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連載エッセイ [45]
温暖化と生きる
吉野正敏

 
日本の都市の異常な最高高温
 
日最高気温の極値

 これまで、この連続エッセイでは、前のシリーズ“異常気象を追う”[9]に熱波・猛暑、[11]に都市における異常高温について書いた。現在のシリーズ“温暖化と生きる”でも、[11]夏の酷署とヒートアイランド、[16][17][19][20]に2010年の猛暑、さらにその影響がどのように現れたかについて[21]野菜と果物、[22]コメ、[23]動物、[24]水産など、何回にもわたって暑さの実態と原因、その影響の深刻さなどを指摘した。
 最近数年の間に、記録を更新する異常高温がしばしば発生している。個々の場合についての解析は進んだ。それらの結果を加えて、これまで得られている知識をまとめてみたい。

関東と関西の都市の異常高温

 先週(2011年9月23-24日)大分で日本地理学会があった。そこで、高根雄也が一つの指摘をした。すなわち、関東平野の熊谷市・さいたま市などでは40℃を越すような異常高温が頻度は少ないが発生する。一方、関西では、例えば大阪・京都ではそれほどの極端な高温は観測されず、34〜35℃である。しかし、長年の平均値でみると夏の日最高気温は関西が関東より高いという指摘である。ここから出発して、熱的な局地循環による顕熱の輸送やシノプティック・スケールの一般風による昇温の効果などを検討した。
 これはきわめて興味ある問題である。日本の都市における夏の異常高温に関係するさまざまな要因を考えてみる必要がある。スケールの大きい方から考えると、地球規模の温暖化の影響は、関東と関西の距離と比較してかなり大きいスケールなので、直接の影響は同じと思われる。ついで、北半球中緯度の高気圧帯(中緯度高圧帯)、あるいは小笠原高気圧内における位置も同じとしてもよかろう。したがって、異なるのはリージョナル・スケールとローカル・スケールの要因である。
 それらの要因とは、以下のようである。
(1)関西では瀬戸内海(地域的に夏、気圧を高める効果がある)の東部に位置する大阪湾の存在、関東では相模湾・東京湾の存在。
(2)ヒートアイランドを形成する大阪と東京の都市域の規模・形態(面積的広がり、および立体的形状、つまりは、粗度の水平分布状態)。
(3)周辺山地の地形・平野の形状・配置。それらの上空の卓越風向に対する差異。
 以上の要因がからんでくる。

熊谷の高温の数値実験

 関東平野で冬発達する“空っ風”のモデルはこれまで研究されてきたが、いま問題なのは夏の現象で、あまり参考にならないと思われる。しかし、関東平野の高温が、関東地方西部の山岳の風下側におけるフェーンとかフェーンに似た風による昇温効果もあるというシミュレーション結果も報告され、夏・冬を区別せずに考えてよいのかもしれない。
 高根雄也・日下博幸は、2007年8月16日に熊谷で40.9℃を観測した場合を研究した(Jour. Appl. Met. Climat., 50, 2011)。この結果によると、力学的なフェーンとフェーンに似た風による効果は次のようであった。
 まず、この日の気圧場の特徴は、(1)16日の前、10日間は無降水で、日照時間が長かった。(2)16日にかけて、次第に日最高気温が上昇していた。(3)下層から混合層の上空にかけて北西風が卓越しており、また、下降流になっていた。これらの事実から、以下のことを推測した。すなわち、(4)地表面の乾燥化と顕熱フラックスの増加、(5)北西風と下降流による熱の移流、(6)下降流による混合層発達の抑制、である。
 高根・日下は上記(1)〜(3)の再現実験を行い、熊谷における猛暑は、上空の下降流によって混合層の発達が抑制されていること(それによる熱拡散の抑制)、地表面からの顕熱の供給(連日の晴天日に関連する)、さらに北西の風による熱移流の効果が大であること、これらにより異常な高温が発生したことを解明した。(図1)に水平風と鉛直流の鉛直分布をしめす。特に、11時30分頃から15時頃までの3〜4時間、地上から1,500mくらいまでの気層で顕著である。

(図1)2007年8月16日の熊谷における水平風と鉛直流の鉛直分布。
(左)観測値(右)計算値。白い領域は下降流の領域を示す。
(高根・日下:気候影響利用研究会会報、29、2011、p.25による)

熊谷の猛暑日のモデル

 これまで描かれている山越え気流の模式図(例えば、吉野:世界の風・日本の風、成山堂、p.23)に上記の結果や、ヒートアイランドによる効果に関する多数の研究結果、東京からの海風循環の効果などを考慮にいれたモデルを(図2)にしめす。まだ、予察的なものなので、今後、訂正すべき箇所が多いと思うが、一応、現段階の私のまとめである。

(図2)関東の異常高温時のモデル(吉野)

 この図には記入できなかったが、鞍部(峠)の部分の山地の幅(風の流れに沿う山地の風上山麓から風下山麓までの水平距離)は150〜180km、山脈の部分の幅は非常に大きい。関東の場合、本州の脊梁山地である。
 関東平野の場合、ほぼ中央部に熊谷の都市域がある。(図1)には平野または水面とかいてあるが、これは一般的な局地的強風の場合で、関東平野ではここに熊谷の都市域が位置するところに特徴がある。東京の都市域と熊谷の都市域の中間まで、海風前線が侵入する。そこまでは東京の都市域で発生したヒートアイランドの高温で汚れた空気が運ばれる。上空の風下波動が強い場合には、海風前線の侵入距離は短い。

関東と関西のモデル

 関西のモデルは、まだ描ける状況にない。関東の場合を90度回転し考えたり、周辺山地と大阪湾の配置を変えて考えたりしなければならない。しかし、初めに書いたように、日最高気温の平年値では関東より高いこと、極値では関東より低いことを説明できる(おそらくはシノプティックな条件の発生頻度にかかわるリージョナル・ローカルスケールの状況を加味した)モデルを構築しなければならない。


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