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連載エッセイ [20]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
春から秋へのサバイバル
雪形

 春、山の斜面に残る雪が“種を蒔く爺さま”の形になったり、“馬”の形になったりする。ふもとの農家の人たちはその形が現れると、種を蒔いたり、田んぼの準備を始めたり、年による季節推移の遅速の指標に利用し、農作業の指標・農事歴としてきた。日本のような、冬には山にかなりの積雪があり、それが風で飛ばされ、山の斜面の微地形によって、風下斜面に毎年同じように堆積するところでないと、この雪形は現れない。世界的に見ても、大陸の東側で偏西風が比較的低緯度まで(日本列島の緯度まで)南下し、それに直交するような方向に山脈が走り、大陸と日本列島の間に日本海という水蒸気の源があって雪を降らせるところは日本だけで、特徴ある現象である。
 年によるその積雪の差は、冬の期間の降雪量ばかりでなく、風(上空3,000mくらいの風)の強弱、気温の高低の差を現していると考えられる。気象予報の技術が進歩した今日でもその価値は下がっていない。その理由は、冬季の降雪量・偏西風の風速・気温平年差をその山の周辺の局地的スケールで捉えて、局地的な春の到来の予報をしているわけだからである。冬が寒かったらば春が来るのは遅いし、冬が暖かならば春が来るのは早いのが普通である。しかし、その微妙な差は近くの山に教えてもらう方が確かなのではあるまいか。
 雪形の研究は自然科学的には気候学・雪氷学・農業気候学の1分野とされるが、古くから民俗学で研究の対象となってきた。また写真家・画家・文人などが興味を持ってきた。雪形に関する研究書・写真集も多数刊行されている。

駒ケ岳の雪形

 (写真1)は“秋田駒ケ岳”と呼ばれるが、秋田と岩手の両県にまたがる駒ケ岳の“駒の雪形”を岩手県側、すなわち、東側から見たものである。農家が農事歴として参考にするばかりでなく、これが見える地域の人たちに春たけなわの到来の喜びを感じさせる大切な景観要素である。(上)は水田に水を入れた直後、夕日とともに山の斜面の駒の姿が水面に映って、いわゆる“さかさ雪形”になった風景である。雪形、田植え前の水面、好天、夕日の諸条件が揃うチャンスはめったにない。(下)は田植え直後の好天の朝、太陽を背にして撮影した風景で、画面で山頂のすぐ左にある頭から前足・胴体付近はかなり山肌の黒い部分が拡がっている。

(写真1)(上)秋田・岩手両県境の駒ケ岳の岩手県側にできる“駒ケ岳のさかさ雪形”と夕日。水田に水入れ直後(2014年5月19日18時40分)
(下)駒ケ岳の駒形の残雪。田植え直後(2014年6月1日7時)
 この風景は言うまでもなく、雪が消え、イネが成長すれば見ることはできない。消えることが、春から夏へのサバイバルは順調の証拠と捉えられる。

麦秋

 気温が上がり、春から夏になると、早くも“秋”の言葉を耳にする。日本人の季節の早取りであろうか。ムギの刈り取り前の畑は一面の褐色となり、周辺の緑と強いコントラストをかもしだす。

(写真2)麦秋。(雫石にて、2014年6月29日撮影)
 梅雨の合間のひと時の晴天が刈り取りのチャンスである。季節推移の僅かの機会を捉えるのがサバイバルの鍵といえよう。

田んぼアート

 青森県の田舎館村の田んぼアートは1993年から始まった。人口約8千人の小さな村の村起こし事業だが、訪れる観光客は20数万人というから成功した例であろう。田んぼをキャンバスと見立て、緑・紫・黄色などの葉の色が異なるイネを使って、大きな絵を田んぼに画き出そうというものである。毎年違ったテーマを取り上げる。2003年のレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」や、2006年の俵屋宗達の「風神・雷神図屏風」、2011年の「竹取物語」などは特に見事な出来栄えであった。
 2014年は「富士山と羽衣伝説」であった。6月1日田植え。6月26日絵の輪郭がはっきりする。7月10日それぞれの色が目立ってきて、絵となる。7月17日見頃到来。7月31日最も好い見頃。8月7日天女の衣装に変化。この頃から色が変わる品種もある。8月14日見頃は終わり、穂が出る。8月21日文字の色に変化。8月28日松の渋みが増す。9月4日刈り取り約3週間前。秋の色濃くなる。9月11日背景の緑色が黄金色になる。9月18日天女と富士山がセピア色になる。9月26日イネ刈り取り。これが今年の田んぼアートのクロニクルであった。言い換えれば、春から秋への一つの風景変化をアートで表現したものである。

(写真3)田舎館の田んぼアート(2014年7月26日撮影)
 (写真3)は7月26日、ちょうど見頃の状態である。絵が立体的に見えるのは、村役場庁舎の観察塔の上から見て立体的になるようにコンピューターで計算して絵を描いているからだという。手数を掛けていることがわかる。
 田舎館では2012年から第1会場(従来からの田んぼ)に加えて、第2会場ができた。また、昨今では日本各地、北海道から中国・四国まで12の府県で田んぼアートが楽しめる。
 (写真4)は田舎館の田んぼアートに使われているイネの例である。このようなさまざまの葉色のイネがあるのかと感心する。日本人の季節感・主食であるコメへの心情、これらは心理的サバイバルに関わる重要な要素である。これがさまざまの葉色のイネを育て、田んぼアートを可能にしたのだと思う。

(写真4)田舎館の田んぼアートに使われているイネの例(2014年7月26日撮影)
 品種名では、緑は津軽ロマン、濃緑は観稲(緑大黒)、黄は黄大黒、橙はあかねあそび、紫は紫稲(紫大黒)、紫穂は紫穂波(むらさきほなみ)、白はゆきあそび、白穂は青系赤174号、赤はべにあそび、赤穂は赤穂波(あかほなみ)である。

秋の水田

 北国や中部地方の海抜高度の高いところの水田では灌漑水温が低い。水温が18℃以下では成育障害が出る。昔は各水田で「ぬるめ」などの迂回水路で水温上昇を行なってきた。最近ではそのような水田耕作を見ることはなくなったが、水の取り入れ口のイネの成育が遅れる水田を観察することができる。(写真5)は収穫前の1枚の田んぼの中で灌漑水路(画面の左下)から水田に水が入り、その水口に近い部分(画面の中央部)はまだ濃い緑色、次第に黄緑色になり、遠くは一面の黄金色になっている状況である。温度計なしに水温分布がわかる。秋の収穫前のひと時に捉えられる。2014年は北日本全体の平均では平年作を上回り、“やや良”の状態である。この写真の水田でも、このような1枚の田んぼの中で成育に時間差があっても、収穫高には問題ないという。サバイバルには細かい観察と考察が必要である。

(写真5)灌漑水温の差によるイネの成育の遅速。水口付近は濃い緑、遠くは黄金色に稔り始めている。
(2014年9月11日、雫石にて撮影 )
 (写真5)は、田んぼアートではなく、田んぼサイエンスとでも呼べそうな風景である。とにかく、日本人が最も好む季節、秋である。[写真はいずれも吉野撮影、不許複製]


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