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高齢化社会のバイオクリマ

No.4

2016.05.25

吉野正敏

熊本地震直後の介護活動

最初にどうするか

 熊本地震による高齢者の死者数についてはこの連続エッセイ[2]で述べた。[3]では、北日本大震災の時の高齢死者数ピークと比較した。地震による死者は圧死がほとんどである。いわば日常生活をしている人が倒壊家屋・家具転倒などによって押し潰されたりすることによる。高齢者の生活空間と差があろうが、詳しい研究はないようである。
 寝たきりの要介護度の高い人はもちろん、車椅子でなければ移動できない人、杖なしには歩行できない人などや、介護度のやや低い人・要介護支援の人達への介護活動をどうすべきか。熊本地震の場合はもちろん、それ以前の大地震の場合についても、統計資料・研究結果などがない。個々の大変だった事例について、新聞・テレビによる報道はあるが、全体像はつかめていない。
 健康な日常生活を送っている若い人、壮年者などの避難手段・対策、避難所問題、地域の復興・復旧などの推進は、地震災害の現場では最優先課題であろう。だからと言って、要介護者を放って置いてよいとはならないであろう。どのような行動を、地震発生後いつまでにしなければならないか、考えておく必要がある。

問題の整理

 問題を地震発生後の時間に従って整理してみよう。ここでは、介護を行なう人を介護者、介護される人を被介護者とする。

(1)避難行動、避難所への移動:介護者が家族か・介護施設職員か。
(2)避難所生活:一般人と同じところか、他の介護施設か。
(3)介護者の行動内容:医療を伴うかどうか。
(4)介護者による被介護者の健康状態・病状の変化観察・記録。
(5)介護者はその避難所全体と受け持ち被介護者の現状の相互受け入れ態勢の気配り。
(6)介護者による避難所への諸種報告・連絡、情報交換。

熊本地震直後の動き

 今回の熊本地震は東日本大震災から5年しか経っていない。福島・宮城・岩手などは、まだ復興の途上である。苦い経験を生かして避難活動などのマニュアルを作成中の地方自治体・事業所・学校・団体も多く、災害に驚かない日本人だが、5年でまたこの大きな地震が九州に発生したことには驚いた。結論を先に言うのはおかしいが、熊本地震直後の介護関連の日本社会の対応に、東日本大地震の経験は生かされていないようである。
 まず、われわれに日を追って伝えられた介護関連の情報を書いておこう。

(1)2016年(平成28年)4月14日21時26分および4月16日1時25分に最大震度7の2件が発生。
(2)その後、余震の回数・大余震が極めて大きい震度を示した。
(3)4月22日付けで厚生労働省は各県に対し、「社会福祉施設等に対する介護職員等の派遣依頼について」通達、県はホームページなどで流す。この中に、「介護要員等の派遣に係る費用の取り扱いについては、東日本大震災と同様の措置がとられることとされています。」という文言がある。これが唯一の前例にならうという箇所である。
(4)4月29日の朝日新聞は熊本県内の少なくも28の介護施設で102人の介護要員が不足していることを報じた。介護の質の低下につながる心配を指摘した。
(5)4月29日、朝日新聞は県内に約100ある介護老人保健施設で10人、約200ある特別養護老人ホームで6人など、介護要員が不足していることを報道した。特に熊本市にある29の介護老人保健施設の内の9施設でスタッフが不足だという。
(6)4月30日の毎日新聞は、益城(ましき)町の特別養護老人ホーム「いこいの里」の職員約60人のほとんどが自宅損壊の被害を受けた。施設内エレベーターが停止。上下水道断水。デイサービス用の部屋が避難所になった。これらの問題を報じた。
(7)4月30日、毎日新聞は熊本県が県内の10市町村にある730の高齢者施設で調査した結果を報じた。すなわち、33施設における介護や看護スタッフの不足の訴えが合計127人に及んだという。市町村別のスタッフ要望数は、
熊本市77 人
益城町14
南阿蘇村9
嘉島町7
美里町6
御船町5
氷川町3
宇城市3
甲佐町2
阿蘇市1
で、合計127人であった。
(8)4月30日、毎日新聞によると、県の高齢者支援課は、「個別にボランティアが入っているところもあるが、介護の現場は24時間体制で休めないので、ボランティアに頼れない。早く人員不足を埋めていかねばならない」といっていると報じた。

地震後における介護関連報道の日数

 上記の新聞報道を日数でくくってみると、次のようになる。地震発生から、

約1週間後------政府‐地方自治体‐介護関連母体などの間に通達・報告が流れる。
約2週間後------介護関連現場の状況・実態が報道され、周知される。
約半月後以降---介護施設内の具体的問題、例えば、エレベーター停止、上下水道断水、介護施設の1部が避難所になっている、スタッフの不足など。

 上記の日数をみると、もう少し早くならないかと思われる。約1週間後が約3日後、約2週間後が約7日後、約半月後が約8日後が一つの目標であろう。その間に、地震被害地以外の地方自治体・民間企業・支援グループがそれぞれの体勢を整え、具体的介護活動に移らねばならない。


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