
九月半ばは残暑の余韻濃厚といった昨今である。そして九月は海水温度が年間で最も高く、日没後も海水の熱容量からして温度変化は遅れ、海底ほど暑いことを漱石は知っていたのであろうか。防衛幹部学校の石原敬浩教官の研究によると北極の氷が年々減っているが、最も広く後退するのは九月であるという。温暖化に加え、海の底はこの頃が意外にも暑いのである。
日が落ちるという表現は初秋に相応しいとも言える。木の葉も落ち始める秋を英語でフォールというのは言いえて妙である。そして人間の気持ちも滅入り、うつ病的になりやすいのでスポーツや旅をして、良く食べて心身のバランスをとるようにしたい。
文献:「海幹校戦略研究」(一巻一号、二〇一一)

「津波てんでんこ」の教訓を子猫から教えられる思いでこの句を選んでみた。昔から三陸沿岸では津波が発生したら誰もが自分の考えで山へ逃げなさいという伝承が活かされた地域ではかなりの人が助かったが、「集団での行動を促した」地域は逃げ遅れて多数の人が被災してしまったようである。猫は危険から逃れられる距離まで測れる本能を身につけているようで、高いところから落ちても四足で台地に着地して助かる。防災や未病に関する先人の知恵には、諺や諺化した短詩形歌が教訓的な伝承として重要であることを冒頭の句が教えてくれる。
「津波てんでんこ」(新日本出版社)は明治の三陸地震を少年時代に体験し後日、震災伝承の大切さを豊富な資料でまとめたもの。