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連載エッセイ [36]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
原発事故と避難・屋内待避・放射性物質汚染地域
―政府・メディアの対応から見た―
 
問題

 2011年3月11日、東日本大震災が発生した。それに対する死者数・被災などの報道の日時を追った推移の特徴をこの連続エッセイで何回も取り上げてきた。そして被害が大きいほど実態把握が難しく、報道の手段・方法・到達(受取り)にさまざまの課題があることを指摘した。被害の実態と、この日時を追った政府の対応、報道の実態とは別のものであることを明らかにしてきたつもりである。
 これまでの、連続エッセイでは津波の直接の影響による被害を扱い、原発の問題を全く扱かわなかったが、今回は福島原発に関する問題のみを考えてみる。三陸沿岸から南へ東北地方から関東地方の太平洋沿岸を襲った津波による大災害とは全く別の災害で、影響は日本国内ばかりでなく、全世界に及び、放射能の影響は何年・何十年に及ぶといわれる。
 地球温暖化は地震発生には無関係だし、原発の事故発生原因には無関係であることは言うまでもない。しかし、すでにこの連続エッセイで強調してきたように、影響をうける人間社会は温暖化のもとに展開しているのである。避難生活を送る人たち、放射能に晒される日常生活を送らねばならないわれわれ、あるいは、食物とする野菜や畜産物も、全て温暖化の下に成育・生活しているのである。
 地震発生からすでに2ヶ月、この間、日本政府は避難地域・屋内待避対象地域をどのように指示し、メディアはこれをどう扱ったか、放射性物質汚染地域をどのように捉え報道してきたか、その内容が日を追ってどう変化したかを、その地域分布の観点から捉えておきたい。

日時の経過による対象地域のとらえ方、表現の変化

 まず、実態を(表1)にまとめておこう。

(表1)政府・メディアの対応からみた福島原発事故による避難・屋内待避対象地域・放射性物質汚染地域とその表現の推移

日付 対象事件 指示の内容 表現(備考)

3月11日 地震発生
3月12日 第1原発 第1号機で放射性物質を含む水蒸気を外部に放出する作業開始 政府指示
3月12日 第1原発 避難 半径10kmの円内、陸上のみ円を画く
第2原発 避難 半径3kmの円内、陸上のみ円を画く
第2原発 屋内待避 半径3−10kmのリング内、陸上のみ
3月13日 第1原発 避難 半径20kmの圏内、海上にも圏を画く
第2原発 避難 半径10kmの圏内、海上にも圏を画く
3月25日 甲状腺内部被爆 試算図 SPEEDIによる3月12日―24日の積算値。NW方向、SSW方向の陸上で大、SE 方向、NE方向の海上でやや大(風を考慮した最初の図、海上を含めた最初の図)
3月26日 第1原発 屋内避難から自主避難へ 半径20‐30kmのリング状地域(風の考慮なし)
4月21日 第1原発 警戒区域 半径20kmの圏内、計画的避難区域・緊急時避難準備区域の分布(圏内から突出したNW方向の危険地域を初めて描く。風が考慮されている。しかし陸上のみを対象)
5月2日 放射腺の積算量 試算図 原子力安全委がSPEEDIを使って試算。海上にも等値線が引かれておりNNE‐SE‐Sにやや多い。
5月11日 放射性物質汚染 分布図 陸上5km圏内は推定していない。海上は推定してない。NW方向は40‐50kmまで大きい値を示す。


 上記のように、地震発生から2ヶ月経過してやっと分布の実態の報道がされるようになった。重要な点は、避難・待避などを円(圏)の半径などで大雑把に表現してはいけないこと。陸上だけでなく、海上も含めて、風・降水の状態など大気の活動を考慮にいれて試算・推定を行うべきことであろう。

観測値と試算値(推定値)の公表

 今回の原発事故後の処理で、われわれが知った教訓の一つは、周辺地域、あるいは国内・国外へ放射性物質の観測値情報を的確な表現によってどのように公表するかである。研究者は観測値と、モデルによる試算値(推定値)の意義・問題点をよく知っており、それぞれが把握し表現する限界・特性などもわかっている。しかし、一般の人は必ずしもそうではない。『推定値は“いろいろな条件のもとで”計算するとこうなります』ということであるが、いったん発表されるとその条件が忘れられ、結果の数字だけが『ひとり歩き』してしまう。一方、観測値の確実性は非常に高いが、汚染物質のような対象物の測定値は100mはなれたらばどうか、200mはなれても同じか異なるかなど、観測地点の代表性は必ずしも明確ではない。
 今回、政府・東電・メディアはこれをあまりに意識し過ぎて、日本国内における公表・報道が萎縮したように思う。これがかえって、裏目にでて、一般の人は実態がわからなく、不安をもたらした。しかも日本はIAEAなど国際機関にはデータを送っていたから、作今はインターネットなどでこれらが容易に国外から日本へ逆輸入された。このようなIT時代の情報伝播についても考慮がたりなかったように思われる。さらに重要なことは、観測値とモデル計算値のそれぞれの問題点・特性などを、今日の一般的な日本人は研究者でなくてもかなりよく理解し承知している。日本の政府・東電・メディアは、日本人の知的水準をもっと信じてもよいのではなかろうか。

地域スケールの問題

 3月16日、チェルノブイリ原発事故の場合と比較する図が、ある新聞にでた。その図は、チェルノブイリを中心にして、100kmごとの半径の同心円が画いてあり、高い放射腺の値を示す地域を赤い色でぬってある。もちろん白い色、すなわち、低い値の地域がほとんどである。しかし、高い値をしめす地域は半径50‐100kmの円内にあるほか、極めて高い値を示す地域が原発を中心にした半径150‐280kmの円内にもあることをしめしている。
 上にあげた(表1)のなかの数字はみな半径10、20、30kmなどの圏内というような10kmのオーダーの話である。これに対しチェルノブイリでは100kmのオーダーである。福島の原発から、東京ですら直線距離で約230kmである。茨城がどうこう、栃木がどうこうといった話ではない。地域スケールを考える必要性がここにある。避難・待避、あるいは放射性物質による長い時間の影響を今後考えてゆかねばならないが、その場合、半径100kmのオーダーの地域を対象にしなければならない。
 放射腺医学・生気象学などの既成の専門分野の研究者ばかりでなく、遺伝学・優生学・人口学、さらには農業や、日本では特に重要な水産業や海運業関係の研究者が共同して対処しなければならない。また、現代の特別な課題である情報関連・工業製品チェーンにいたる専門研究者の共同研究が不可欠である。
 その上にさらに温暖化の影響下の状態を考慮に入れて、事態の推移を見守ることがもとめられよう。


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