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高齢化社会のバイオクリマ

No.6

2016.06.22

吉野正敏

高齢化社会の人口と介護認定者数

問題の所在

 高齢化社会では、高齢者が若年者より多くなるが、その状況は、詳しく見ると、かなり複雑である。人口ピラミッドという表現は誰でも見たことがあろう。横軸の中央に0点を取り、その左右に男女別に人数を目盛る。縦軸に年齢を取って表すと、ピラミッド型を示す。ある地域なり、国なりの人口ピラミッドは、戦争などの影響で出生率が変わると、そのピラミッドにくびれが出てくる。
 近年のように出生率が落ち込むと、下部のくびれがひどくなり、中年の部分が多くなる。さらには逆三角形(下が小さく上が大きい)のような形になる。高齢化社会の人口ピラミッドの形成である。
 ところが、三角形といっても、様々な偏りが現実にはある。男女の差、くびれの形の差もあるし、三角形がいくつか重なったように現れる場合もある。特に高齢者の層、言い換えればピラミッドの頂点部分の形の差は、地域(国)によって異なり、一つの地域(国)でも時代によって変わってくる。
 このような問題について、少し述べたい。

高齢化社会の実態

まず、日本の高齢化社会の人口について述べたい。

(図1)高齢化の推移と将来推定。(介護白書、平成27年度版による)

(図1)高齢化の推移と将来推定。(介護白書、平成27年度版による)

 (図1)は高齢化社会の推移の実態を、1950年(昭和25年)から2014年(平成26年)までについては実測値で、それ以降の2015年(平成27年)からは推計値によって示す。日本の総人口は2010年(平成22年)に最多で12,806万人に達し、それ以降は減少しつつある。図の右の方(横軸)は2060年(平成72年)までを示してあるが、棒グラフが次第に短くなり、総人口は8,574万人まで減少する。
 ここで重要なことは、15~64才(図で水色)の中年層の減少が著しいことである。いわゆる現役の働き盛りの層の人口は2060年には約半分に減少する。また、0~14才の幼児・若年層も約半分になる。
 これと対照的に75才以上(図で桃色)の高齢者層は増加の一途をたどり、2060年には2015年の約1.4倍に増加する。高齢化率(65才以上の人口割合)は図で赤丸を連ねた線で示してあるが、増加傾向は明らかで、1980年代後半には10%を越し、2000年代後半に20%を越した。推定では2020年代前半に30%を越し、2060年にはほぼ40%に達する。総人口は少なくなり、高齢者率はこのように大きくなるのだから、事態は深刻と言わざるをえない。
 従って、私が指摘したいのは、高齢化社会のバイオクリマに関する対策・対応の問題は、高齢者層よりも、幼児・少年少女の年齢層に、より力を注ぐ必要があるということである。 託児所・幼稚園などにおけるバイオクリマ問題は研究が遅れているのが現状である。

高齢化率の変化

 2014年における都道府県別に求めた65才以上の高齢者の総人口に対する高齢化率(%)は沖縄県だけが19%で、他は日本全国すべて20%以上、32%までである。ところが2040年の推定高齢化率はやはり沖縄県が30.3%で、日本全国の中では最も低い。北海道は40.7%、東北地方の諸県は36.2~41.5%で大きな値をとる。関東地方では東京都が33.5%で、これを含めても33.5~36.6%、中部地方の諸県は32.4~38.7%である。高齢化率は北日本で大きい。この事はさらに詳しく研究しなければならない。
 したがって、2014年から2040年への伸びも北日本で大きい。東京都や愛知県(名古屋を含む)の大都市では、2040年の推定値は周辺の諸県に比較して小さい。これは都市に人口が集中するが、非高齢者が多いためと思われる。この事も留意しなければならない。
 四国の諸県では、2040年の推定高齢化率は大きく、高知県は40.9%、徳島県は40.2%など北海道・青森県とともに40%を越す。山岳地域を含むためか、いわゆる過疎化地域が広いためか分析を必要とする。もし、そうだとすれば、バイオクリマ対策において、最も弱点の多い地域だからその研究は大切だと思う。

介護認定者数の推移

 連続エッセイ[5]で介護認定者数について述べ、要支援~要介護1~5の階級別の生気候学的問題点を考えた。今回は、日本全国を年度別に見た変化を紹介したい。

(図2)認定者数の推移(年度末現在)(介護白書、平成27年度版による)

(図2)認定者数の推移(年度末現在)(介護白書、平成27年度版による)

 2000年(平成12年)から2011年(平成23年)までの11年間の推移を(図2)に示す。平成18年度には細かくなり、要支援2、および要介護1に分かれた。このため、17年度まで要介護1であった人が、平成18年度には再区分の結果、要支援1、2と要介護1に再評価され、統計的には不連続を生じた。しかし、要介護2、3、4、5については連続していると見てよい。もちろん、総数は連続した統計と見てよい。
 (図2)からわかることは、次のとおりである。

(1)2000年から2005年までは、どの階級も次第に増加している。2006年から2011年までも同様、どの階級も増加している。
(2)近年の全国総計では要支援認定者数は1から5へ次第に少なくなることを前報でのべた。また、要介護1と2を比較すると、逆転している県・市・町村があることも述べた。図2に見られるように、2007年(平成19年度)、2008年(平成20年度)、2009年度(平成21年度)に要支援2が1を上回っている。この分析も必要と思う。

[文献]
公益社団法人全国老人保健施設協会編集(2013)平成25年版介護白書。介護保険制度の持続的発展のために。TAC出版、東京、197p。
公益社団法人全国老人保健施設協会編集(2014)平成26年版介護白書。老健施設の立場から。TAC出版、東京、207p。
公益社団法人全国老人保健施設協会編集(2015)平成27年版介護白書。老健施設の立場から。TAC出版、東京、214p。


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