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バイオウェザー川柳

No.11

2013年2月

福岡義隆

死はいやぞ其きさらぎの二日灸  西行法師の有名な和歌「願はくは花の下にて春死なむその二月(きさらぎ)の望月のころ」を踏まえて、冒頭の俳句を二十四才の正岡子規が素直に明るく詠んだものである。句の「二日灸」というのは二月二日と八月二日(いずれも陰暦)に灸を据える風習である。この冬(まだまだ寒い立春のころ)と夏(まだまだ暑い立秋のころ)に灸を据えると効果が倍になるとか、無病息災にして長生きできるという俗信があったようである。灸は、つぼと呼ばれる特定の部位に温熱刺激を与えて生理状態を変化させ、疾病を治癒する伝統的な代替医療、民間療法である。中国医学、モンゴル医学、チベット医学などで行われている。
豆食べてまめに暮らせと 祖母卆寿  各季節の始まりの日、立春、立夏、立秋、立冬の前日のことで、季節を分けることをも意味しているが、江戸時代以降は特に立春(二月四日頃)の前日を指す場合が多い。豆を撒き、撒かれた豆を自分の年齢(数え年)の数だけ食べる。自分の年の数の1つ多く食べると、体が丈夫になり、風邪をひかないという。かつては、豆のほかに、米、麦、かちぐりなども使われたという。豆となったのは、五穀の中でも収穫量も多く、鬼を追い払うときにぶつかって立てる音や粒の大きさが適当だったからとする説がある。ともあれ植物の肉とも言われるヘルシーな豆を食べれば元気で長生きできるとお婆ちゃんの知恵にある。
春一番こころの扉あけにくる  連日続いていた西高東低が弱まって、日本海に小さいが荒い低気圧が湿った南風を引き込む。時には漁船に被害をもたらすほどの風、それが春一番である。この風が脊梁山脈を吹き越えると気温が上昇するフェーン現象が発生する。日本海側の地方では古来この風が吹くと頭痛がするといわれている。北米ロッキー山脈麓のチヌークや南米のシロッコ吹走時にも不快になるなどの研究がある。冒頭の川柳に「こころの扉をあける」というのは、冬の寒さで閉じ込めていたもやもや気分を開放させるように春一番が吹くようにも読める。実際にはフェーン症とも言われる気象病で、気圧の微変動や上空からのオゾン降下が影響しているという。
黄砂にも酸雨の衣つけて 来る  黄砂が日本列島にやってくるのはおおよそ一月の下旬から四月上旬頃である。主として中国の高度地帯あたりで上空に舞い上げられた砂粒が、偏西風に乗って日本にやってくる際、中国の内陸の工場地帯や臨海港工業地帯から排出された酸性物質が、黄砂の微粒子に付着して運ばれるものが少なくないようである。長距離輸送の過程で雪だるま式に酸性物質を取り込んでくるので、黄砂そのもののアルカリ性を凌ぐ酸性になって日本に降下すると考えられている。酸性雨のことを中国語で酸雨といい、植物生育障害は招くが、人体への被害としてはロンドンのスモッグ事件で呼吸器系に支障を招いた。  なお、酷い黄砂日は視界が悪くなり交通マヒをおこしたり、中国本土では気管支系疾患を招くという。

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