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生きもの歳時記

沖縄の海辺から

海辺の人気者 ~オカヤドカリ類~


夜間、護岸の角を上り下りするオカヤドカリ類

夏の満月の夜、潮の満ちた海岸付近を歩いているとたくさんのオカヤドカリ類に出会います。砂浜を歩き、打ち寄せる波に翻弄されているものや防波堤にしがみつき登っているもの、海岸林から出てくるものと様々です。小さなものもいますが、チョウセンサザエやアフリカマイマイの殻を背負った大きなものが目立ちます。海岸の崖下を歩くと、驚いたオカヤドカリ類が貝殻の中に引っ込むために転がり落ち、海岸の転石に当たってカラカラ、コロコロとにぎやかな音をたてます。


夜間、護岸の角を上り下りするオカヤドカリ類

放仔のため海に入るメスのオカヤドカリ

この時期、オカヤドカリ類は産卵期で大潮の満潮時に発生が進み孵化直前の卵塊を抱えたメスが海へ卵を放ちにやってきます。海水に浸かるとすぐに卵からはゾエアと呼ばれる幼生が産まれます。放卵と言う場合もありますが、放仔と言ったほうが良いかもしれません。放仔に来たオカヤドカリ類は波が高いと転げまわりながらも貝殻から体を出し入れし、普段貝殻の中に隠れている柔らかい腹部にある腹肢に付けて守っていた卵塊を振り放ちます。


放仔のため海に入るメスのオカヤドカリ

ナキオカヤドカリ
比較的小型で海岸に多い、脅かすと
キチキチと音を出す

沖縄本島には主に3種のオカヤドカリ類がみられます。このうちナキオカヤドカリは小型で海岸近くに多くみられ、ムラサキオカヤドカリが海岸林付近にかけて、オカヤドカリが最も陸側の林中に多くみられます。それを反映してオカヤドカリは陸貝であるカタツムリ(アフリカマイマイ)の殻を背負っていることが多いようです。

オカヤドカリ類は国の天然記念物です。小笠原が日本に復帰したときに乱獲による減少を危惧して天然記念物に指定されました。その後復帰した沖縄には非常に多く生息していたにもかかわらず、種の指定であるため同等に扱われています。天然記念物なので採取や所持はできませんが、本来、沖縄の海岸にはどこにでもいるため非常になじみ深く、子供たちの遊び相手となっています。


ナキオカヤドカリ
比較的小型で海岸に多い、脅かすと
キチキチと音を出す

最近では一部許可採取されたものが販売されており、ペットブームの中、全国で飼育されているようですが、その裏には乱獲や密漁、殺してしまうだけの販売も問題になっているようです。


ムラサキオカヤドカリ
大型になり体は青紫色で美しい

オカヤドカリ
海岸林の中にみられる大型種

自然の海岸には普通にみられるオカヤドカリ類ですが、これまで埋立地に造られた人工ビーチでは生息できませんでした。昼間隠れる林や岩場がなかったためです。最近の開発では、人工ビーチの計画に海と陸とを行き来するオカヤドカリ類の生息場を考慮した海岸林や岩場を設けて、保全を図っているところが多くなり、人と自然との共生をうたった公共事業での取り組みとなっています。それでも、背後地に豊かな自然林のある海岸での何千、何万というオカヤドカリ類の大群に出会える機会を将来に引き継いでいくことが一番大切なのではないでしょうか。

■参考文献
・ 西村三郎 編著,1995 原色検索日本海岸動物図鑑[Ⅱ],保育社,663pp.
・ 亀崎他,1988 沖縄海中生物図鑑 第8巻,新星図書,232pp.


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