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連載エッセイ [32]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
8世紀初めの気候 ― 温暖化時代の短い気候悪化期 ―
奈良時代・平安時代の温暖期

 奈良時代・平安時代は世界的に見ると気候小最良期(Little Climatic Optimum)といわれる。いまから約5000年前の縄文時代は温暖で気候最良期(Climatic Optimum)と呼ばれ、これに次ぐ長さ・程度であったから、“小”という形容詞が付いた。
 温暖なことが必ずしも良いことではない場合もあるから、最良という表現は適当でないという意見もある。オプティマムという言葉は、北欧から始まったことが反映していることを覚えておきたい。
 地域により、また、程度によりその期間は少しずれるが、8世紀から10世紀までがこの期間に相当する。詳しくこれまで発表された寒暖の波を見ると、北川浩之(1995)の研究では8〜12世紀には1〜2℃高かったという。ところが、厳密に言うと8世紀の最初20年間はあまり温暖でない。これまでの史料によると、旱魃が多く、一方では洪水の回数が多かった。いわゆる気象災害や疾病もあった。これらについて今回は、若干、触れたい。

8世紀初めの日本

 まず8世紀初めの日本社会の状態を復習しておきたい。(表1)は気候変化に関連した史実である。

(表1)8世紀最初の20年間の国情、旱魃・水害・災害など

史実 気候・気象状態

701 国内体制が整理された天武・持統 期を経て、大宝律令が完成した 厳しい気候条件は好転
702 669年以来中断していた遣唐使が再開 同上
703 下総国葛飾郡大嶋郷、703〜721年人口の
減少幅大。709年はそのピーク。
703年穀登らず。709年下総国疫病。
702年2月越後、6月上野、703年上野・信濃・相模・伊豆・駿河・参河・下総・上総で伝染病(天然痘)。
704、705 同上旱魃。
711〜721 多数の国で旱魃。


 (表1)から、8世紀の最初の約20年間は古墳時代寒冷期(または万葉時代寒冷期と呼ぶ)の最後の寒冷化した時代で、旱魃が多い一方では長雨の年もあり、変動の激しい期間であった。
 最近、古代戸籍の人口変動シミュレーションの非常に詳しい研究が発表された(田中、2013)。この8世紀初めの気候悪化が人口変動に及ぼした影響の分析を行い、明らかな結果を導いた。すなわち、寒冷化時代の災害・飢饉・疫病の結果、最も抵抗力の弱い乳幼児の死亡率が高まったことを明らかにした。
 この時代は律令国家が体制を確立した時代で、気候・気象悪化との関係の分析は今後の課題である。単純にプラスに影響したとか、マイナスに影響したという議論では済まされないと思う。

温暖期への移行

 720年以降になると、日本では温暖化は急激にはっきりしてきた。ヨーロッパでも中国でも温暖・湿潤の傾向が強くなった。したがって、世紀ごとの平均では8世紀は温暖・湿潤に分類されることが多いが、詳しく見ると温暖期への移行は720年より後と考えた方がよかろう。
 日本では平城京が生まれた。政治的に天皇・貴族・庶民が集中して居住するいわば計画都市で、7〜8世紀の政治体制が生み出した。8〜9世紀の都城、城柵、集落、寺院の遺跡から出土する文字資料から、律令に基づく政治が行われていたことがわかる。具体的な関わりは不明だが、律令政治体制が温暖化した時代によく機能したことは確かであろう。しかし、短い年数とはいえ、寒冷化した時代、頻々と発生する旱魃・長雨・疫病などを克服したことはマイナスの影響か、足腰を強くする(例えば国内の結束を強くする)プラスの影響をもたらしたかは検討の余地がある。
 ここで重要な一つの点は、1年ごとの影響と、数年間の影響と、10〜20年の影響、数十年の影響とを区別して考えねばならないことであろう。また、律令体制の確立期と衰退期の差など、体制側・庶民農民側の差も考慮せねばならない。短絡的な結びつけは避けねばならない。

温暖化傾向中の寒冷化

 災害を起すような気象現象が温暖化に向かう時代に多発したことは、現在の異常気象発生の傾向と同じである。ここを筆者は強調したい。
 温暖化の時代、冬には多雪・豪雪が発生する。梅雨は早く明けて盛夏に早くなったかに見えても、梅雨空が続き、長雨になり、大雨になり、洪水になる。地方によっては旱魃となる。これらの極端な気象現象の局地性が強くなる。このような特徴は8世紀初めによく現われたが、現在の日本の状況に似ている。これが、8世紀初めの状態を解明する必要性の理由である。社会体制は変化し、人びとの生活様式は変わり、物資の流通機構が変わっても、影響過程の考察に参考となる点は多いと思う。

[文献]
田中禎昭(2013):古代戸籍にみる人口変動と災害・飢饉・疫病。『環境の日本史2、暮らしと祈り』、吉川弘文館、東京、130-159.


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