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健康コラム

夏のコラムの記事一覧

No.26

2004.8 Categories健康コラム・夏

寝冷え

寝ている間の体の温度調節

立秋を過ぎても暑くて寝苦しい日が続いています。快適な睡眠を得るのに適した寝床内温・湿度が知られています。これによると温度33±1℃、湿度50±5%RHになるよう寝具・寝室の温湿度を調節することが肝要となります。室内であることを考えても、室温よりも、湿度による影響が大きいのかもしれません。
人体の生理機能には周期性があって、体温や睡眠(眠気)などは24時間で変動しています。ふつう、体温(深部体温:脳や躯幹部の温度)は夕方最も高くなり、その後徐々に低下し、早朝から再び上昇を始めます。この体温の低下には、特に四肢末梢からの熱放散が関与していることが確かめられています。夜間、手のひらや足先がボーッと温かくなり、次第に眠気を感じたという経験はないでしょうか。これは、手や足先の血管が拡張し、熱を放散しているためにおこる感覚です。これによる深部体温の低下が自然な入眠につながっています。血管拡張による熱放散によってうまく体温が調節できない場合、発汗が起こり、汗が蒸発する際の気化熱によって体温を下げる反応が起こります。しかしながら湿度が高いとこの効果も低くなり、ただダラダラと汗をかくこととなります。
寝始めの頃は、このような熱放散が盛んに行われているので、寝苦しい夜などは布団の上をゴロゴロ、それも暑いと畳の上までゴロゴロころがることになります。つまり自分自身の体が発熱体・加湿器になって寝床内気温・湿度をあげてしまうのです。また睡眠中の体温調節反応は、眠りの深さによって複雑で、せっかく掛布団をかけて寝たのに、気づかぬうちに蹴落としていたという経験をお持ちの方もいると思います。睡眠中のある深さの眠りの時間帯と、明け方の体温上昇期に"冷え"を感じるのです。明け方は深部体温を上昇させるために手足表面の血管は収縮しますが、それは最低気温の時刻とほぼ一致しています。無意識で布団をまさぐるが布団はベッドの下、目がさめたときには体が冷えて、鼻がグズグズしたりお腹が冷えて痛い、といったことになります。
居住地、寝室の環境、寝具、年齢により異なるので、寝冷えを防ぐにはこうしたら良いと一概に提案することは難しいですが、寝入りばなと目覚めの時間帯では、気温だけでなく体の生理機能も変化していることを考慮して、寝室の冷房温度・タイマー設定や、寝具特に掛布団・寝間着に工夫が必要となるでしょう。

No.25

2004.8 Categories生活コラム・夏

ゆかた

暑い夏は日本情緒を楽しもう

梅雨明けを待つかのように、7月・8月は花火のシーズンです。隅田川花火大会、東京湾大華火祭りなど、各地の水辺では花火大会がめじろおしです。花火大会といえば「浴衣(ゆかた)DE花火」などというキャッチコピーが出るほど、ここ数年若い女性を中心とした浴衣ファッションが流行し、最近ではすっかり定着したようです。浴衣の種類も白地に藍染めの古典的なものから、ゴルチエやベネトンといったカラフルなブランドもの、肩や脚を出した洋服とのボーダレス・デザインものまで多種多様です。また、女性ばかりではなくカップルで浴衣を楽しむ姿もちらほら見られるようになりました。日ごろ和服とは縁のない日本人ですが、夏の夕べ、一風呂浴びてさっぱりした素肌に浴衣、素足に下駄、団扇を片手に、日本情緒を楽しむのもいいですね。
浴衣の語源は湯帷子(ゆかたびら)です。鎌倉時代、身分の高い人が入浴するときに着ていた麻の白地の単衣を湯帷子といいました。庶民が浴衣を着るようになったのは室町時代以降で、この頃木綿が日本でも栽培・生産されるようになり、水はけは麻より劣るものの、麻より安価でやわらかい着心地の木綿の長着が、湯上りのくつろぎ衣として用いられるようになります。浴衣は手拭に対して身拭とも言われました。また、この頃、盆踊りが盛んになり、木綿や麻の揃浴衣(盆帷子)が流行しました。
現代でも祭りには揃いの浴衣を着ますが、この時代に端を発しているのですね。江戸時代後半になると、浴衣は貧しい庶民の普段着となると共に、絹の使用を制限されていた町人たちの表現意欲の向かうところとなり、絹物にはない大胆で粋な浴衣特有の図柄が創出されました。浴衣地は、吸湿・吸水性に富んだ木綿で汗を吸いやすく着心地のよいものですが、更にぱりっと糊を効かせて肌離れを良くし、これを素肌に着ると、袖口や胸元から入る風が皮膚表面を通り抜けます。帯も幅の狭い単の半幅や角帯、やわらかい兵児帯(へこおび)などで楽に着て、それでも暑いときは、襟を抜いたり、袖をたくし上げたり、団扇で風を起こして涼を取ります。浴衣姿には、冷房など無い時代に、蒸し暑い日本の夏をやり過ごしてきた庶民の衣生活の知恵が込められているようです。

No.24

2004.7 Categories健康コラム・夏

熱中症~発生を予防するための知識と工夫~

発生を予防するための知識と工夫

人は環境の温度に対して、生理的適応能、行動的適応能、社会的適応能を備えています。気温の上昇に際しては、生理的適応の要として脳に体温調節中枢が存在し、体内の熱生産成系、循環系、発汗系の機能を調節し体温の上昇を抑えます。
このホメオスタシスの維持機構が破綻し、体温が上昇(高体温症)すると、熱疲弊(ねつひへい)、熱痙攣(ねつけいれん)、熱射病といった熱中症の症状が出てきます。 このため夏の不快な気温の上昇に際しては、児童、生徒、学生に対する適切な教育指導により、過激な運動を避け過度の温度負荷を加えない注意が必要です。 同時に屋外環境の整備と屋内空調施設の完備により、高温負荷を軽減する努力も必要とされます。
今後、都市におけるヒートアイランドの進行や地球温暖化により夏の気温が高くなることが予想されていますので、熱中症の発生を予防するための知識と工夫(個人的努力と社会適応)が必要となってきます。気象の予報も少し変ってくるかも知れません。
*** 語句の解説 ***
ホメオスタシス【homeostasis】 :
恒常性、生体恒常状態、安定性、生体恒常性。私たちの身体は、とりまく環境が変わっても体温や血糖値・血液の浸透圧や電解質濃度の調整などをして、生きていく上で重要な機能を正常範囲に保つ機能を持っています。これを「ホメオスタシス」と呼びます。
熱疲弊:
大量の発汗による著しい脱水状態になることにより生じます。症状は、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などが挙げられます。
熱痙攣:
大量に汗をかき、水だけを摂取して血液中の塩分濃度が低下した際に生じます。症状は、足、腕、腹部の筋肉の疼痛、けいれんなどが挙げられます。
熱射病:
異常な体温上昇(時には40℃以上)により中枢神経障害をきたした状態をいいます。症状は、頭痛、めまい、嘔吐などの症状から運動障害、錯乱、昏睡に至り、死亡の危険性も大きくなります。
*** 熱中症予防8ケ条 ***「熱中症予防の原則」:日本体育協会(平成5年)

1.知って防ごう熱中症
2.暑いとき、無理な運動は事故のもと
3.急な暑さは要注意
4.失った水と塩分を取り戻そう
5.体重で知ろう健康の汗の量
6.薄着ルックでさわやかに
7.体調不良は事故のもと
8.あわてるな、されど急ごう救急処置

 

No.7

2003.9 Categories健康コラム・夏

食中毒~月別発生と食中毒警報~

最近の食中毒発生状況はどうなっているのでしょうか。患者数の推移をみてみましょう。

食中毒の患者数は、図に示すように春先から増え始め、夏をピークに初秋にかけて多発します。「発生は花見時から紅葉狩りまで」ともいわれてきましたが、食中毒の病因物質に小型球形ウイルスが加えられたことから冬場にもピークがみられるようになりました。

夏季は気温や海水温が上昇し、食品の不衛生な取扱い等により付着した食中毒菌が増えやすく、また、人の体力低下等の条件が重なっています。
わが国で発見された腸炎ビブリオは、特に夏季の沿岸海域に分布しています。海水温が上昇する5月ごろから海水中で増え、魚介類に付着し、流通・調理過程中の高い気温のもとでさらに増えます。7~9月になると魚介類の腸炎ビブリオの菌数が1g当たり10~100万個に達したというデータがあります。この菌量を摂取した場合、半数以上の人が発病するといわれています。
冬季、カキは出荷の最盛期を迎えます。養殖海域でのカキは、エラから大量の海水を通過させて餌となる植物性プランクトンをとらえます。海水とともに体内に取り込んでしまった小型球形ウイルス(SRSV)は中腸線で濃縮されます。海水温が低くなるとウイルスを体外へ排出する機能が低下するといわれています。
さて、食中毒は微生物(細菌、ウイルス等)によるもの、水銀、ヒ素等の化学物質によるものおよび自然毒によるものに大別されます。化学物質の食品中への不正混入による化学性食中毒の発生は、季節に関係無く発生しています。
山菜、キノコ、フグ等は人に有害・有毒な物質(自然毒)を生成し蓄積していることがあります。自然毒食中毒の発生も季節と深い関係があります。山菜は春(4~5月)、キノコは秋(9~10月)、フグは冬(10~12月)に多く発生します。
このように化学性食中毒以外の食中毒と気象・海象とは密接な関係がみられます。これらの関係に着目し、日々観測されている気象・海象のデータから食中毒の発生を予測する試みが神奈川県をはじめいくつかの都道府県で行われています。これらの発生予測は、食中毒の多発する夏季の細菌性食中毒を中心に行われています。食中毒の多発が予測された場合、都道府県では「食中毒注意報」または「食中毒警報」を発令し、地域住民や食品等事業者に食中毒への注意を喚起しています。
しかし、地域住民にこれらの「食中毒注意報」や「食中毒警報」が適切に伝わっているのでしょうか。この点において、各都道府県のさらなる努力を期待したいと思います。

No.6

2003.8 Categories生活コラム・夏

避暑~森の空気を意識する~

自然の大気を満喫し、健康増進という観点から避暑を改めて見直してみましょう

避暑というと、猛暑の都会を離れて高原の別荘に滞在するという、ステイタス感覚をくすぐるようなイメージがあります。そもそも避暑は、明治期に日本に滞在していた欧米人が、高温・多湿の夏に耐えられず、すごしやすい場所を探したことに端を発しています。
日本最初の高原避暑地である軽井沢は、明治中期にイギリス人宣教師ショーが移り住んで以来、発展したものです。軽井沢の夏はイギリスの気候に似て高温・多湿ではなく、ブナなどの落葉広葉樹林の植生も共通しています。軽井沢には、欧米人が慣れ親しんだ風景が広がっているのです。避暑地は、欧米人がなじんだ快適環境といえるでしょう。
では、彼らは避暑地でどのように過ごしてきたのでしょうか。欧米人にとって、避暑地での生活の中心は森にありました。森の中を歩きながら歓談し、気持ちを落ち着かせました。森は思索にふけったり体調を整えたりする場所だったわけです。避暑とは、屋外で自然の大気を満喫することだったのです。
森を歩く習慣は、日本では後に森林浴としても注目されることになります。しかし、そこでは樹木が発するフィトンチッドなる物質の効果ばかりが語題になりました。森の空気を意識し、程よい運動をしながら呼吸を整えリフレッシュをするという、本来の意図はあまり普及しませんでした。そのために、森を歩くという習慣を持たない日本人にとって、森を利用した避暑のあり方も、十分には定着してこなかったといえます。
ところで、大気を利用した休暇は、病気の治療と関連しています。ドイツでは、豊かな森や海岸に療養所が設けられ、長期滞在による治療が施されました。日本でも明治期には都市郊外や農村に療養所が作られ、大気を利用した治療が行われました。しかし、細菌学の発展とともに大気療法は影を潜め、治療の舞台は都会の病院に移っていきました。以後、身体にとっての大気の意味は、軽視されてしまうことになります。
避暑を、大気や植生などの身体に影響を与える環境を積極的に利用して、健康増進をはかるものと考えることによって、とかくイメージでとらえられやすい避暑を、改めて見直すことができるのではないでしょうか。

No.5

2003.8 Categories健康コラム・夏

熱中症~最高気温にご注意~

気温がある閾値(いきち)を超えると、熱中症が多発します

これから日中の気温が急激に上昇する時期に入ります。気温がある閾値(いきち)を超えると、例年熱中症が多発します。人は地球の至る所に住んでおり、気候に対しては広い適応能を示しています。気温についても行動的・文化的適応に加え、適切な生理的体温調節機能を示します。36℃の体温を維持する上でこの機能は非常に重要ですが、性・年齢・個人や人種により大きな差があります。このため気温と熱中症の関係にも大きな差が出てきます。
労作性熱中症は、労働中やスポーツ中に体内の熱産生が大きくなりすぎ、体温上昇と脱水症状が原因で発生するため、発生時の気温に比較的幅があります。これに対し、暑熱による受動性熱中症(古典的熱中症)は、アメリカ合衆国、中国、インド等大陸性気候下の地域において観測される熱波の際に多発しています。
1995年7月12~16日の間に起こったアメリカ合衆国シカゴにおける猛暑の事例では、この期間の最高気温は33.9~40.0℃という高温でした。このため多数の熱中症患者が発生し、うち465名がこの期間に熱中症で亡くなっています。
海洋性気候の日本においては、これまで熱波に相当する気象現象は起こらないと考えられてきましたが、ヒートアイランド現象の著しい大都市を中心に、夏季における猛暑が著しくなりつつあります。ヒートアイランド現象は、大都市におけるエネルギー消費の増大と人工建築物の熱放散が原因で、郊外に比べて数度の気温上昇が観測される現象を指します。
図1は東京の事例ですが、熱中症発生は日最高気温との間に密接な関係がありますので、特に都市に居住する人の場合、熱中症発生のリスクに注意する必要があります。

一般的には気温が上昇し熱ストレスを感じると、人は脳の体温調節中枢で熱産生系、循環系、発汗系の調節を行い、生理的に体温の上昇を抑制します。環境温度の上昇によりこのホメオスタシスの維持ができなくなり、体温が上昇(高体温症)したり、脱水や塩分不足におちいると、熱疲弊(ねつひへい)、熱痙攣(ねつけいれん)、熱射病といった熱中症の症状が現れます。
ヒートアイランド現象の進行や地球温暖化に伴い、夏季の猛暑の頻度が多くなると予測されているため、夏季の暑熱に対する熱中症予防への取り組みが今後一層重要になります。高齢者も若い人も、猛暑の際の日中の外出や活動をひかえ、室温管理に気を配るとともに、水分やミネラル摂取に配慮する必要があるでしょう。

No.4

2003.8 Categories生活コラム・夏

梅干し

知っているようで知らない梅干し。少し詳しくみてみましょう。

今年は例年より梅雨明けが遅いですね。梅雨とは、語源大辞典(柳井令以知)によると、
夏至を中心に前後20日ずつの雨期、梅の実が熟する時期にあたるので梅雨という。物にカビが生えやすい時期なので微雨とも書く。
とあります。梅雨の語源であるウメはバラ科の花も実もある植物で、8世紀半ばに中国から渡ってきたと考えられています。主として鑑賞用の品種と、実を目的として栽培されている品種とがあり、実の大きさにより小粒種、中粒種、大粒種にわけられます。
ウメの実の成分は五訂食品成分表によると、水分90%で糖が少なく、有機酸が多いため酸味が強いとあります。有機酸の大部分はクエン酸で、リンゴ酸も比較的多く含まれています。クエン酸はよく疲労回復効果があるといわれていますね。
青いウメの実には青酸が含まれ有毒であるといわれます。これは、ウメの実の核にアミグダリンという青酸化合物が存在し、酵素によってマンデル酸ニトリルとグルコースになり、さらに別の酵素によってベンズアルデビドと青酸になります。これらは核の部分に多く、多量に食べると中毒(下痢など)を起こします。果肉の剖分にはそれほど多くありません。このベンズアルデヒドは梅干しや梅酒の芳香の元となっています。また、酸化されて安息香酸になると静菌作用があり、弁当の飯に入れるのも保存効果をねらった習慣のようです。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
梅干しづくりにチャレンジ!

1.果肉の多い熟したウメを洗って一夜水に漬け、水気をふきとる。
2.容器に塩をふってウメを入れ、その上に塩を振って再びウメを並べる。これをくり返す。(塩の割合はウメの量に対し20~30%ですが、塩を少なくしたい場合は、消毒効果のある焼酎をかけるとよいでしょう。)
3.重石をして冷暗所に保管する。4~7日後にウメから水が出てくるが、これが梅酢です。
4.赤紫蘇(あかじそ)が市場に出回ってきたら葉をきれいに洗って塩でもみ、あくを除く。
5.水が上がったウメの上に赤紫蘇を広げ、今度は軽く重石をする。
6.土用の晴天の日を選んでウメと赤紫蘇を竹ざるに広げ、途中裏返しながら三日三晩の土用干しをする。

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赤紫蘇の色はアントシアニン色素のシソニンの色です。アントシアニン色素はpHによって色調が変わり、酸性では鮮やかな赤い色となります。シソからとけ出した色素が梅酢のクエン酸による酸性の影響をうけて、シソもウメも赤く染まるのです。
梅干しは干すことで軟らかく仕上げますが、乾燥させることなく漬け込んだものは梅漬けとよばれます。特に小粒の未熟ウメを石灰、乳酸カルシウムなどのカルシウム塩を添加して硬く仕上げることもあり、カリカリ梅として市販されています。この場合、食塩濃度は初めから高濃度にするとシワがよるので、徐々に濃度を上げるという方法をとります。

No.3

2003.7 Categories健康コラム・夏

紫外線対策は大丈夫?

紫外線対策は、上からのカットだけで大丈夫?

「5月は1年中で最も紫外線の強い季節、予防対策をお忘れなく!」。最近聞いた某テレビでの紫外線情報です。最近は、女子学生もこの紫外線情報に注意しているとのことです。つまり朝の紫外線情報によって衣服を選んだり、日焼け止めクリームのつけ方を変えたりするそうです。しかしこの紫外線情報、少し気になるところもありますのでご紹介しましょう。
紫外線は、現在では悪役が定着していますが、ビタミンDの生成作用があり、体の抵抗力や新陳代謝を促進する効果もあるため、以前は日焼けした小麦色の肌は健康のシンボルでしたし、北欧の人は今でも夏の日差しの中で日光浴をする習慣を持っています。また殺菌作用もあります。
しかし近年では、成層圏におけるオゾン層の破壊に伴い地表に到達する紫外線量は増加し、日焼けや皮膚ガン発症などの悪影響が問題視されるようになり、紫外線カット化粧品や衣料、紫外線情報に関心が寄せられています。
紫外線は、波長域によってA紫外線、B紫外線、C紫外線に区分されます。このうちC紫外線とB紫外線の一部はオゾン層に吸収されるので、地表に届くのは全体の約6%、そのほとんどがA紫外線です。B紫外線はわずかですが、その作用力はA紫外線の1000倍以上とのことで要注意です。皮膚への影響としては、即時黒化はA紫外線、赤くなる日焼けはB紫外線、慢性的なシワやシミ、皮膚ガンは紫外線の照射が長期にわたった場合発症することがあります。
「紫外線は5月が最も多い」といわれますが、基本的には太陽からの放射量が最も多い夏至の時期が最大のはずです。しかし6月、7月は梅雨と重なるため、平均日射量と相関するA紫外線は、梅雨のある地方では5月の方が多くなります。「梅雨の晴れ間の紫外線には御用心!」です。一方B紫外線は、オゾンの影響を受けるため、オゾン量が少なくなる秋の方へピークがずれて7~8月に最も多くなります。この時期要注意です。時刻はA、B紫外線ともに太陽の南中時12時を挟む数時間に最も多くなります。
私たちが浴びる紫外線は、太陽から直接届く光(直達光)と、大気中の微粒子によって散乱される光(散乱光)に分けられますが、平均的には約50%が散乱成分です(B紫外線に限ると約80%が散乱成分といわれます)。そのため、太陽の直達光に直交する面ほど紫外線量も多くなりますが、直接光の当たらない陰の面や、建物や木の陰でも散乱光により紫外線を浴びており、木陰では太陽に背を向けるより太陽に向かい合う方が浴びる量が少ないことが報告されています(「私たちが浴びる太陽紫外線-太陽の位置や木陰、帽子などによる、人の紫外線被爆量の変化」(松江浩二,新井清一,皮膚と美容,vol.32,No.1,p2-8,2000))。
紫外線対策としては、日焼け止めクリームのほか、帽子、日傘、衣服が有効です。帽子は、つばが長いほど防止効果が大きいですが、散乱光まで完全に防止することはできません。衣服による紫外線遮断効果は、繊維の種類、布地の組織、厚さなどで異なります。繊維では、羊毛やポリエステルの効果が大きいです。紫外線カット繊維はポリエステルにセラミックスを練りこんだ繊維で、ゴルフ、テニス、サイクリング、セーリングなどの屋外スポーツ用衣服、帽子、手袋などに用いられています。しかし、紫外線カット加工が施してあっても、糸と糸の隙間が多く、密度が低いものでは効果が少ないのです。色は濃色の方が明るい色よりは遮蔽性が高くなっています。
一見涼し気でオシャレな白いレースのパラソルや透けた素材のドレスに、大きな紫外線防止効果は期待できません。いつの世にもお洒落とは耐えることといえるかもしれません。


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