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連載エッセイ [32]
異常気象を追う
吉野正敏

 
世界と日本の洪水
 
洪水・鉄砲水・都市型降雨・都市型洪水

 異常気象にともなう数々の災害のうち、近年、特に目立つのが、洪水・鉄砲水・都市型降雨・都市型洪水である。不幸にして、日本は昔から洪水が多い。出雲の国の神話ですら、斐伊川上流部の洪水対策に成功したことが、国造りに関連したように組み立てられている。
 農村地帯では河川の堤防が決壊して水田地域は一面の水面になってしまう。集落内に水が入り、各家の床下浸水、やがては床上浸水となる。このような風景が毎年どこかでみられる。川の水量は急に増加し、水位があがり、濁流が川幅いっぱいに流れるさまも、テレビでよく目にする。避難が遅れれば水に流され、水死する。
 日本には“鉄砲水”という語がある。もとは山間地の小河川で、夏の夕立のあとなど、急に水かさが増し急流が出現するさまを言う。英語の“フラッシュ洪水(flash flood)”がこれに相当するのであろう。群馬県の利根川の最上流部地域で、このような鉄砲水を“猫まくり”と呼ぶと聞いたことがあるが、語源は不詳である。よく発生するが、人命にかかわることはまれであったようである。縄張り巡回中の猫が、あまりに急な増水で我が家にもどれず、困っているさまが何となく想像できる。言ってみれば、悠長な風景ではある。
 ところが、近年、都市で鉄砲水がよく起こるようになった。都市人口の増加や都市域の面積拡大、それにともなって排水形態は変化するが、対策はそれに対応しきれず、排水能力が低下するため、時間をかけてゆるやかに流出することができず、都市内の小河川に流れはいり、鉄砲水となる。また、都市域における降雨も、都市における蓄熱のため局地的に強くなる場合が多くなり、狭い地域に強雨・豪雨が集中するようになる。都市型降雨の発生回数が増えている。都市河川内で仕事中の作業員が短時間に急に増水したために、逃げ遅れて水死するという事故も発生している。

世界の洪水の発生回数の変化

 (図1)は1980年から2006年までの世界における災害の種類別の発生回数の変化を示す。ここで言う災害の回数とは、大きなリスク損害の報告件数である。最近、国連がまとめた「災害リスク軽減に関する地球アセスメント報告2009」のデータによる。

(図1)洪水・降雨などによる非常に大きなリスク損害の報告数の変化、1980−2006
(United Nations, 2009, Risk and poverty in a changing climateによる)

 干ばつ、熱波、寒波、高潮などは大きな増加傾向は見られないが、洪水、鉄砲水、都市型降雨、都市型洪水の近年の増加は極めてはっきりしている。特に1990年代以来の急激な増加の傾向は著しく、最近、その発生回数は2,000件を上回る。また、注目したいのは、1983、1988、1993、1998、2004年にピークがでており、5−6年の間隔で明瞭な極大が現れている。そのピークは近年になるほどするどく、しかも、大きい。
 次いで、火災・森林火災が目立った増加傾向を示している。しかし、最近でも1,000件がピークで、波形も上記の洪水などの場合より不規則である。漂砂・なだれ・地すべりなども増加傾向は認められるが、近年でも、1,000件以下である。

世界の重大災害

 世界の重大な災害とはどのようなものであろうか。日本の大きな災害の特色はどうであろうか。まず、(表1)に世界の大災害を死者の数で第1位から第10位まで上げた。


(表1)近年における死者数からみた第1位から10位までの大災害。1975年1月から2008年6月までの統計*

順位 国名 災害 死者数

1 1983 エチオピア 干ばつ 300,000
2 1976 中国 唐山地震 242,000
3 2004 南インド洋 インド洋津波 226,408
4 1983 スーダン 干ばつ 150,000
5 1991 バングラデシュ サイクロン“ゴルキー” 138,866
6 2008 ミャンマー サイクロン“ナルギス” 133,655**
7 1981 モザンビーク  南モザンビーク干ばつ  100,000
8 2008 中国 四川地震 87,476
9 2005 インド・パキスタン カシミール地震 73,338
10 2003 ヨーロッパ ヨーロッパ熱波 56,809***

*データは、UN(2009):Risk and poverty in a changing climate. 207 pages.による。
**連続エッセイ[6]を参考にされたし。
***連続エッセイ[9]を参考にされたし。

 この(表1)からわかることは以下の通りである。(1)アフリカの干ばつによる死者数が多い。(2)南アジアのサイクロンによる死者数は多い。(3)死者数が多い大地震の回数が10の内の3をしめる。もし、津波を含めると4となる。(4)第10位だがヨーロッパの熱波を注目すべきである。地球温暖化と関連しているかも知れない。(5)死者数からみたこの表に、日本はでてこない。
 次に世界における近年の大災害を、被害額の第1位から第10位までによって考えたい。


(表2)近年の被害額からみた第1位から第10位までの大災害。(1975年1月から2008年6月の統計)*

順位 国名 災害 被害額 (×10憶ドル)

1 2005 アメリカ合衆国  ハリケーン“カトリーナ”**  125
2 1995 日本 神戸地震 100
3 2008 中国 四川地震 30
4 1998 中国 揚子江洪水 30
5 2004 日本 中越地震 28
6 1992 アメリカ合衆国 ハリケーン“アンドリュー”** 26.5
7 1980 イタリア イルピニア地震 20
8 2004 アメリカ合衆国 ハリケーン“イヴァン” 18
9 1997 インドネシア 林野火災 17
10 1994 アメリカ合衆国 ノースリッジ地震 16.5

*データ源は(表1)と同じ
**吉野正敏(2008):世界の風・日本の風。成山堂書店。を参考にされたし。

(表2)からわかることをまとめると次の通りである。(1)アメリカ合衆国のハリケーンによる被害額は非常に大きい。(2)日本の地震による被害は2件はいっており、台風を上回る。(3)中国も地震が2件はいっている。日本と同様である。(4)第10位までに5件が地震であり、異常気象と半々である。(5)第9位のインドネシアの林野火災は近年の人間活動と乾季にかかわる気候の問題である点に注目しなければならない。
 このように、死者数でみた場合と経済的被害額でみた場合ではかなり違いがある。特に日本は、死者数は諸外国に比べて少ないが、被害額からみると、世界でも屈指と言わねばならない。


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