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健康コラム

生活コラム・冬の記事一覧

No.18

2004.2 Categories生活コラム・冬

春一番と黄砂

春の到来を告げるような言葉‥‥春一番。実際には非常に荒々しい天候なのです

立春を境にして急に西高東低型の冬型の気圧配置が減り、大陸から気圧の谷が接近する頃、東シナ海や黄海方面に発生した低気圧が日本海に進んできて発達します。2月の中旬から下旬にかけて、この日本海低気圧に向かって南風が強く吹きこみ、季節はずれの陽気になります。新しい年に入って最初の強烈で温暖な南風なので、「春一番」と呼ばれ、春の到来を告げるような季節の言葉として使われていますが、実際には非常に荒々しい天候なのです。
春一番という気象用語は、1859年(安政6年)に壱岐国(いきのくに、現在の長崎県)郷ノ浦の漁師が、この強風によって多数海難事故に遭ったことに基づいています。すなわち、壱岐、能登、志摩、焼津など西日本の沿岸生活者の間では、本来は被害をもたらす強風として恐れられてきた言葉でした。
1950年代後半からマスコミによって、春一番という用語がよく使われるようになり、2~3月にかけて続く南よりの風を春二番、春三番などと呼んでいます。長くて寒い冬を耐えてきた人々にとっては、待ち遠しい暖かみを運ぶ風のはずですが、高温による雪崩れ災害や、突風による漁船の遭難などを伴なうので、春嵐、春荒れなどともいわれています。
春一番が吹き始めると、冬の間よく見えていた富士山が、心なしか冠雪の白さもくすんで見えます。

春一番富士は白衣をちょっと脱ぎ
義龍

富士山頂の雪にやや色を添えるのは、ひょっとすると黄砂かもしれません。日本海低気圧が強く発達すると、北西季節風が再度吹きこみ、時には黄砂を伴います。それによって、特に西日本の空が黄ばんでどんよりしてきます。富山市などでは、ひどい時には自動車の車体や窓ガラスが泥水をかけたように汚れることもあるといいます。中国大陸のゴビの砂漠やオルドスの平原の黄土が、海を越えて日本にやってくるのが黄砂ですが、最も中国に近い長崎県では黄砂の襲来が多く、視界が悪く(視程数キロ以下に)なるとされています。黄砂の日に降る雨や雪にはかなりの酸性物質が含まれており、黄砂が酸性雨(pH4.4以下の強酸性)を伴なってくることが実測やシミュレーシヨンなどで明らかにされています。

黄砂にも酸雨の衣つけて来る
義龍

低気圧が東進してやがて西高東低の冬型になり、春の陽気から一転して真冬のような寒さに戻ります。琵琶湖湖畔における今津の漁師たちの間に伝わることわざに、「大南風気(いぱげ)3日、雪荒れ7日」というのがあります。南寄りの強い風が吹いた後、しばらく雪の寒い日が続くということです。いわゆる寒の戻りですが長続きはしません。次第に日差しは強くなり、日照時間も多くなり、日一日と春らしくなって啓蟄を迎えます。

No.15

2004.1 Categories生活コラム・冬

曇っても晴れ着の成人式

晴れ着とは「ハレの日」に着る着物であって、日本の伝統的な生活の中で使われてきました

2004年の成人の日は1月12日となっています。昨今の祝日は年によって日が変わるので、どことなく落ち着きません。これまでは昭和23年に制定されて以来、1月15日と決まっていました。最近では、初詣でも晴れ着姿が少ないようですが、1月は正月と成人式で晴れ着を着る機会が1年中で最も多い月であることは確かです。振袖の着用率のトップはやはり成人式で、結婚式、正月、卒業式の順に多くなっています。
成人の日のような祝祭日や冠婚葬祭といった人生の通過儀礼の際は、晴れ着を着る習慣が昔から続いています。もともとは「ハレの日」に着る着物であって、式服、礼服あるいは正装、盛装などの意味に用いられてきました。日常生活や普通の状態を指す「ケ(褻)」に対して、改まった特別な状態、公的、めでたい状況を「ハレ(晴)」といいます。ハレの門出、ハレの日、ハレの場、そしてハレ着など、日本の伝統的な生活の中で使われてきました。ハレは神聖性を意味することもあり、この場合は「ケガレ(穢れ)」すなわち不浄性と対立するものです。
晴れ着は日常生活とは違う形や色、柄、素材などから作られます。仙台地方で「餅食(もちくい)衣装」といわれるのは、祭日に晴れ着を着て「ハレ」の食事をするからとされています。餅以外のハレの食べ物は、赤飯や酒など定められた方法や形式で料理されてきました。さらに、「ハレの場」を注連縄(しめなわ)、幟(のぼり)、幕、竹や松などの常緑樹で飾ることによってハレ空間であることを示そうとしています。なお、晴れ着には、帯祝、袴(はかま)着など各ハレの日に相応しい姿があり、もっと厳粛な儀式には「頭をおおう」ことも行われてきました。かつての成人式に似た元服の儀式の「烏帽子(えぼし)」、今日でも行われる結婚式の「角隠し」などがその例です。
日常の仕事着を脱いで、垢のついていない浄衣である晴れ着に着替えるということは、日常生活とはかけ離れているため、文明の進化による生活環境の変化の影響を受けにくいのです。したがって、世界的にみても各国の晴れ着には、各民族の礼装の伝統・特徴が色濃く残されています。それら各民族服にはその土地の気候風土が強く関わっているとされています。
さて、成人の日がいつであろうと、成人式には確かに晴れ着で出席する若者が多いですが、なかにはジーパン姿で参列するものもいます。それでも少しは緊張しているのでしょうか。

ジーパンが緊張している成人日
義龍

「祝日法」には、成人の日とは「大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます日」と定めています。ここで「大人になる」ということは、「一人前になる」という意味もあります。
暦の上では、小寒から大寒の間に成人の日がやってきます。シベリアの寒気団が最も強く発達する頃で、日本海側は雪曇りですが太平洋側は晴れていて空っ風が身にしみます。スキー場には成人になりたても含め若者が集まり、肝心の成人式場は閑古鳥が鳴くようなありさまも珍しくありません。人生の達人の講話に耳を傾けて、21世紀を考えてもらいたいとも思うのです。

No.14

2003.12 Categories生活コラム・冬

冬至-冬季うつ病と夜型族

秋から冬にかけて日が短くなるころ、決まってうつ病にかかる人がいます

冬至は24節気の一つで、北半球では12月22日の前後にあたります。1年で昼が最も短い日です。冬至では昼の長さが最も短くなるだけではなく、太陽光の地平線となす入射角が最も小さくなります。したがって、太陽光のエネルギーも最も少なく、日本では夏の太陽の25%程度にまで減少します。冬至は昼の長さが最も短い日ではありますが、日出の時刻が最も遅くなるのは冬至よりも2週間ほど遅く、また日入の時刻が最も早くなるのは冬至よりも2週間ほど早いのです。
24節気とは中国に起源をもつ季節暦で、1年を春夏秋冬で4等分し、さらに各季節を6等分してあります。冬は立冬で始まり、小雪、大雪、冬至、小寒、大寒と続きます。季節の節目で農業生産ラインを点検し、ライフスタイルを整える農耕民族の知恵でした。節気には様々な催しが行われます。もうじき訪れるクリスマスは本来冬至のお祭りでした。
秋から冬にかけては昼が次第に薄暗くなり、なんとなく憂うつな気分になります。この時期にきまってうつ病にかかる人がいます。これは「冬季うつ病」といい、通常のうつ病とは症状が多少異なります。一般的には女性に多いです。朝なかなか起きられず、昼も活気が無くついうとうとしてしまいます。甘い物に対する嗜好が強くなり、体重が増えます。憂うつではありますが、深刻な例は少ないです。春になると症状は自然に消失します。
原因はまだはっきりしていませんが、この時期の光量と関係があるようです。事実、毎日2~3時間明るい蛍光灯の光に当たることで症状が軽快しますし、予防も可能でしょう。冬季うつ病が冬眠に似ていることから、体内時計が関与しているのではないかとの説があります。体内時計は光によって1日の時刻を知り、体のリズムを整える生体機能ですが、それ以外にも昼の長さを計測して体を季節に合わせる機能も持っています。したがって、人工照明で体内時計を調節し、体のリズムを冬から春モードに変えることで冬季うつ病が治るのではないかということで研究が行われています。
冬季うつ病には体内時計が関与しているのではないかとの説の当否はさておき、明るい光が体のリズムに大きな影響を与えることは事実です。人の体内時計は約25時間で1日を刻み、調節されないと毎日約1時間ずつ遅れていきます。これを地球の1日である24時間に調節しているのが午前中の明るい光で、この光は網膜を介して脳にある体内時計に作用します。
一方、夜の明るい光は体内時計をさらに遅らせます。この20年間、日本人の生活は夜型になっていますが、その原因の一つに夜の明る過ぎる光とそれによる体内時計のずれがあります。そのためか昨今、不眠と昼間の眠気を訴える若い人が増えています。宇宙からみた地球で、夜に最も輝いてみえるのは東京であるといわれますが、これは決して誇れることではないでしょう。むしろ無駄なエネルギーの浪費や、それに伴う二酸化炭素などの温暖化ガスの多量放出を招いているのです。今一度考える必要があるでしょう。


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