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連載エッセイ [23]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
猛暑と動物:2010年
 
最近の猛暑と動物の世界

 近年の夏の暑さは非常に厳しい。すでにこの連続エッセイ[19]以来、人間生活・消費・農業生産その他に及ぼす猛暑の影響を述べてきた。温暖化とともに生きてゆくために、“注意しなければならないことは何か”を、紹介してきた。今回は動物を例にとって書いておきたい。

動物への影響

 動物といっても、大型動物・小型動物から、昆虫・鳥類など、さまざまある。また、畜産資源までいれて考えると、取り上げるべき事柄は非常に多い。動物の中には海洋・河川・湖沼の魚介類や水産業の養殖水産物までも含まれるだろうが、水中の動物については、別の機会に廻したい。
 2010年の猛暑の影響がすぐに現れたのは、人間生活と密着した生活を強いられているペット、動物園の動物たちである。反応は人間の熱中症と同じパターンである。(表1)に時系列的に現象をあげた。


(表1)2010年の猛暑がペット・動物園の動物・畜産関係の動物に及ぼした影響。( )内は報道の日付け

期間 内容

7月中旬以降 ペットの犬・猫が室内で、または屋外散歩中に熱中症(8・16)
7月1日〜9月30日 全日空は短頭種犬(鼻の部分が短い犬は呼吸による換気が十分にできないため熱中症になりやすい)の機内預かりを中止(8・16)
7月〜8月 ペットショップでは涼感素材の犬用の服が売れる(8・16)
6月〜9月中旬 動物園では高冷地原産の動物を避暑に出した(8・18)
7月1日〜8月15日 全国の畜産被害:熱射病で死んだ乳牛959頭、肉用牛235頭、ブタ657頭、ブロイラー289,000羽、採卵用ニワトリ136,000羽(9・3)
6月〜8月 岩手県の畜産被害:暑さによる死亡被害は4,480万円。ブロイラー 77,266羽(3,940万円)、採卵用ニワトリ2,287羽(約120万円)、乳用牛13頭(約230万円)(9・17)



 以上のように、ペット・動物園の動物などへの影響が最も早く、7月に現れた。それに関する報道は8月中旬に出始めた。畜産業関連の動物・ニワトリなどの報道は9月に入ってから多くなった。しかし、公的な統計には、死亡した牛・ニワトリなどの数値が出ているだけである。猛暑による成育不調に起因した品質の低下、生産量の低下は数量的に把握が難しいので発表されていない。また、地方による差も詳しく検討しなければならない。例えば、表1でみると猛暑がひどかった地域の北のほぼ限界であった岩手県で、ブロイラーの被害が日本全国の合計値に占める割合が大きかった。その理由も今後の分析の対象である。

虫や鳥への影響

 2010年6月中旬から8月中旬まで、大阪府内で夕方から朝にかけて採取した蚊の数は、2009年は2,280匹、2010年に1,939匹であった。すなわち、約15%の減少であった。このような調査は少ないので貴重である。今後各地で調査されることを期待する。
 ハチに襲撃された報告は多かった。例年より約20%多かったのではないかといわれている。巣の中の温度が上がってハチが興奮したためと考えられている。
 アカイエカは気温が30℃を越える日が続くと死ぬ。つまり、今年のような猛暑だと生育できない。しかし、メスのカは人間の血を吸って3〜4日後に産卵し、2〜3日で孵化してボーフラ、サナギを経て14日で成虫になる。2010年の場合、すでに述べたように7〜9月の間にいくつかの猛暑の波が来たので、その波の一つをどこか比較的涼しいところで生き延びたカの次世代は、秋になって、約20日あれば成虫として活動し始める。人間にとってはご用心の秋である。
 10月になるとハクチョウの飛来がある。岩手県北上市相去町の新堤では2010年は2009年より5日遅く、山形県酒田市では2日遅かった。ハクチョウの飛来数は全国各地で、詳しい調査が多いので、別にまとめられると思う。

クマ

 2010年クマに襲われた被害は全国的に多く、特に福井県・富山県・新潟県などから東北地方の山形県などで非常に多かった。富山市では2009年に出没件数は24件だったが、2010年には10月12日現在で、すでに131件、5倍以上である。おそらく、秋の終わりまでにはさらに件数は増加するであろう。
 “どうして2010年には、クマに襲われた被害が多かったか”、その理由はたくさんある。以下にそれらを紹介しよう。

1) 富山県の立山町にある富山県森林研究所が富山県内の14箇所でブナを調査した結果は13箇所でドングリは凶作であった。また、ミズナラは16箇所の内、13箇所が凶作であった。これらの地点では、2009年はすべて豊作であったので、2010年のドングリは非常な凶作だったと言えよう。また、別の兵庫県内240箇所における調査ではブナのドングリはほとんど皆無、コナラ・ミズナラは平年よりかなり少なめであった。その他、中部地方・東北地方ではドングリが不作であった報告が多かった。
 クマは出産や冬眠をひかえて皮下脂肪を貯えるため食用のドングリを探す。そのため、背後の山地でドングリが不作だと人の住む地域まで下りてくる必要がある。人間と遭遇する機会が増える結果になる。
2) 上記のような2010年の猛暑の影響に加えて、次のような最近の傾向がある。すなわち、人間が居住する地域と背後の山との間には里山があるが、最近、人手不足で里山が荒れてここではドングリが少なくなった。あるいは開発されて里山がなくなってしまった。山仕事の減少・中山間地の過疎化もある。これらの傾向が強くなり、クマが低地の人里に近付くことが容易になった。
3) 近年、クマの個体数が増えているといわれる。2010年のような猛暑は異常であるが、温暖化傾向は一般的に山地のドングリ生産量は増え、一方では狩猟者数は減少しているので、山地における動物の固体数が増加した。クマに対する食料不足の圧力が増し、その結果、人里に降りてくるのだと言う理由もある。
4) 人間集落では昔は犬の放し飼いがあった。このような犬が最近はいなくなったので、クマが近付きやすくなった。

 以上の2)〜4)は今年だけの問題ではないが、2010年の猛暑年におけるクマの襲撃による被害件数の増加に拍車をかけたことは間違いない。また、クマばかりでなく、サル・イノシシ・シカなどについても同じようなことがあろう。別の機会に調べたいと思っている。
 最後に今年のように、クマの襲撃の新聞報道が多い年でないとわからないことだが、10件の新聞報道の内、8件が早朝の4時から9時までに起きたことを記録している。その中でも5時から8時の間に毎時間2件ずつであった。朝に集中していることはこれまであまり指摘されていなかったように思う。このような日変化の理由も考えてみる必要があろう。このような人間が襲撃された件数の日変化と、人間がクマを目撃した件数の日変化は、あるいは違うかもしれない。人間の行動の日変化型とクマの行動の日変化型の相異など、詳しい調査を待ちたい。
 以上のように、大型動物に関連した猛暑の影響は、秋になって、食料の凶作を媒介して10月に最も強くでた。7月・8月・9月・10月と、それぞれ対象となる動物が異なるところが重要である。


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