
この句はいろんな風に解釈できる。「東京に本当の空がない」と病気と闘っていた高村光太郎の妻智恵子を空気のきれいな福島県二本松の安達太良山麓へ転地療法として送り出したという話しを思い出す。あるいは、首都圏の大学や大会社に入れなかった子弟を都落ちさせる口実に環境のよい田舎へ出たほうが良いよと慰める風景にも見える。しかし、昨今は必ずしもそうとも言えないのが実情で、原発の放射能発生源から少しでも離れた場所なら都会であろうと田舎であろうと移住を望んでいる向きがある。その意味ではこの句は時間も地域も越えて活きているバイオウェーザー川柳といえる。
註: 故人定本広文氏は筆者(福岡義龍)の川柳の師匠