生きもの歳時記
沖縄の海辺から
満月の夜に ~オカガニ類~

腹に孵化直前の卵隗を抱え、海辺に現れたオカガニのメス

波打ち際で体を震わせて放仔するメスのオカガニ
前にこのコーナーでオカヤドカリ類の繁殖を紹介しました。ところで、同じ夏の満月の夜、大きなカニも海岸林から砂浜に現れます。このオカガニ類もオカヤドカリ類と同じく大潮の満潮時にメスが孵化直前の卵を海中に振り放ち幼生が孵ります。
沖縄では5種のオカガニ類が知られています。普通にみられるのは、オカガニとミナミオカガニです。

ミナミオカガニ、大型のカニで甲羅の幅は
10cmに達する

夜間の道路を渡るオカガニは輪禍に巻き込まれ
ることが多い
オカガニは普段、海岸林の中に巣穴を掘って、主に夜に行動します。強そうなカニですが、臆病で人が近づくと逃げ、むかってくることはありません。しかし、産卵のときは、ひたすら海辺に向かって進み海岸道路を横断します。この時期、交通事故に遭うオカガニは多く、いたるところで轢死しているカニをみかけます。
オカガニ類が多いところでは犠牲を減らすため、車の利用者に注意を呼びかけています。車両通行止めができない国道等では、国道事務所や地元住民による「カニさんお助け隊」で産卵に出向くカニを保護する活動もあります。また、道路の下をくぐる「カニさんトンネル」で海辺にカニを誘導する試みもあります。オカヤドカリ類とオカガニ類が産卵で海辺へ大移動する光景は、夏の風物詩です。いつまでもみることができるよう環境への配慮が必要です。
■参考文献
・ 西村三郎 編著,1995 原色検索日本海岸動物図鑑[Ⅱ],保育社,663pp.
・ 永井他,1988 沖縄海中生物図鑑 第7巻,新星図書,250pp.