健康コラム
健康コラム・冬の記事一覧
No.17
2004.2 Categories健康コラム・冬
子どもは風の子?~子どもは寒さに強いのか?~
子どもは昔から風の子といって、寒さに強いイメージがありますが本当でしょうか?
子どもは風の子-この言い習わしどおり、子どもは寒さに強いと信じている方がたくさんいることと思います。本当にそうなのでしょうか?寒さに対する生理的反応を、子ども(7~10歳男児)と成人(20歳前後男性)で比較したデータを紹介します。
ヒトには身体深部の体温をできるだけ一定にするための体温調節機能が備わっています。たとえば、寒さにさらされた場合、まず皮膚血管を収縮して皮膚への血液量を減少させ、熱放散を抑制します。さらに寒さが厳しくなると、体内での熱産生量を増加させます。これらの反応の程度は、身体の皮膚面や深部に埋め込まれた温度センサー(温と冷を感受する2種類が存在する)からの情報が脳のある部分で統合され、その結果として脳から出力される命令で調節されています。
気温を28℃から17℃に次第に低下するように設定した部屋に、水泳パンツのみ着用した子どもと成人を1時間滞在させた場合、皮膚温は子どもの方が断然低くなります。この子どもと成人の差は四肢部で著しくなります。子どもの低い皮膚温は、熱放散を抑制するために積極的に皮膚血管を収縮したためではなく、体熱を逃がしやすい子どもの体格特性(体表面積/体重の比が大きいこと)に起因したようです。
図は、その際の直腸温(身体深部温の指標)と熱産生量を示しています。28℃環境下(図中の0分目)では子どもの熱産生量が成人より大きいのですが、寒さにさらされた場合に子どもの熱産生量の増加率が小さく、直腸温もより大きく低下します。そのため子どもは若者より早期に「寒さ」を訴えました。
このような特性をみれば、生理学的には「子どもは風の子」ではなく、寒さに強いとはいえないようです。この言い習わしは、寒さに負けずに屋外でたくましく育ってほしいと願う親心から生まれたように思われます。
しかし、子どもが成人より薄着傾向で通学する姿を思い浮かべ、子どもの方が寒さに強いのではと、まだ疑問に思われる方もいるのではないでしょうか。これは、子どもが成人より動く(熱産生量の増加)ことを強く意識して着衣調節を行っているためだと考えられます。
<参考文献>
Inoue Y at al.:Thermoregulatory responses of prepubertal boys and youngmen in changing temperature linerly from 28 to 15℃. Eur J Appl Physiol 72:204-208,1996
No.16
2004.1 Categories健康コラム・冬
あったか~い電気毛布
電気毛布愛用者の方、快適な布団内温度をご存じですか?温度の上げすぎは体に負担ですよ!
コタツに一旦入ると寒いところに出るのがおっくうで…という方、多いですよね。コタツから離れられないコタツ族は、就寝時間になっても寒い寝室、冷えた布団を想像すると、ますます離れられなくなってしまうでしょう。せめて暖かい布団が待っていてくれれば…ということで電気毛布を愛用している方もいらっしゃることでしょう。足元が冷えて眠れないという女性には特に重宝がられていることと思います。
一見、地味な電化製品である電気毛布も、掛け敷きはもちろん、頭寒足熱に寝床内温度を調節するもの、特に足の冷える人には足元ポケットがついているもの、またダニハンターなる機能がついていたり、室温の変化によって温度を調節するものもあります。洗濯機で洗えるなんてあたりまえの機能です。そして、手ごろな価格で愛用者がいるのもうなずけます。
しかし、電気毛布愛用者の方、あるいはコタツの中で朝を迎えるコタツ族の方、毎朝快調に目覚められますか?“どうも寝たりない”、“疲れがとれずにだるさが残る”、“肌に張りがない”と感じたことはないでしょうか。
右のグラフは、8人の成人女性にTシャツ・短パンといった軽装で、体各部の温度を約1日間記録したものを示しています。室温は、この服装で暑くも寒くもないように調節しているため、就寝中も布団を使用していません。
図の上3本と下3本の温度がおおよそ反対の上昇下降をしています。つまり、核温に分類される直腸温度、胸部・頭部の皮膚温は夜間低くなり、日中上昇を始めていますが、手足の皮膚温は夕方遅くから上昇を始め、早朝には下降しています。睡魔におそわれたとき、手足がボーっと暖かくなっていることを経験したことはないでしょうか。これは四肢末梢の血管を拡張して皮膚から放熱し、核温・脳温をクールダウンして休息モードに入るための生理現象なのです。
さあ、ここで手足からの放熱ができなかったらどうでしょう?皮膚温が36~37℃にまで上昇すると汗をかき体温を下げようとする反応が起こりますが、電気毛布やコタツで体が覆われていると、設定温度によっては有効に体温を下げることができなくなります。これにより十分な休息感が得られないばかりか、軽い脱水状態になるため心臓への負担も起こってしまうのです。
これまでの研究から快適な寝床内気候(掛け敷布団に囲まれた環境内の気候)は、温度32~34℃、湿度45~55%と報告されています。布団内の温度をあらかじめ快適な34℃まで上げておくために、電気毛布は有効です。その後は寝ている人自身が発熱(放熱)体となって寝床内を暖めるため、十分に保温力のある寝具であれば、朝方の気温低下による寝床内温度の低下を防ぐことができます。また、朝方タイマーで室内暖房を入れることが可能ならば、寝室・寝床内温度の低下を防ぐと同時に起床しやすい室内環境を整えることもできるでしょう。電気毛布の電源は、入床時に切るか、タイマーでオフになるよう設定してみてはどうでしょうか。
No.13
2003.12 Categories健康コラム・冬
インフルエンザの予防~インフルエンザとかぜは全く別のもの~
インフルエンザとかぜは全く別のもの。何より予防が大切です。
日本では冬になるとインフルエンザが流行します。原因はウイルスで、A、B、Cの3つの型があります。C型は症状が軽く、子供の時知らないうちにかかっているといわれます。問題はA型とB型のインフルエンザです。いずれも高い熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感等の全身症状がひどく、また感染力が強いので大きな流行になります。普通のかぜは症状が軽く数日で治りますが、インフルエンザは症状が重く治るのに約1週間かかります。
インフルエンザが流行すると、大勢の人が学校や会社を休まなければならず、社会生活に大きな影響を与えます。乳幼児は脳炎、脳症で、高齢者は二次感染の肺炎で死亡することもあります。
現在では、インフルエンザにかかっているかどうかを10~20分で診断する迅速診断法が開発されています。A型もB型も短時間で診断ができるようになり、薬も以前からあったA型に効果のあるアマンタジンや新しく開発されたA・B型双方に効く薬があり、全て保険で使えるようになりました。とはいいましても、重症化すると恐ろしいインフルエンザ。やはり予防が第一で、備えあれば憂いなしです。以下にインフルエンザの予防対策を示しました。
<インフルエンザの予防対策>
1.できるだけワクチン接種をしましょう。100%感染を防ぐことはできませんが、かかっても症状を軽くして重症化を防ぎます。65歳以上の方は1回、13歳以上65才未満は1~2回、13歳未満は2回が目安です。
2.かかったら、安静と栄養と水分を十分とってください。症状が重いとき、インフルエンザA型に有効な薬があります。A・B型の双方に効く薬もあります。できるだけ早く(48時間以内に)かかりつけ医の診療を受けてください。
3.日常の予防としては、流行期には人込みを避ける、うがいや手洗いの励行、マスクの着用を心がけましょう。また、インフルエンザウイルスは気温が低く、湿度も低い方が生存に適していることがわかっています。部屋等を暖房する際は、加湿器などで室内を適度な湿度に保つことが大切です。濡れタオルを干すだけでも湿度の上昇に効果があります。
No.12
2003.11 Categories健康コラム・冬
冬場の食中毒~ノロウイルス(SRSV)に気を付けて!~
冬場に多発するノロウイルス(SRSV)による食中毒に要注意!予防方法を確認しましょう!
冬場に多発する食中毒として、ノロウイルス(小型球形ウイルス:Small Round Structured Virus(SRSV))によるものがあります。11~3月にかけて多発し、多くはカキなどの二枚貝を食べることにより発生します。厚生労働省は、平成9年5月30日付けで食品衛生法の一部改正を行い(衛食第一五五号)、食中毒原因物質として新たにノロウイルスとその他のウイルスを追加しました。
ノロウイルスは、電子顕微鏡像が直径25~35nm(ナノメートル=10-9メートル)の球形ウイルスの総称で、1972年に米国オハイオ州で起きた胃腸炎集団発生の患者から発見されたNorwalkウイルスが原型です。近年、遺伝子学的な解明が進み、遺伝子型G-1(ノーウォークウイルス群)、G-2(スノーマウンテンウイルス群)およびヒトカリシウイルスの3つに分類されています。
ノロウイルスは、60℃、30分程度の加熱では病原性を失わず、塩素系殺菌剤や消毒用アルコールに対しても抵抗性があります。潜伏時間は24~48時間で、主な症状は吐き気、おう吐、下痢、38℃以下の発熱等で、発病当初に激しい症状を起こすことが特徴です。頭痛、咽頭痛、発熱などかぜとよく似た症状がみられる場合もあり、臨床症状からだけではSRSVを特定することは困難です。通常、発症後3日以内で治癒し、予後は良好な疾患です。
ノロウイルスは、小児から成人までの幅広い年齢層に発生し、抵抗力の弱い人では100個程度のウイルスで発症するといわれています。成人の集団発生の感染源は、生カキや酢ガキが多く報告されています。生カキの体内ではウイルスは増殖できませんが、カキは餌のプランクトンを捕るため大量の海水を体内でろ過しており、汚染された海水中のウイルスが生カキの中で濃縮されます。
その他、サラダ、果実、ケーキなどそのまま食べる食品から感染することもあります。また、食品取扱い者を介した感染など、人から人への感染もあります。
<予防および応急手当>
1.食材は十分に加熱!加熱して食べる食品は、中心温度72℃で15秒以上加熱!
2.カキには生食用と加熱調理用があります。表示を確認してから購入しましょう。
3.生で食べる貝類は、ウイルスが蓄積している可能性が大きい内臓を除去しましょう。
4.調理前や生カキ等を処理した後、トイレの後は手洗いを念s入りに!
5.調理器具等を介した二次汚染を予防しましょう。使用した器具(包丁、まな板、ボール等)は消毒液(次亜塩素酸ナトリウム)または熱湯で消毒し、消毒後は食器戸棚等に収納しましょう。
6.感染者のおう吐物、排泄物を衛生的に処理しましょう。
7.下痢やかぜに似た症状がある場合には、調理に従事しないようにしましょう。
8.応急手当としては、電解質を含む水分を補給します。乳幼児の軽い下痢やおう吐では、家庭で果汁や薄い番茶、スポーツドリンクなどを与えるとよいでしょう。おう吐や下痢が激しい時は、必ず医師にかかり専門的な治療を受けてください。