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連載エッセイ [30]
異常気象を追う
吉野正敏

 
雪形と異常気象
 
雪形(ゆきがた)とは何か

 4月下旬から5月上旬、それまで真白だった周辺の山やまの斜面で雪が解け始める。現われてくる黒い岩肌は、遠くからみると何かの形に見えてくる。さらに毎日の気温が高くなり、斜面の雪が消えてゆくとどこか、厚く積もっていたところだけ雪は残り、今度は黒い地肌に白く残った雪の模様は、遠望すると何かの形に見える。
 その形は、山によって異なるが、斜面の微地形が関係しているのだから毎年同じである。しかし、雪の多い年と少ない年、春の来るのが早い年と遅い年で、現れる期日がずれてくる。したがって、その模様は、山麓の地域にその年の晩春から初夏にかけた季節の遅速を知らせる最良の目安である。テレビ・ラジオ・新聞などは、地域的に細かい情報は教えてくれないから、それぞれの土地に住む人びとには、雪形は年による違いを知る重要な情報源である。特に、近年は地球が温暖化して温い冬が多いが、その間に挟まって時として起こる寒波・豪雪の影響はどうかなど、異常気象の影響の推定・判定などには欠かせない情報源だと思う。

雪形の分布地域

 日本で雪形がよく見られるのは、雪形が積雪に関連した現象だから、冬の季節風による積雪が多く、高い山がたくさんある地域である。いわゆる日本海側気候の地域が主で、その分布地域を少し詳しく紹介したい。
 雪形コレクション(http://uub.jp/nam/yukigata.html)は431件の雪形の名称・その山名・説明がリストアップしており、非常によい資料である。その資料を県別にまとめてみると、雪形の名称数は豪雪地域の新潟県において最も多く報告されており186件、すなわち全体の約40%、次いで、高い山が多い長野県が65件で約15%である。東北地方では雪が深い秋田県が49件、約10%で最も多い。県別にみると(表1)の通りである。

(表1)県別の雪形の名称の件数

日本海側気候地域 中間地域 太平洋側気候地域
県名 件数 県名 件数 県名 件数

青森県 39 岩手県 22 宮城県 4
秋田県 49 福島県 26 栃木県 5
山形県 34 山梨県 5 群馬県 3
新潟県 186 岐阜県 2 静岡県 2
長野県 65     兵庫県 1
富山県 14     愛媛県 2
石川県 11        
福井県 1        

資料は“雪形コレクション” 筆者が集計した。

 雪形の名称がしられている地域の南限は富山・石川・岐阜・静岡までで、それ以西ではほとんど知られていない。このことは、気候条件と海抜高度の条件でほとんど説明がつく。したがって、兵庫県の氷ノ山、四国では、愛媛県の石鎚山は例外的である。これまで、石鎚山の山頂部には飛び地状に日本海側気候地域があることが指摘されているが雪形の分布にもそれが現れることは、非常におもしろい。言い換えれば、雪形が山岳の雪の気候状態を敏感に反映している証拠である。

駒ケ岳・岩手山の雪形

 いま、このエッセイを書いている部屋の窓から、岩手県と秋田県の県境にある駒ヶ岳の雪形がくっきりとみえる。(図1)と(写真1)が1週間前の5月5日の状態である。

(図1)岩手県と秋田県の県境にある駒ヶ岳の“駒”の雪形。山頂近くにある親馬と斜面左の下方にある仔馬の雪形を岩手側の雫石からみた。(写真1)からスケッチした。

(写真1)岩手県と秋田県の県境にある駒ヶ岳の雪形。
(雫石にて2009年5月5日14:00 吉野撮影

 ここに住むようになって10年以上になるから、この雪形を観察し始めて10年以上になる。頭を右にして、頭と前脚はよくわかるが、後ろ脚は秋田県側にあって岩手県側のこの位置からは見えないのだというが、秋田県側に行けば後ろの脚の部分だけ見られるわけではない。
 盛岡から秋田に向かう観光バスのガイドさんは、“後脚は秋田側にあります。ですから、岩手側は飼料を食われるだけ、秋田側は肥料をもらうだけです。ですから、秋田側ではうまい米がたくさんとれ、裕福なのです。岩手側はいつまでも貧乏なのだそうです。”と言って、乗客を笑わせるという。筆者は観光バスに乗ったことがないので、この話は本当かどうか知らない。しかし、もし、私がそのバスに乗っていたとすれば、こう付け加えるだろう。“親の馬の左斜面の下方にはやはり頭を右にして仔馬がついてきています。これは、これまで指摘されていなかったことで、日本には駒ヶ岳という名の山はいくつもありますが、子ずれの駒は岩手だけです。少子化が経済活動にまで深刻な影響を及ぼすといわれている昨今、岩手の将来は明るいのです。”

(図2)岩手山の“ワシ”の雪形。岩井崎昇氏が盛岡で2009年3月20日撮影の写真(朝日新聞3月22日)からスケッチした。

(写真2)岩手山頂を南側から小岩井付近より。
(2009年5月5日14:20 吉野撮影

 (図2)は2009年3月20日の岩手山の山頂付近の現れたワシの雪形で、盛岡在住の北井崎昇氏が撮影された写真(朝日新聞の3月22日)からスケッチしたものである。このような見事なワシの形はめったに見られない。岩手山は岩鷲山(がんしゅざん)とも呼ばれるゆえんである。
 ところが、5月5日には(写真2)のようにかなり黒い山肌が広くなり、これはみる方角の差もあるが、羽根に対して胴体が大きくなり過ぎてしまった。むしろ、鷲の形は崩れてしまったと言えよう。

異常気象との関係

 水田耕作のシステムも変化したし、方法も昔のようではない。しかし、田植えの準備や、田植え後の水の管理や、雑草刈りなど、農家の人たち個人の作業計画に季節の遅速の要素はやはり欠くことができない。特に異常気象の時には、適確な、きめの細かい判断が必要である。それには、雪形を利用できる地方はそれだけ有利なのだから、利用しない手はない。
 雪形は、民俗学的な興味の対象であるばかりでなく、その地域の上空の気候状態を直接知らせてくれる情報源としてきわめて大切である。異常気象の重要な局地的な情報源である。


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