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連載エッセイ [37]
異常気象を追う
吉野正敏

 
南大東島の異常気象
 
日本の亜熱帯、南大東島

 台風シーズンになるとテレビの天気解説で南大東島の名がよくでてくる。島は、九州の鹿児島のはるか南方、そして沖縄の那覇の東方約390kmの位置にある。緯度では北緯25度54−58分、東経131度12−15分にある。日本しては、台風がやってくる地域の最先端にある監視所みたいな位置である。島の大きさは南北約6.5km、東西約5.8kmだから、けっして小さい島ではない。
 島の年平均気温は22.9℃で那覇とほぼ同じだが、年降水量は1,673mmで、那覇より北太平洋高気圧の中心に近くなるから、那覇より約20%少ない。島の最大の問題は風で、台風による被害は毎年大きい。島の主要な産業であるサトウキビ栽培は干ばつと台風による収量減が課題である。
 台風による強風は毎年のように発生するのだから、これはもはや異常気象とは言えないかも知れないが、あとで詳しく述べるように、台風が来ない年や、大きな被害をもたらす台風が1年に何度も来る年もある。やはり、異常な状態がはさまるのである。

南大東島の台風

 台風が接近してくると、大きなうねりが海岸に押し寄せ、岸でくだける。ドドーッという地響きとともに数mから10m以上のしぶきが高く上がる。島の人たちは、“しぶきで島が動く”と表現する。
 この怒涛を1986年8月25日の台風13号のとき、NHKが放映の裏付けとして島の西港に波高計や波圧計を設置して測定した。その結果では、平均波高は5m、最高波高は10mに達し、波の圧力は1平方mあたり7−10トンであった。この波のエネルギーは百万都市の2日分の消費電力に相当する。膨大なエネルギーであることがわかる。もちろん、島の気象台の地震計はこの脈動をはっきりと記録している。
 台風シーズンの6月から11月までの月別の日最大風速m/s、日最大瞬間風速m/s、台風が300km以内に入った平均個数/年を(表1)に示す。

(表1)南大東島の台風による強風の記録、1947−1986年

日最大風速 日最大瞬間風速 台風が300km以内に入った
平均個数

6 24.7 m/s 39.5 m/s 0.5 個/年
7 28.6 56.6 2.8
8 30.5 53.5 4.0
9 31.1 51.1 2.0
10 37.8 50.8 1.8
11 32.5 54.2 1.7

[データは、南大東村誌編集委員会(1990):南大東村誌(改訂)、南大東村役場発行、より得た]

 このデータをまとめた40年間についてみれば、7月から11月まで、いずれの月も記録的な日最大瞬間風速は50m/sを超す。しかも、300km以内の範囲に入る台風が全部島に接近するとは限らないとは言え、影響は強く受ける。それが例えば8月には年平均で4個ということは、毎週一回は台風が接近するということである。これは40年の平均だからそれほど頻繁でない年もあろうが、異常な年にはもっと回数が多いことを意味する。この付近を台風銀座と言うが、島の住民にとっては大変な生活環境である。詳しくは「吉野(1999)風と人びと、東京大学出版会、116−120」にも書いたので、参考にしていただければ幸いである。

台風災害

 台風による災害のうち、住家の全壊・半壊家屋をもたらした場合だけを拾うと(表2)のとうりである。

(表2)台風による住家の全壊・半壊家屋数の記録(1951−1986)

  全壊家屋数 半壊家屋数 瞬間最大風速m/s

1958 7 20   1 2 46.7
1958 9 15   5 7 54.1
1958 11 1   0 9 55.8
1961 7 29   10 1 58.0
1961 9 14   1 0 45.7
1961 10 2   16 20 65.4
1962 11 16   0 1 46.4
1964 9 23   0 2 51.1
1965 11 25   8 5 45.1
1972 9 15   0 1 35.2
1974 8 25   0 6 46.3
1976 7 2   2 2 56.6
1976 7 17   0 1 44.8
1976 11 6   13 14 54.2
1981 10 21   1 1 45.2
1982 8 25   0 1 39.0
1986 8 25   2 1 53.5

[データは(表1)と同じ]

 (表2)を詳しくみると幾つかの興味ある事実がわかる。例えば10年ごとに区切ってみると全壊家屋数も半壊家屋数も減ってきているようである。そこで、(表3)にこれらの傾向をまとめてみた。参考のために、住家以外、すなわち、農業・通信施設・道路などに災害をもたらした台風の個数の10年ごとの個数を記入した。(表2)と(表3)からわかることは以下のようにまとめられる。

(表3)南大東島における1960年代以降、10年ごとに区切った災害回数(台風個数合計)、住家被害(1回あたりの家屋数)、その台風襲来時の日最大瞬間風速の平均、農業・通信施設・道路などに災害をもたらした台風の個数

年代 災害回数 全壊家屋数 半壊家屋数 日最大瞬間風速 台風個数

1960 6 5.8 4.8 52.0 9
1970 5 3.0 4.8 47.4 11
1980 3 1.0 1.0 45.9 15


 箇条書きに現象をまとめると、(1)被害が発生する年には3回も起こることがある。つまり、まとまって発生する傾向が強い。(2)1960年代、1970年代、1980年代と区切って傾向をみると、住家災害の回数は減少し、最大瞬間風速も減少の傾向がある。(3)それに反し、住家災害以外の農業・通信施設・道路などの災害は増加の傾向がある。(4)また、それに影響を及ぼした台風の数も増加している。
 以上の傾向が見られる理由については、種々考えられるが、住家は古い木造住宅が次第に新しい耐風構造の建築に変わっていること、災害をもたらした台風の数は増えているし、人口の増加、農業による土地利用の高度化、通信施設の増加、道路網の拡大など、被害を受ける対象物の増加が理由としてあげられよう。異常気象に対応する人間社会もまた変化・発展しているので、対応の様相もまた変化するが、(表3)はそれをよく画きだしている。

サトウキビの収量と異常気象

 南大東島はサトウキビの島である。島全体がサトウキビ畑で、収穫したサトウキビは製糖工場に運ばれ、製品化される。島は、その昔、無人島であった。八丈島からやってきた人たちが、精糖工場を造るべく努力に努力を重ねて、今日を築いた。
 サトウキビの収量と気象との関係を調べるのにこれほどよいところはない。サトウキビ収量の村役場の資料は、ある一会社の管理部門が整備している資料の性格を持つ。長年、同じ精度で、客観性を保つ資料である。一方、南大東島には気象台が古くからあって、本土とおなじ基準で観測し資料を整えている。そして北太平洋高気圧の西部、すなわち、毎年の発達の強弱が敏感に反映する位置にある。言い直せば、異常を敏感に捉えられる位置にある。
 私はここに目をつけ、南大東島の気候とサトウキビ収量との関係を研究した。そして地球が温暖化したときの収量予測をした。その結果はIPPCの第2次報告(1996)に引用されているが、気温が2℃上昇すると南大東島の5−10月の降水量は25−30%減少し、サトウキビの収量は8%減少するとされた。
 (表3)の結果も1990年代や2000年代のデータを加えるとどうなるか、また、上記の地球温暖化した場合の気候予測も最近は非常に精度が高くなっているから、改めて調べ直す必要があろう。


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