健康コラム
秋のコラムの記事一覧
No.30
2009.9 Categories健康コラム・秋
片頭痛の概要
片頭痛の原因・経過・誘因・季節や気象との関係について
●片頭痛ってどんな病気?
普段はなんともないのに頭痛が起こるとつらく、動くとさらに痛みが増して、ひどいときには吐き気を伴うような頭痛に悩まされていませんか?もしあるとすれば、あなたは片頭痛持ちの可能性があります。
片頭痛は、①片側が痛い、②ズッキンズッキンと脈打つような痛み、③かなり強い痛み、④動くと痛みが増す、などの特徴があり、また、頭痛の最中には、①光と音に敏感になる、②吐き気がしたり吐いたりする、などの症状を伴います。片頭痛患者さんの10~20%の人では頭痛の前触れとして目の前にチカチカする光が見えたり、視野の半分がぼやけて見えなくなることもあります。
日本には800万人の片頭痛持ちがいるといわれています。男女とも20歳代~40歳代に多く、女性は男性の3.6倍です。
片頭痛の有病率(性別・年代別)
●片頭痛の原因は?
片頭痛の原因はまだはっきりとわかっていませんが、血液中の血小板から分泌されるセロトニンという神経伝達物質や、脳の血管の周囲に存在する三叉神経の関与が推測されています。何らかの刺激を受けると、頭蓋内の血管が拡がり、拡がった血管が直接近くの感覚神経を刺激するとともに、血管の周囲に炎症が広がり、痛みが起こると考えられています。
家族の中に同じような片頭痛持ちの人がいることが多いので、何らかの遺伝子の問題も考えられています。
●片頭痛の経過
片頭痛には一連のパターンがあります。典型的な例は、予兆期、前兆期、頭痛期、解決期、回復期と続き、「片頭痛はシンフォニーである」と表現されることがあります。
①予兆期
なんとなく頭が重い、首や肩がこる、あくびが出る、手足がむくむ、いらいらする、妙におなかがすいて甘いものを食べたくなる、などの症状が出てきます。
②前兆期
片頭痛持ちの10~20%の人が、頭痛が起こる前ぶれ症状を訴えます。その95%以上は閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる、目の前にキラキラ光る点やギザギザが見えるという視覚の異常です。
③頭痛期
頭がズキンズキン、ガンガンと強く痛み、吐き気がしたり、実際に吐いたりする場合もあります。
④解決期
吐いてしまうと楽になり、ぐっすり眠ってしまいます。眠って起きると結構すっきりしています。
⑤回復期
ひどい頭痛が去ったあとの翌日など、頭をふったり下を向いたり咳をするとまだ少しズキッとした痛みが残っています。 このような頭痛を繰り返していれば、片頭痛と考えられます。
片頭痛発作の経過
●片頭痛発作の誘因(引き金)にはどのようなものがあるの?
片頭痛の痛みが起こるきっかけは、ストレスや月経、空腹、人ごみや騒音、光、天候、睡眠、肩こりなど、人によって様々ですし、いくつかの誘因が重なって頭痛が起こることが多いものです。まずは自分の片頭痛の誘因が何であるかを見極めて、それを避ける工夫をすることが大切です。
●片頭痛と季節
雨の降りやすい季節や寒暖の差が激しいときに片頭痛が多くなる人がいます。また、片頭痛は暑さや強い光でも誘発されやすいため、気温が上昇し、太陽が照りつける夏は注意が必要です。その他、冷房している室内で、冷気が直接頭に当たる場合などにも頭痛が誘発される場合があります。
●片頭痛と気象
片頭痛患者さんの発症記録と気象条件との統計解析結果によると、気温が上昇した後に湿度が高くなったとき、また、短時間で気圧が大きく低下したときに痛みを訴える人数が多くなる傾向があり、低気圧の通過に伴う天気のくずれに対応して発症するものと考えられます 。
No.11
2003.11 Categories生活コラム・秋
紅葉前線と降霜
紅葉前線は1ヶ月以上かかって日本縦断、緯度1度南下するのに約4.8日かかります
秋もたけなわともなると落葉樹の多くは葉の色が赤く変わったり黄色くなったりします。前者が紅葉で西日本に多くみられ、後者は黄葉でブナ林の多い北日本に目立ちます。紅葉では、とくにカエデ類が美しい。秋晴れで昼夜の温度差が大きいほどきれいに紅葉します。気象官署ではイロハカエデの大部分が紅色に変わって緑色がほとんど見られなくなった最初の日を紅葉日と定義しています。その紅葉日の等しい日を結んで紅葉前線が描かれています。
春の桜前線が北上・登山するのに対して、紅葉前線は南下・下山します。例年だと、北海道で10月中旬に紅葉が始まり、九州南西部では11月下旬と、1ヶ月以上かかって日本列島を縦断します。南下速度を計算すると、緯度1度南下するのに約4.8日を要することが分かります。一つの山について見ると、低温の山頂近くで紅葉が始まり山麓へ向かって紅葉前線が移動します。その下山速度は100mにつき約3.5日です。
暦の上では11月の初めに立冬を迎えます。この時季に西高東低という冬型の天気図が現れることはきわめて稀ですが、大陸からの移動性高気圧におおわれて、朝夕に放射冷却で底冷えする日が続くことがあります。このような時は上空より地上気温のほうが低くなり、いわゆる気温の逆転現象が発生し、大気がよどみやすくなります。地上1.5mの気温が3~4℃だと、地表面では氷点下になり霜が降ります。近くの山々の木々の紅葉も一層深まります。和風の月名で11月のことを「しもつき」といいます。
霜が降りると紅葉の美しさの反面、収穫時の農作物に凍霜害を招くことがあります。降霜予報は農民にとっては重要な情報です。最近は気象庁の予報技術も向上しましたが、かつては霜が降りるのをかなりの確率でいいあてる古老が農村にはいました。「夕焼けに鎌を磨け」のような観天望気術を身につけていたのです。高気圧が東進している前日の夕方、西の空が真っ赤に染まります。明日は晴の兆候であるから、鎌を磨いて明日の農耕に備えよという経験則です。
夕焼けに霜いいあてる爺の知恵 |
義龍 |
各地のリアルタイム紅葉情報は、携帯電話の<EZwebお天気予報>でチェックできます。
No.10
2003.10 Categories生活コラム・秋
蝗~この字は何て読む?~
つくだ煮が有名ですが、昔は貴重なタンパク源だったそうです
蝗-この字を何と読むかご存じでしょうか?「いなご」と読み、「稲子」とも書きます。イナゴは俳句では仲秋の季語です。バッタ科の昆虫で日本で一般にみられます。「新漢和大辞典」(大修館)によると、「一説にばった。とのさまばった。その大群が飛び行くときは、太陽も見えず、地に下ればたちまちに青草が食いつくされてしまう。」とあります。
サバクトビバッタは、アフリカの砂漠で通常は個々に暮らしていますが、雨期に砂漠が草原となると産卵を繰り返し、多数の成虫が一斉に飛び立って餌を求めて畑や草原を食いつくし、次の緑地を求めて飛んでいくので非常に恐れられています。西アフリカ、中央アジアや中国で恐れられているこのような飛蝗(ひこう)を、日本では伝統的にイナゴと訳しますが、正確にはこれらはサバクバッタやトノサマバッタと訳すべきものです。
では、日本でいうイナゴとはどんなバッタでしょう?本州以南にみられるコバネイナゴやハネナガイナゴが代表的な種類です。体長は1.5~4cm程度であり、成虫は夏から秋にかけて現れます。飛蝗ほどではないですが、やはり群れをつくり、稲を食い荒らす害虫として知られていました。しかし1950年代以降、農薬散布により数が減り害虫としては目立たなくなりました。
イナゴはかつては全国的に食用とされていました。「日本の食生活全集」(社団法人 農山漁村文化協会発行)には、いなご炒り、油味噌、甘煮、炒め煮、つくだ煮などが記録されており、東北地方から沖縄まで全国で調理され、食べられていたことがわかります。昭和21年に出版された、「食品栄養価要覧」(国立栄養研究所・国民栄養振興会編)には「いなご、異名こばねいなご」として100gあたり、水分20.62g、タンパク質64.15g、脂質2.38g、灰分3.33gなどの記載があります。ついでにこれには犬肉、熊肉、猫肉、鼠肉なども収載されています。
最近の「五訂日本食品標準成分表」(2000年、科学技術庁資源調査会編)には、さすがに犬肉、熊肉、猫肉、鼠肉の記載はなく、イナゴについてはつくだ煮だけが収載されています。それによると、いなごつくだ煮100g中には水分33.7g、タンパク質26.3g、脂質1.4g、炭水化物32.3g、灰分6.3gとなっています。その他、カリウム260mg、カルシウム28mg、マグネシウム32mg、ビタミンB1 0.06mg、ビタミンB2 1.00mgなどであり、いまでこそ一種の嗜好品ですが、かつては貴重なタンパク質、ミネラル、ビタミンの供給源であったと考えられます。
つくだ煮の作り方は茄でてから足と羽をとり、砂糖と醤油で煮付けます。稲刈りの頃には腰につけたさらしの袋に捕ったイナゴを入れたそうです。
かさこそと蝗なみうつ麻袋 |
細谷鳩舎 |
No.9
2003.10 Categories生活コラム・秋
衣替え~カギは気温20℃!?~
たまには衣替えによって季節を先取りしてみてはいかが?
衣替えは、本来「更衣(ころもがえ)」の文字が用いられました。平安時代の宮中では、旧暦4月1日(新暦では4月29日)と10月1日(同11月22日)の更衣の日に、それぞれ夏装束、冬装束を内蔵寮(くらのつかさ)から新たに奉りました。またその日、衣裳以外の調度類も掃部寮(かもんりょう)によって季節に応じたものに変えられました。
江戸幕府になると規定がより細かくなり、4月1日~5月4日までが袷小袖(あわせこそで)、5月5日(端午の節句)~8月晦日までは帷子(かたびら)、9月1日~8日までが袷小袖、9月9日(重陽の節句)~3月晦日までが綿入小袖と定められていました。4月1日は冬用の綿入れから綿を抜きます。「4月1日」と書いて「ワタヌキ」さんと読むのはこの習慣に由来します。
明治期になると、多くの学校や職場で制服が用いられるようになり、現在の6月1日と10月1日にいっせいに衣替えが行われるようになりました。
ところで、日本各地の月平均気温の変化をみると(下図参照)、京都、大阪、東京の3都市では20℃のラインが5月と6月、9月と10月の間に位置しています。20℃は約1clo(クロ)、つまり背広の合服一揃い分で心地良い気温ですから、冬への移行期と重なり、体感的にも違和感がないと考えられます。しかし、同じ20℃ラインを適用すると、札幌の衣替えは7月と9月、沖縄は4月と12月ということになります。事実、札幌の衣替えは7月と9月に行われているとのことです。
衣替えは、単に衣を替える日だけではなく、主婦(昨今は夫自身も?)にとっては冬物衣料を準備し、夏物衣料やすだれ、扇風機などの生活用品を手入れして来夏に備える目標の日でもありました。扇風機などは適当な箱が見つからないので、冬には少々早いですが石油ストーブ(ヒーターなど)を取り出して、その箱に整理するのも主婦の知恵でしょう。
ストーブの箱で冬越す扇風機 |
義龍 |
一般に、衣服の社会規範が薄れつつある今日、急に寒くなってあわてて冬物を引っ張り出す風景も珍しくありませんが、衣替えによって季節を意識的に先取りして楽しみ、暮してきた日本人の生活習慣をもう一度見直しても良さそうなものです。