
近年、酸性雨でスギが枯れるという話はあまり聞かなくなってきた。スギが元気なほど心配なのはむしろ花粉症である。日本における花粉症は一九六三年の日光スギ花粉による患者が最初である。欧米では十九世紀から問題にされており、英語ではhay feverと言い枯草熱と誤訳されていた。イギリスではイネ科花粉、アメリカではブタクサ花粉が主な原因とされる。日本では昨今花粉症患者が急増し、人口の一割以上に達している。注目すべきは、スギ林の多い山間地より首都圏などの都市域に花粉症患者が多いという。大気汚染物質との複合作用かどうかは確かではない。スギ花粉の飛散数は前年の夏の温度と相関が良く、昨夏の猛暑でこの春は例年の数倍から十数倍も多い。