スマートフォンサイトを見る

生きもの歳時記

万葉の生きものたち / 秋の動物

百舌鳥(もず)


枝先にとまるモズ

~もずのうた~

  秋になると、公園や畑地、川沿いの草原の近くで、「キィーキィーキィー」という甲高い声を聞くことがあります。周囲を見渡してみると、枯れ枝の先や杭の上などに、モズの姿を見つけることができます。

 モズの声としてよく知られているのは、この「モズの高鳴き」でしょう。これは自分のなわばりに接近してきた侵入者に対する威嚇声で、秋から冬にかけて、オスメスともに行います。


枝先にとまるモズ

秋の野の 尾花をばなうれに 鳴くもずの 声聞きけむか 片聞け我妹わぎも

(作者不明 巻十 二一六七)

秋の野のススキ(尾花)の穂先で哀しく、もずが鳴いている。家でひたすらわたしを待つ妻も、もずの哀しい鳴き声を聞いているだろう。独り寂しく。


小魚をもらったメス(左)とプロポーズするオス(右)

 確かにモズの高鳴きは、誰が聞いても楽しそうには聞こえませんよね。まあ威嚇のための声ですから、当たり前かもしれませんが・・・。

  ところがそんなモズでも、綺麗な声で鳴くことがあります。2月に入ると、モズのオスは小さなか細い声で、自分のなわばりに入ってきたメスに対して、求愛の唄とダンスを披露したり、餌をあげたりします(これを求愛給餌といいます)。この時、モズはいろいろな鳥の鳴き声を真似るのです。ホオジロやシジュウカラ、ヒバリ、メジロ、カワラヒワなど、さまざまな鳥の声が、小さな唄声の中に混ざります。この複雑な鳴き真似から、漢字の「百舌鳥」という漢字があてられたという説もあります。


小魚をもらったメス(左)とプロポーズするオス(右)

 モズは一夫一妻の鳥です。春の求愛ダンスを終えてつがいになった2羽は、藪の中に巣をつくり、4~5個の卵を産んで共に子育てをします。ところがある研究によると、24組のつがいの雛、99羽の遺伝子を調べてみると、その中の10羽が育てていたオスの子供ではないことが判りました。一部のメスはつがい相手以外のオスとも、コッソリ交尾していたのです。このように、「他人の子供も知らずに育てているオス」が結構いることが、鳥類では40種類以上で実際に確認され、知られています。


オス:夏羽
目の周囲の黒い帯と背の灰色、
黒い翼の途中にある白斑が特徴です。

メス:夏羽
全体に褐色味が強く、腹部には
褐色の波形模様があります。

~もずのはやにえ~

モズは、昆虫やカエル、トカゲ、小鳥、ネズミ等を食べる肉食の鳥です。自分より体が大きなツグミ類を襲うこともあり、さながら“小型の猛禽類”といったところでしょうか。


大きくカギ状に曲がったクチバシ

 クチバシは肉を引き裂くのに適したタカそっくりな形です。しかしワシタカ類に比べると脚が細く、獲物を押さえ込むには力不足のため、モズは獲物の急所(頭や首)を直接狙って噛みつき、一撃でしとめるテクニックを持っています。まさに“狩人”な小鳥ですね。

 このようにして仕留めた獲物の一部を、モズは枝先や木のとげ、有刺鉄線などに刺しておく習性があります。これが「モズの早贄(はやにえ)」、「モズの磔(はりつけ)」と呼ばれる、秋冬の風物詩のひとつです。

  なぜ早贄をするのかについては、さまざまな説があります。「冬のための貯蔵」「脚が弱いからフォーク代わりに」「なわばりの質を誇示する」などなど・・・。
 実際にモズは、とらえた獲物を捕まえただけ枝に刺し、冬に餌が乏しくなると、それらを次々と消費していきます。そして刺してからすぐ食べてしまうことも、捕らえた獲物を次々と刺して廻り、そこら中を早贄だらけにしてしまうこともあるそうです。


大きくカギ状に曲がったクチバシ

  こうしてみると単純に、捕まえたらとりあえずとがった所に刺す習性があって、お腹がすいたら食べる、というようにも見えてきます。やはりモズに聞いてみないと、本当のところはわかりませんが・・・。

■参考文献
山岸哲 (1981) モズの嫁入り 大日本図書.
山岸哲 (2002) オシドリは浮気をしないのか 中公新書.
唐沢孝一 (1980) モズの話 北隆館.
唐沢孝一 (1992) 都市鳥ウォッチング 講談社.
中村和雄 (1986) 鳥のはなしⅠ 技術堂出版.
佐竹ら校注 (2000) 新日本古典文学大系2 萬葉集二 岩波書店.


PC用サイトを見る

Contactお問合せ

PC用サイトを見る

気象情報Weather Information
健康予報BioWeather
生気象学についてAbout BioWeather
コラムColumn

スマートフォンサイトを見る

ページ上部へ
Page
Top

Menu