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連載エッセイ [24]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
2010年の猛暑と水産
 
予想以上のインパクト

 この連続エッセイのシリーズで、2010年の猛暑の影響をこれほど何回も取り上げなければならないとは、猛暑が始まった7〜8月ころ、実は予想していなかった。このシリーズの執筆者としては恥入る次第だが、われわれにとって経験したことのない厳しい猛暑だったのである。これまで取り上げたインパクトの対象を(表1)にしめす。今回は水産物について述べたい。

(表1)これまで取り上げた2010年猛暑の影響のテーマ

連続エッセイ番号 掲載日 テーマ

[16] 8月16日 シベリアの火災、ヨーロッパ諸国・ロシアの猛暑
[19] 9月29日 影響の対象別にみた新聞報道件数
[20] 10月13日 生活・個人消費
[21] 10月27日 野菜・果物
[22] 11月10日 稲作・コメ
[23] 11月24日 動物


2010年猛暑の展望

 2010年6月から10月までの北日本・東日本・西日本・沖縄奄美の4地方について気温の変化を(図1)にしめす。異常な高温の波がまず北日本から6月旬半ばに始まった。南ほど遅れて始まり、また、高温の編差も小さかった。7月半ば以降は北太平洋高気圧の勢力が強くなり、日本全国で高温になった。これまで述べてきたように大小さまざまの波形の熱波が襲い、10月下旬後半でほぼ終わった。北日本・東日本・西日本では約140日、沖縄奄美地方では約130日間に及んだことがわかる。その間に半旬程度の短い低温な期間があったが、全体としては4ヶ月半以上にわたる長期間の異常な高温期間と言わざるをえない。

(図1)地域平均の気温平年差(℃)の5日移動平均時系列(2010年6月〜10月)
(気象庁地球環境・海洋部による)

 旬別にみると、非常な高温な偏差がみられる。それらの中には1961年以来、すなわち、過去50年の中で最高の値が東日本に7月下旬現れた。表2には月平均気温の平年からの偏差と、月の日照時間合計の平年値との比をしめす。

(表2)2010年6月〜10月、日本の地域別気温偏差(℃)と、日照時間平年比(%)

地域 気温偏差     日照時間平年比
6月 7月 8月 9月 10月   6月 7月 8月 9月 10月

北日本 +2.1 +2.0 +2.7 +1.7 +1.1   116 76 106 106 91
東日本 +1.3 +1.8 +2.2 +1.9 +1.4   119 118 119 130 76
西日本 +0.6 +0.6 +2.0 +2.1 +1.3   95 91 116 122 74
沖縄・奄美 −0.2 +0.3 +0.6 +0.8 +0.5   72 76 92 111 69


 この(表2)をみると月平均気温偏差では北日本と東日本で9月まで大きな値がでており、西日本では8月・9月に大きい値がでている。 日照時間では東日本において全期間で大きく、9月には東日本・西日本・沖縄奄美地方で大きい値がでている。以上は、4ヶ月以上にわたった2010年猛暑の地域的な差・時間的(猛暑前期か後期かなど)な差の大まかな違いを画きだしている。特に水産物すなわち水中に生息する生物への影響は、大気が陸上生物に直接影響する場合より1過程余計になる。影響の遅れ・積算化・海流の特徴(寒暖・強さ・方向)など考慮にいれる必要はあるが、上記の気温・日照の地域差・時間差はその際、役に立つ。

水産物の入荷・卸し・消費など

 2010年の日本各地の水産物の卸売市場での価格・消費傾向など主な影響を紹介したい。
まず、水産食品の価格に目立った影響が現れ始めたのが9月である。メバチマグロ・スルメイカなどは8月下旬・9月下旬で店頭価格はほとんど変化がなかった。チリ―産の銀サケは9月下旬多少値下がりした。

(表3)2010年9月における主要水産品目の市況。東京都中央卸売市場。

品目 入荷量 卸し価格

マイワシ(生鮮品) 8月より減少。(ただし三陸では豊漁) 横ばいか、やや高い。
サケ・マス(塩蔵品・冷凍品) 8月よりやや増加 横ばいか、やや高い。(根室のアキサケは低)
サバ(生鮮品) 8月よりやや増加 平年の9月平均の63%。
スルメイカ(生鮮品・冷凍品) 8月よりやや増加 やや低。
シラウオ(生鮮品) サイズが小(青森県産) やや高。
アジ(生鮮品) 8月よりやや増加 やや低。10月、前年同期に比べ26%安値。
ブリ(生鮮品) 北海道の定置網、沿岸水温高く少。 横ばい。
マグロ(冷凍品) 8月とほぼ同じ。 横ばいか、8月の77〜98%。
カツオ(生鮮品) 8月よりやや減少(南下が遅れた) 横ばいか、8月の103%。10月には値下がり、9月の40%。
サンマ(生鮮品) 大幅増 やや低。(8月には、2倍高値)


 このように卸売市場での値動きは、入荷量と単純な関係にはないようである。これには猛暑のため、刺身としての需要が減少したり、あるいは、消費者が鮮魚を買って帰る意欲減退などが影響したとも考えられる。

水産被害と海水温

 佐賀県藤津郡太良町大浦沖で養殖するカキは「竹崎カキ」の名で有名だが、10月中旬、80%死滅した。有明海の水温が2〜3℃平年より高かったのが原因とみられ、大きな打撃を受けた。カキが生育する海面下4mで8月中旬から9月上旬の水温は30℃が限界である。しかし、2010年にはこの限界値を越し、35℃になった日さえあった。
 その他、真珠になるアコヤガイのへい死もあった。アワビも激減した。ウ二の身入りが少ないなどの影響がでた。また、出荷には、輸送途中における猛暑のため、2倍の氷が必要であった。10月下旬、青森県のホタテは猛暑の影響で大量に死滅し、90%以上の被害がでた業者もあると報じられた。沿岸における養殖漁業への影響は深刻であった。
 沖合漁業では大スケールの水温分布の変化が影響する。日本周辺海域の平均海面水温は、2010年8月には平年より1.2℃高かった。日本海・東シナ海・太平洋などで多少の差はあるが、0.5〜3.0℃高かった。すなわち、日本海中央部で26℃、平年より2℃高温、北海道の南東沖で23℃、平年より3℃高温であった。これは、北太平洋高気圧が異常に発達したためである。
 三陸海岸の大船渡市では恒例の“さんま祭り”が不漁のためできず、41日遅れで10月23日に開催にこぎつけた。東京の目黒駅前商店街では恒例の9月5日に開かれる“目黒のさんま祭り”がある。ここで来場者に無料で配るサンマは、宮古市が提供する。ところが2010年は不漁で、サンマが宮古市に初水揚げされたのは8月26日、やっと目黒には間に合った。しかし、宮古市が計画していた8月29日の宮古市自身の“さんま大漁祭り”は中止せざるをえなかった。事態に対応された関係者の御苦労は察するに余りある。猛暑のとんだ影響である。

猛暑と水産物

 猛暑が水温に影響し、高い水温が水産物の漁獲量・品質低下・生育・死滅などに関係することは明らかである。また猛暑が消費者の水産物購買意欲などにも関係し、出荷輸送にも影響することを述べた。
 ただし、物理気候学的には気温と海面温度との関係は“にわとりと卵”の関係である。上記のような養殖漁業・沿岸漁業・魚の回遊でいう“、。。。。猛暑が水温に影響し。。。。”という図式はあてはまらない。温暖化の影響として捉えると、ここがまた問題を複雑にしている。


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