
雨を予期させる現象に人の毛髪の伸縮がある。毛髪は湿度の変化に敏感で、雨が近づき湿度が上がると髪が伸びるのである。湿り気が生ずる直前は乾ききっていて櫛でとけにくいので、「櫛の通りが悪いと雨が降る」と言われている。一方、「頭痛や間接、腰、古傷などが痛むとき雨が近い」という諺があり、これらを組み合わせると冒頭の諺になる。
湿度の増減で毛髪が伸縮する原理を利用した毛髪湿度計は、感度のよいブロンドの細い毛髪が使われていて、僅かな変化量をテコの原理で拡大して記録するよう工夫されている。電気は要らずアナログ的に読み取ることができ便利であった。毛髪と言うバイオでウェザーを知る先人の知恵をせめて教育の場に遺したい。

梅雨晴れのことを旧暦の五月(新暦の六月)に晴れるので五月晴れというのが本来の意味である。この状態が頻繁に続けば空梅雨になり、あまりのかんかん照りで紫外線による皮膚癌の心配がつのる。日焼けのみならず目にも影響し人によっては白内障の危険性もみのがせない。
そうは言っても時折の晴れ間は、洗濯物や布団干しににはありがたい。紫外線は衣類などに付着している菌類を駆除してくれるだけでなく、布団綿の中まで浸透して化学反応によってアルデヒドなど香りの強いものが作られるという。これが「太陽の香り」のもとなのである。
無害波長域の紫外線はビタミンD形成にも重要で、霧雨などで日照不足の地域では骨の成長にも影響するという。かつてのロンドンのセムシ男を怪奇小説に垣間見る。