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連載エッセイ [15]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
熱波スケール
熱波 ―異常高温の波状襲来―

 前回のこの連続エッセイ[14]では複合異常気象について述べた。地球温暖化の最近、複合の一つとして重要な高温な状態について、特に2014年の例を取り上げ、5月末から始まった異常高温の推移を指摘した。二つの高温な期間に挟まった台風8号による異常な降雨とそれによる風水害を夏全体の一部のエピソード期間と考えれば、今年の夏は複合異常気象が発達した夏と言えよう。今回は、特に高温の状態を熱波とし、その内容はどうであったのか、少し詳しく調べてみた。
 異常な高温を表現する語として、日最高気温が30℃以上の日を真夏日、35℃以上の日を猛暑日と呼ぶ。ある1地点についてみると、2〜3日または数日まとまって真夏日・猛暑日が出現する期間が出ることが多い。その状態は波状にやって来るので、熱波と呼ばれる。

2014年夏前半の異常高温の推移

 この原稿を書いているのが7月下旬の半ばなので、5月末から7月中旬までを夏前半と呼び、高温な状態がどう推移したか一致することは興味がある。(図1)には日本を5地域に区分して、それぞれの地域における平均気温平年差の5日移動平均値で示した。この図の赤は正偏差(平年より高温)、水色は負偏差(平年より低温)な状態を示す。
(図1)2014年5月−7月の地域平均気温平年差の推移。5日の移動平均で示す。
更新日は2014年7月21日(気象庁による)

 (図1)から判明することは、次の通りである。
(1) 5月中旬に小さな赤色の部分がある。図中の最上部の変化曲線は、北日本で、特に明瞭な変動を示す。波頭の部分に番号1を記入した。ここでは熱波1と呼ぶ。
(2) この熱波1に対応するのは東日本では5月中旬前半に認められる。西日本・沖縄では不明瞭である。
(3) 北日本では5月下旬後半から6月上旬まで連続する高温な期間がある。熱波2と呼ぶ。
(4) 熱波2も東日本では波の高さは低い。すなわち、高温の程度は弱い。
(5) 西日本では6月中旬の後半から7月上旬前半まで低温で、熱波はみられない。梅雨前線活動の影響である。言い換えれば、複合異常気象が激しかった地域である。
(6) 沖縄・奄美は上記(5)の西日本における変化と逆で、特に6月中旬以降はその傾向は明瞭である。沖縄・奄美は梅雨前線帯の南に位置するようになったためである。
 以上をさらにまとめると、熱波1〜5は北日本で振幅が大きく明瞭である。現在、地球温暖化を計算する数値モデルは世界中に幾つかあるが、どのモデルによる計算でも低緯度より高緯度の温暖化がより顕著である。その傾向に一致することは興味あることである。

猛暑指数と真夏指数

 現在、日本で日最高気温観測値を得られる地点数は927地点である。各地点における観測値で猛暑日、真夏日を定義し、日別に猛暑指数と真夏指数を(表1)のような地点数区分でそれぞれ指数区分を行った。

(表1)猛暑日と真夏日の指数区分(吉野試案)

猛暑日
指数
 
地点数*
真夏日
指数
 
地点数*

0 0 0 0
1 1−46 1 1−93
2 47−93 2 94−185
3 94−139 3 186−370
4 140−185 4 371−464
5 186−231 5 465−555
6 232−278 6 556−648
7 279−324 7 649−741
8 325−370 8 742−833
9   9 834−926
10   10 927

*2014年7月現在、日本における気象観測地点の合計が927地点であることに対応して区分した。

 この区分の基準は2013年・2014年の猛暑日・真夏日の出現状況を参考にして、経験的に試みたものである。したがって、更に長年の状況にも当てはまるような細部の検討を要するものだが、試案として提出しておきたい。
 最近のメディアは暑さの記録を、単独の地点における記録値で報道するほか、暑さの日本国内における広がりの指標として猛暑日あるいは真夏日を観測した地点数で報道する。またインターネットで、猛暑日・真夏日の日別の地点数も得られる。
  http://weather.time-j.net/Summer/SummerMonth/
 真夏日については指数1−10まで10階級を示した。猛暑日については現在のところ8段階まで示したが、これで充分であろう。
 ついで、この猛暑日指数・真夏日指数をもとにして熱波スケールを決定した。これまでの 日本およびインド、中国などの値を参考にして決めた。(表2)がその結果である。

(表2)熱波スケールの基準

熱波スケール 猛暑日指数*
連続3日累計
真夏日指数*
連続3日累計

0 0 0
1 1−2 1−5
2 3−4 6−10
3 5−7 11−16
4 8−12 17−22
5 13以上 23以上

*(表1)に示した区分による。

 連続した3日の累計猛暑日指数、または累計真夏日指数の値で、熱波スケール0〜5を(表2)のように決めた。このような熱波スケールの決定方法で2014年の状況を示すと(表3)のとおりである。

(表3)2014年の夏前半の熱波スケールの推移

熱波番号 期間 熱波スケール
猛暑日指数
 
真夏日指数

熱波1号 5月12日〜28日 連日1
熱波2号 5月29日〜6月4日
6月5日〜26日

連日2
連日1
熱波3号 7月1日〜2日
7月4日〜6日
7月3日〜7日
7月8日〜15日
7月26日〜?*

連日1


連日2
連日2

連日1
連日3
?*

*この原稿を書いている段階では不明。

 この表から判明することは次のようである。
(1) 2014年の熱波1号・2号は5月としては異常な高温だが、猛暑日指数ではとらえられない。言い換えれば、(図1)のように平年差で表現するときわめて明瞭だが、35℃以上という猛暑日の定義では、猛暑日指数は0で、真夏日指数のみでとらえられる。
(2) 熱波2号は連日真夏日指数2で、異常な熱波であった。
(3) 熱波3号、7月4〜6日、上旬前半の熱波は、猛暑日スケールでも真夏日スケールでも顕著であった。
(4) 7月中旬後半、15日以降は猛暑日スケールから見ても、真夏日スケールから見ても顕著であった。
 (図1)にはこの傾向は読み取れないが、今回決定した“地点数(地域の広がり)”を考慮に入れた熱波スケールでは気温平年差だけでは把握できない状態を表現していると考えられる。

今後の課題

 熱波の連続日数、また、一つの熱波から次の熱波襲来までの日数などの統計的調査が必要である。さらに、毎年、熱波が日本によく襲来する日付(台風の二百十日のような)があれば、それを見出したい。サバイバルに最も関係する視点である。


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