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連載エッセイ [41]
異常気象時代のサバイバル
吉野正敏

 
風速の極値
観測を始めて以来の最大記録とは

 最近、夏にはこれまでに経験したことのないような高温を観測することが多い。猛暑日、真夏日あるいは酷暑などといわれ、“気象台が観測を始めてから最高の記録的な気温である”とか、“35℃以上の日最高気温を観測したのは、日本全国で何ヶ所ある観測地点のうちの何ヶ所である”などの表現で報道される。熱中症患者の数が急増したことを知らされる。
 雨についても同じ状況である。昔はほとんど降らなかったような“記録的”な多量の雨が1時間、1日(24時間)、1ヶ月の内に降る。台風崩れの温帯低気圧が勢力を保ったまま北上し北海道・東北地方に大雨をもたらす。場合によっては、北からの寒冷な気流が上空に来て大気の不安定度が大きくなり上昇気流が強くなり、入道雲が発達し、強雨・雷・突風・竜巻などが季節に関わらず発達し、災害まで引き起こす。北日本ばかりでなく日本各地で観測記録を更新する。河川は増水・氾濫・浸水被害、山崩れ・斜面崩壊・地すべりなどの災害に驚く。日本各地で、このような異常事態が頻発するようになった。
 風についても同様である。2015年9月28日15時41分、日本最南端の先島諸島の与那国島で81.1m/secの最大瞬間風速を観測した。1957年に観測を始めて以来の最大記録と報道された。被害も大きく、住民の方々の物心両面への傷跡はテレビの画面では捉えきれないほど大であったろう。今回の連続エッセイは、これにまつわる問題を述べたい。

最大瞬間風速と平均風速

 風は息をしている。ヒュー・ヒューというように聞こえるのは息をしている証拠である。その最も強い時の風速が最大瞬間風速である。しかし、瞬間とは何秒か科学的には定義できない。人間が相談して決めるよりほかない。現在、日本の気象庁は「0.25秒間隔で測定した風速の測定値を3秒間(つまり、12個)の平均値」と決めている。測器で捉える風速の値だから、当然、測器の形式によって異なる。言い換えれば、時代とともに測器の精度は良くなるので、短い時間の強い風速を捉えるようになる。しかし、12個の平均を取ると、最大の値の約10%減となる。
 現在、風速は風車型風向風速計、つまり、流線型をした胴体に垂直尾翼と4枚羽根のプロペラがついている計器で、プロペラの回転数から風速の値を出している。その10分間の測定を修了した時刻の前10分間の値を、その時刻の平均風速とする。

日本の記録的な最大瞬間風速値

 上記のように決めているから、昔の気象台ではロビンソン型(風杯型)風速計で観測していた時代より精度の高い風速を観測している。したがって、記録的な大きい値はプロペラ型になった新しい時代に出ることは当然である。
 (表1)には、日本における最大瞬間風速の第1位から10位までの記録値をまとめた。

(表1)日本における最大瞬間風速(m/sec)の第1位から第10位までの観測値*

地名 最大瞬間風速 その時の風向 順位

宮古島 沖縄 85.3(m/sec) NE 1966 9 5 1
与那国島 沖縄 81.1 SE 2015 9 28 2
名瀬 鹿児島 78.9 ESE 1970 8 13 3
那覇 沖縄 73.6 S 1956 9 8 4
石垣島 沖縄 71.0 SSW 2015 8 23 5
西表島 沖縄 69.9 NE 2006 9 16 6
屋久島 鹿児島 68.5 ENE 1964 9 24 7
盛山 沖縄 67.4 SSW 2015 9 28 8
牛深 熊本 66.2 ENE 1999 9 24 9
南大東島 沖縄 65.4 NE 1961 10 2 10

*元の資料は気象庁による。ただし、富士山頂・伊吹山測候所などの高い山の観測値を除く。

 この表からわかることは以下のようである。
(1) 1位から10位までの10件のうち、九州(天草諸島南端)が1件、その他は南西諸島が8件、南大東島を含めれば9件である。日本における台風に伴う強風域に出現することがわかる。
(2) 発生したのは、第1位から第9位までが8月または9月である。これも強烈な台風の襲来に伴う季節現象であることがわかる。
(3) 第1位と第2位は80m/sec 以上、第5位までが 70m/sec以上、第10位までが65m/sec 以上である。第11位以下は64m/sec 以下である。この限界値は、偶然であろうが覚えやすく、現在の工学的な設計基準などの参考値、あるいは樹高や森林植生に関わる値などとして、サバイバル上、重要と思われる。
(4) 2015年9月28日に2地点、8月23日に1地点ある。今年の台風が非常に強烈であったことの証拠である。

建築基準法などとの関わり

 建築物・構造物を設計する時、風の影響を考えないわけにはいかないので、基準風速が日本建築学会によって定められた値で決められている。ところが、日本建築学会刊行の「建築物荷重指針、1993」に基本風速マップが載っているが、この図は気象学的・気候学的にはきわめて理解に苦しむ図である。もちろん、北日本が32〜36m/sec、中部地方内陸北部から東北地方南部内陸地方が26m/sec以下、銚子・勝浦・室戸岬などが42〜44m/sec、九州南部が40m/sec 以上、種子島で46m/secなどは理解できる。これらはそれぞれ地方気象台または側候所などによる観測値がある地点である。ところが東海道・紀伊半島や四国の太平洋岸では海岸線に直交するような等値線が走っている。どのような基準・方法またはデータでこの図ができたかが不明であるが、おそらく各都府県庁・北海道は支庁などにある地方気象台の観測値を地図にプロットし、機械で等値線を引いたものであろう。山脈・海岸線などが全く考慮されていない非現実的・非科学的な図である。
 想像でものを言って申し訳ないが、この図を元に、“平成12年(2000年)に、建設省告示第1454号「各地域ごとに、平均的な地形の地上10mにおける50年に1度の確率で発生する年最大風速が引用され、その地方における過去の台風の記録に基づき風害の程度その他の風の性状に応じて30m/sec から46m/secまでの範囲内において国土交通大臣が定める風速」が求められ、建築基準法施行令第87条第2項に基準風速が市町村名にほん訳されて示された”のではあるまいか。気象学的・気候学的にも納得がゆく詳しい検討を期待する。

課題

 幸いにして、上記の施行令の値を基準にして設計した結果が災害に結びついたとか、損害が生じ裁判になったとかの話を聞いたことがない。しかし、国に対し再検討をぜひお願いしたい。また、最近の地球温暖化が一因と思われるが、過去に経験したことがない大きな最大瞬間風速や平均風速が昨今、各地で発生している。これについても研究を進める必要がある。


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