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バイオウェザー川柳

No.4

2012年7月

福岡義隆

大豆は畑の肉というベジタリアン  デカン高原(インド)のベジタリアン農村に調査で二カ月間滞在したことがある。この村での唯一の動物性タンパク源はヨーグルトであるが、牛は草類しか食べてないから牛乳は植物性タンパク源ということになる。ときおり魚を食べているが魚は海の野菜だというから面白い。実は、大豆は畑の肉と命名したのはベジタリアンではないドイツ人で、良質のタンパク質を多量に含んでいることに由来するようである。七月ともなれば、特に都会では熱中症が心配のたねとなる。古川柳に「暑いこと酒の相手に奴出る」という粋な句がある。夏バテに大豆から作られる冷奴を食べながら、酒(米)かビール(麦)で体内まで温度を下げたいものである。日本の夏はまさにベジタリアン向きの夏かと兼好法師も認めてくれそうである。
夏座敷とカレイは縁側の方がよい  夏の暑い時は、熱気のこもりがちな室内よりは、風通しのよい縁側の方がよいのは言うまでもないことである。が、カレイが縁側とはどういうことかというと、カレイのヒレの付け根部分を縁側と言い、その肉がおいしいということらしい。要するに運動の激しい部分の肉で、豚のモモ肉や鳥のテバ肉などと同じく総じて味がよく、夏バテで食欲の進まないときには最良の食材である。  昨今の建物は気密性がよく冬の寒さには適しているが、猛暑の夏には冷房病を避けようとするあまり、夜間に熱中症で死亡する独居老人が少なくない。徒然草が誇る夏向きの隙間の多かった日本の建物を見直したいものである。未だに自然換気を重視している沖縄の方が東北地方より熱中症発症率が少ないことが実証されている。
美しい花によい実はならない  「奇麗なバラには棘がある」とも言われるし、「美人薄命」という諺もあるが、必ずしもそうとは思わない。むしろ見かけの作られた美に対する警句なのだろう。心の美しい人は素晴らしいし、血の美しい人は健康である。西洋流の花言葉や花占いで言うと、バラは「愛らしい」とされ、「花も実もある人生」そのものでもある。真紅のバラは情熱と前向きの自尊心をもくれる花とされる。特にミニバラは積極性や機動力さえも与えてくれるという。実は美人薄命というのは佳人が病んだ肺結核全盛期の言葉である。  七月も半ばを過ぎると梅雨も明け、鬱陶しい中にあって多彩な色で心を潤してくれたアジサイもその役目を終える。そして関節炎やリウマチに悩まされていた人たちも元気になってくる。
帰ろふと泣かずに笑へ時鳥  明治のころ、肺病の代名詞として時鳥といってたようであり、この夏目漱石の俳句でも肺病(肺結核)を患っている正岡子規のことを詠ったようである。時鳥は不如帰とも書き、「帰るに如かず」(帰るのがもっともよい)と解読し「そんなに帰ろうと泣かないで笑ったらどうだ、時鳥よ」と呼び掛けているのだという(坪内稔典著『俳人漱石』)。もちろん時鳥=子規のことである。  ホトトギスは夏の季語であるが、五、六月ごろ渡ってきて低山帯から高山の林に棲み迅速に飛ぶ鳥であるのに対して、肺病は寒候期に発症する感染病のひとつである。戦後、結核は激減したが、肺がんとか肺化膿症、肺炎などがあり、咳で吐き出すものによって重症度がことなる。ところで、時鳥は閑古鳥と形が似ていて間違いやすい。

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