくる前ぶれでもある。土地の人びとはこの頃の雷を“雪おこし”と呼ぶ。
 秋田県の海岸を中心として、“ハタハタ”の季節が始まる。“ハタハタ料理”は“しょっつる”とともに秋田の料理の代表である。毎年11月から12月にかけて、抱卵したハタハタが男鹿半島を目指して大量にやってくる。海草に卵を産み付けるためである。沿岸には小型の定置網がいくつも張ってあり豊漁となる。30年くらい前までは秋田県における海面漁業水揚量の約半分は、ハタハタであった。
 東京などの都会のお寿司屋さんに、「魚へんの文字(魚名)一覧の額」があがっていることがある。その中に、魚へんに雷の文字があり、これをハタハタと読む。日本で作られたいわゆる国字であるが、気象の季節と漁獲や料理を組み合わせたこの文字に私は感心する。

ミシガン湖の東岸の冬の雷

 連載エッセイ[19]に、北アメリカの五大湖のそれぞれ東岸では、日本の本州の日本海側と同じく、湖の影響で降雪・積雪が多いことを紹介した。日本海上を吹いてきた西〜北西の風が水面から熱エネルギーと水蒸気をもらい、陸上にあがってさらに日本海側の山地に多量の雪を降らせる。これと同じく、五大湖の湖面上を吹いてきた西よりの風が東岸で上陸してさらにその風下にある丘陵・山地に雪を降らせ、豪雪地帯が東岸地域にあることを紹介した。
 それでは、五大湖の東岸地域では冬の雷はどうなのか。やはり、雷の発生・活動は活発で雷日数は多いのだろうか。
 すでに40年前ではあるが、イリノイ州政府の水調査局「自然資源・保全課」により、プロジェクト研究「ミシガン湖盆地の降水の気候学(1968年)」が行われ、その結果をシャンノン(S.A.Changnon, Jr.)がまとめた。それによると、降雪量や積雪量はミシガン湖の東岸で湖の影響によって増加することが明らかである。しかし、冬の雷については、調査した10年間では1〜5回、湖の影響で雷があっただけであった。(図1)に冬・春・夏・秋の別に湖の影響による雷の増加(+)と減少(−)を示す。

(図1)ミシガン湖が雷活動に及ぼす影響(全体の日数に対する%)。(Changnon, 1968による)

 春になると湖の影響による雷はやや多くなり、夏に最大になり増加(+)の数が大きくなる。秋は夏よりやや少ないがそれでもかなり顕著で、分布のパターンは夏と同じである。ただし、ミシガン湖の北部で西方から延びる大きい値の帯状の地域があるが、これはスペリオル湖の影響だと彼は言っている。結局、冬の雷はこの地域ではまれで、夏が極大という結論である。

冬の雷、解明の課題

 さて、それならば日本海岸では、なぜ晩秋から冬にかけて雷が多いのか。これからの研究に待つのみだが、まず検討すべきは以下の問題ではなかろうか。1)世界中に晩秋から冬に雷が多くなるところは他にないのか。2)雷発生日の積乱雲の生成を衛星画像で季節別にみると特徴はないのか。3)日本海側で山雪型と里雪型に対応して、雷の発生はどう異なるのか。4)ミシガン湖の東岸地域には里雪型はないのか。5)日本海で発達する低気圧にともなう寒冷前線の活動(雷を含む)の近年の変化はどうか。6)北陸不連続線に相当する局地不連続はミシガン湖東岸にはないのか。そして、7)地球をとりまく西風ジェットの季節的変動と暖流の北上の季節的変動とのかかわりの解明も必要であろう。(表1)に見られるように東北の日本海岸では11−12月に極大になり、金沢以西では1−2月に極大になるのは、何か、大きな大気循環と暖流の季節変動が関係しているように思える。少なくも日本付近と五大湖周辺との差は、大きなスケールでも解明しなければなるまい。


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