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わたしてんき

Vol.7

2014.12.09

女性のからだと食欲

染矢(阿曽)菜美(そめや(あそ)なみ)

染矢(阿曽)菜美(そめや(あそ)なみ)

千葉県立保健医療大学 健康科学部栄養学科 助教、管理栄養士

県立広島女子大学生活科学部卒業後、九州大学大学院人間環境学府において博士号取得。九州工業大学生命体工学研究科において日本学術振興会特別研究員として研究に従事する傍ら、 九州大学、西日本工業大学において非常勤講師として教鞭をとる。現在は、食欲やストレスに関する研究を進めるとともに、管理栄養士養成のための教育に力を注ぐ。

 年の瀬が迫ってまいりました。寒~い夜はみんなでお鍋、アツアツのおでんもいいですね。忘年会に新年会、クリスマスケーキにおせち料理、たくさんの誘惑に食欲もアップ。体重も気になるけど食べたい!今回は、そんな「食欲」について焦点を当ててみたいと思います。

 私は現在、女子大学生を対象として食欲の研究を行っています。女子大学生34名に「生理周期に伴う食欲の変化」についてアンケートを実施したところ、約3分の2の学生が「月経前に食欲が増す・食べる量が増える」と回答し、さらにその半数が「特に甘い物が食べたくなる」と回答しました。このような食欲や嗜好の変化には、女性の生理周期に伴うホルモンバランスの変化が影響しているようです。

 女性ホルモンの1つであるエストロゲンには、食欲を抑え体重の増加を防ぐ働きがあります。一方、同じく女性ホルモンであるプロゲステロンは、エストロゲンとともに存在することで、食欲を増進させ体重を増加させる作用を発揮すると言われています。排卵後から月経 前の「黄体期」と呼ばれる時期には、エストロゲンとプロゲステロンの両者が高い状態にあるため、食欲が増進すると考えられます。プロゲステロンは、受精卵の着床や妊娠の維持に働くほか、エネルギー代謝を高め、基礎体温を上昇させます。したがって、この時期に十分  な栄養を摂れるように食欲が増進することは、女性の体にとって合理的な生理現象であると考えることもできます。

 また、季節の変化も食欲に影響を与える要因の一つです。冬場、日照時間が減少することにより、気分がひどく沈んだ状態が続くことがあります。これは「季節性感情障害」や「冬季うつ」と呼ばれるのですが、この典型的な症状として過食が知られています。さらに、寒さから身を守るために熱産生が高まり、多くのエネルギーが必要になることから、秋から冬にかけての食欲増進も、体を守るための防御反応ととらえることができるでしょう。

 そう言われても体重が増えるのは嫌!もっとやせたい!という方もたくさんいると思います。が、その前に。本当にやせる必要があるのでしょうか?身長と体重のバランスが適切かどうかの判断基準として、「ボディ・マス・インデックス(BMI)」という指標があります。BMIは次の式で計算され、表のように判定されます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
18.5未満18.5以上25未満25以上
やせ普通肥満

 前述した研究に参加した女子大学生の平均身長は158cm、平均体重は50.4kgで、BMIの平均 は20.1でした。ちょうどいいバランスです。しかし、彼女たちに「理想の体重」を聞いたと ころ、その平均は47.9kg、その体重から計算したBMIは19.1となり、やせ志向が広まっている ことが伺えます。極端なやせは、月経不順や不妊、骨粗鬆症などの原因にもなります。むや みにやせたい!と思うその前に、まずはご自分のBMIを計算してみましょう。もしあなたが 必要以上にやせようとして、食欲との攻防戦を繰り広げているとしたら、それはあなたの体 を守るために、食欲が必死で抵抗している証拠なのかもしれません。

 食欲の変化には、それなりの理由があり、目的があります。生理的な食欲の増進に逆らってばかりいるとストレスが溜まりますし、そのストレスがさらなる過食を引き起こすこともあります。自分の食欲が変化したときは、まず自分の体の声に耳を傾け、その理由や目的を 理解することが大切なのではないでしょうか?

 もちろん、行き過ぎた食欲をコントロールし、減量を必要とする人もいるでしょう。そのお話しは、また次の機会とさせていただきます。


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