バイオウェザー川柳
No.16
2013年7月
福岡義隆
夏の海岸地方では、海風と陸風が交代する早朝と夜に風が止む時がある。いわゆる朝凪と夕凪である。特に夏の小笠原高気圧に覆われて猛暑が続くと、夏ばてなどで身体の抵抗力が急落しやすい。そんな時期にコダカアカイエカに刺されると日本脳炎が発症することがある。症状としては、高熱、痙攣、意識障害などと深刻な状態になるが、近年は幸い予防ワクチンが普及されたことと蚊が少なくなって発病率は低下してきていた。しかし、昨今の温暖化によってコダカアカイエカが増えつつあるインドなどの南アジアでコレラとともに漸増しつつあるという報告もある。その上、亜熱帯化しつつある日本にコレラも上陸するという説もある。
オノマトペという擬音語である「ころころ」と「うとうと」を上手く詠み込んだ句である。風の音として「ヒューヒュー」とか「そよそよ」という風もあるが、暑い夏に吹く涼風を、風鈴が奏でる音のように「ころころ」と表現することによって涼しさを強調しているところに意外性が感じられる。夏の海風が涼しさをもたらしていても、昼寝をしたくなる気持ちを「うとうと」というオノマトペが際立たせてくれる。「ころころ」から「うとうと」へと二つのオノマトペが風の流れさえも描写しているようにも取れる、さすがに高浜虚子である。電気的な空調施設では味わえない風の癒しが効果的なオノマトペを多用したいものである。
コレラ菌は飲食物に混じって経口感染するとされ、法律でも三類感染症に指定されている。梅の実が熟する梅雨季節も明けると猛暑の真夏をむかえ、生水や生ものが多食されると、国内では稀ではあるがコレラ的な症状を招く恐れもある。そんな時、コレラ菌が酸に弱いことから梅干を食べるとよいと昔から言われている。熱帯地域へ旅行する際には感染する危険もあると言うことで、筆者もインドへ調査旅行した時は安全のために梅エキスも持参し適宜服用した。なお、コレラは江戸時代も発症したことが記録にあり、ころりと死ぬことから「コロリ(虎狼痢または古呂利)」と言って恐れられたとされる。
昨今の新築戸建では縁側は非常に稀になったが、吉田兼好(徒然草)いわく日本の家は夏をもって旨とするとも言われるように、南側に縁側があって暑さをいったん和らげてから風を取り込むので、意外に涼しい。特に夏の座敷は縁側が涼しいのである。一方、鰈(かれい)は縁(ふち)部分の軟骨が美味しいらしい。魚にはコラーゲンという物質が含まれていて、煮るとこの物質が溶け出してきてゼラチンにかわる。鰈の煮こごりが固まるのはゼラチンのせいで、煮こごりの美味さをいっそう引き立ててくれる.。
縁側は日当たりも良く寝そべってよく本を読んだりしたものであるが、「日向で本を読むと目が悪くなる」という諺は、日差しが強すぎるからだけではなく、寝そべる行儀の悪さもたしなめている諺でもある。