
この句は俳人櫂未知子さんの著書『食の一句』(ふらんす堂)十一月十二日に紹介されているのであるが、櫂さんの解説にもあるように一読して思わずふきだしたくなる川柳と言ってもいい好きな句である。外見的にも白髪や皺の増えた仲間を喜ばすように「まだ若いよ」と互いに褒め合っている微笑ましい情景が目に浮かぶ。久し振りの旧交へこつこつ貯めた年金で牡蠣鍋を突きながら若い頃を懐かしむ。美味で栄養価も高いので、百薬の長たる酒とともに口へ運ぶ。孫自慢から薬自慢へ話題が変わる頃になって、ようやく向かい席の名前を思い出すほどに、名前がすぐ出ないボケの初期症状を軽減する知恵を出し合って帰途につく。