
秋も深まると移動性高気圧のもとで晴天日が続く。日中が良く晴れていて風が弱いと、夜から早朝にかけての放射冷却が盛んとなり、草花や地面に露ができる。しかし、この露そのものを踏むことが脚気予防となるわけではない。朝露を踏むというのは、朝早く起きて散歩することに意味がある。脚気というのはビタミンB1の不足からくる病気であり、全身に倦怠感が生じたり、下肢が重くだるく感じるもので、時には動悸とか息切れなども伴うことがある。足のだるさやむくみが朝の散歩で解消され気分も爽快になることをも冒頭の諺が意味している。「故郷の土を踏むと脚気が治る」というのも同じで、都会から田舎に帰ると運動量も増え、食事も規則正しくなるから脚気が治るということである。

病状を言う度に薬がどんどん増やしてくれる医者が少なくない。診察に訪れ、少しずつ良くなりましたと言うと医者が言いかねないことを皮肉って詠んだのが冒頭の句である。特に食欲の秋、行楽シーズンということもあって、胃腸の疲れもあるだろうし,彼岸(秋分)が過ぎると日に日に寒くなり風邪もひきやすくなる。いろんな薬を多用せざるを得なくなるのも事実であろう。「薬も過ぎれば毒となる」という諺もあるが、もともと薬は体にとってはすべて異物であり、ある薬理学者は「すべての薬は原理的には毒である」とさえ言っている。その毒性を極力おさえ、薬としての効果を発揮する適量内で薬効があるのだから、過度に増量すると毒に変身する。飲み合わせも指導をうけ指示通りに飲むのが無難ではある。