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連載エッセイ [6]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
サクラの開花・満開
 
お花見はできるか

 気象庁がサクラの開花・満開の予測日を発表しないことになって、テレビや新聞で話題が一つ減ったような気がする。代わって民間会社などが競って発表するが、時代の流れであろうか。日本の文化にも関係した春の一大イベント・・・・と言ったらば大げさかも知れないが、お花見は、日本人ならばだれの心にも潜む心理状態をかもし出す。お花見は国民的な行事なのだから、国の機関がやるべきで、その予測が“当たった”、“外れた”と言うのがまた話の種として、気象庁さんには申し訳ないが、春の宵の酒の肴だったのである。
 ところが、地球温暖化によって、暖冬の程度がある境界値以上だと、サクラの冬季休眠が充分ではなくなり、春になって休眠打破が行われず、サクラの花が咲かない状況になることが、九州の南部あたりでは考えられると言う。特に暖かい冬には、西南日本のかなり広い地域でもこのような状態が出現するかも知れないそうだ。お花見ができない状態はちょっと想像しがたいが、実際に起っても不思議でないと言われている。誰が予報をだすかなど、生ちょろい話ではないのである。

サクラの開花日・満開日の調査

 サクラの開花日・満開日の季節学的な調査・研究は日本では昔から進んでいる。1930年代・1940年代にはすでにたくさんの論文が気象庁(当時は中央気象台)関係の刊行物に発表された。また、生態学者の吉井義次による花暦研究、農業気象学者の大後美保・中原孫吉らの生物季節学の研究にもまとめられている。1953年に“生物季節観測指針”がきまり観測方法が整備され、観測値が蓄積されるようになり、その解析がおこなわれた。主に日本農業気象学会で成果が発表された。このような基盤の上に立って、近年はかなりの精度で予則や予報ができたのである。
 以上のような流れであったから、データは気象庁の観測網によるものが主体であった。一方、日本全国にはサクラの名所が多数ある。各地の城山公園・川に沿う堤・大きな池の周辺・・・・全山、サクラまたサクラなど・・・・大小数えきれない。これが日本のお花見の原点でもある。これらのお花見はどうなるのだろうか。気象庁の観測を別にして、もっと気になるところである。
 幸い、これに答える調査報告書を、東京大学大学院の農学生命科学研究科の樋口広芳教授から最近いただいた。樋口広芳・繁田真由美共著の「日本各地のサクラの開花情報に関する調査報告」(私家版、2007)である。この調査は従来の方法とは全く異なり、アンケート調査で全国各地のサクラの名所の開花日・満開日の情報を管轄する自治体および関連施設を通じて集めたものである。サクラの名所は76ヵ所、一本桜の名所は79ヵ所から回答をえたが、そのうち開花情報を持つのはそれぞれ50ヵ所、38ヵ所であった。開花日・満開日の資料はそれぞれ、年の推移との関係で統計解析されている。結果はいずれ学会誌に発表されるとのことなので、いま、私が先廻りしてここでさらに解析したり、論じたりするのはさし控えたいが、とにかく、従来にはなかった方法でサクラの名所の観測結果を扱った点で新しい。この調査報告書にのっている図や値をぼんやりと見ているだけでも、いろいろなことがわかる。以下に、私なりに気のついた点をまとめたい。

サクラ名所の開花日・満開日の変化

 ソメイヨシノだけにかぎってみる。先ず気がつくのは最近になるほど例外なく開花日・満開日は早くなっていることである。その境目は1985年ころで、それ以前は横ばいか、早くなっていても、それほど明らかでない。したがって、統計年数が長いところと短いところでいろいろな差がある。(表1)に、統計年数が40年以上の2〜3の代表的な地点におけるソメイヨシノの平均開花日と満開日、開花日から満開日までの日数、それに、統計期間内における開花日が早くなった割合(日数/100年)をまとめてみた。

(表1)統計年数が40年以上のサクラ(ソメイヨシノ)の名所における平均開花日・満開日

情報提供場所
地方・場所
統計期間
年―年
開花日
月・日
満開日
月・日
開花から
満開までの日数
開花日が
早くなった割合

北海道・松前公園 1960―2006 4.29 5.2 4 日 10.2 日/100年
青森県・弘前公園 1947―2007 4.24 4.29 6 9.2
秋田県・角館 1945―2007 4.25 4.30 6 8.9
岩手県・北上 1953―2006 4.21 4.25 5 10.2
福島県・鶴ヶ城 1954―2006 4.16 4.20 5 6.0
石川県・兼六公園 1969―2006 4.6 4.11 6 16.1
京都市・平安神宮 1966―2007 3.30 4.6 8 16.6
島根県・斐伊川 1965―2006 3.31 4.10 11 12.7*

*は満開日について (資料は樋口・繁田、2007による)

 この表からわかることは、つぎの点である。まず、開花日・満開日とも、大まかには南が早く、北ほど遅い。これは北ほど寒いのだから当然だが、面白いのは開花から満開までの日数が北ほど短いことである。これは、北国では春が短いと俗に言われているが、それと同じ現象かと思う。次いで、どのくらいの割合で開花日が早くなったかであるが、かなりの凹凸はあるが、南で大きく100年間に換算して13〜17日くらい、北国では9〜10日で小さい。しかし、別の目でみると、1940年代・1950年代からの観測期間をもつ地点では小さく、1960年代後半からの比較的短い期間についての地点で大きいとも言えよう。これは、開花・満開が早くなってきている現象が最近ほど顕著なのだから、そのために、このような結果になっているのかも知れない。また、京都の平安神宮が特に早いのは、都市気候、いわゆるヒートアイランドの影響も加わっているのであろう。
 次に(表2)には、同じ開花・満開情報を最近の約30年分についてのみ情報がえられている2〜3の地点についてまとめた。

(表2)統計年数が30年以下のサクラ(ソメイヨシノ)の名所における平均開花日・満開日と開花日が早くなった割合(日数/100年)

情報提供場所
地方・場所
統計期間
年―年
開花日
月・日
満開日
月・日
開花から
満開までの日数
開花日が
早くなった割合

山形県・鶴岡公園 1977―2006 4.13 4.20 8 日 17.5 日/100年
宮城県・船岡城址公園 1984―2006 4.10 4.17 8 40.8
長野県・小諸城址 1974―2006 4.16 4.22 7 25.3
神奈川県・横浜三渓園 1978―2005 3.25 4.4 11 48.2
神奈川県・小田原城址 1985―2006 3.26 4.4 10 30.6
兵庫県・姫路城 1984―2006 3.29 4.7 10 16.9

(資料は樋口・繁田、2007による)

 この(表2)によると、やはり開花日・満開日とも寒冷地ほど遅くなり、開花から満開までの日数は北国ほど短く南の方ほどやや長く、(表1)と同じ傾向が見られる。しかし、もっとも特徴的なことは、開花日が早くなってきた割合がいずれも大きい点である。割合は“100年について”と換算してあるので、実際に観測した、言い換えれば、われわれが経験した近年の10年間について言えば、約2日ないし5日の割合で早くなっている計算結果である。
 これは恐るべき事実である。十年一昔とは言っても、10年はすぐに過ぎてしまう。お花見ができなくなるどころか、われわれの環境全てに変調がすぐに来るのではなかろうか。
 (表1)の地点についても、最近の20年あるいは30年の期間だけで、開花日が早くなった割合を計算すると、当然、(表2)に匹敵するような値がでてくるであろう。
 また、毎年の値は変動するので、当然のことながら、平均値の上にも下にもでる。プラス−マイナス約5日はある。そして、(表1)の地点の場合、最近の20年についてみると長年の平均値よりさらに早い年が13−14年はあり、遅い年より2倍以上多く出現している。この傾向も忘れてはならない。

開花の最近の変化

 お花見については、前の連続エッセイ「異常気象を追う」の[3]に述べた。3月の月平均気温との関係を詳しくそこで述べた。3月の気温が地球温暖化のため上昇しているのが、今回述べた開花日・満開日が早くなることの主な原因である。また、花の異常季節として、2度咲き現象が最近多くなってきたことを、同じ連続エッセイ「異常気象を追う」の[14]で述べた。これらを参考として読んでいただければ幸いである。


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