お天気豆知識
No.4
2002.9 Categories台風とは
台風の名前

(図1)2002年7月9日18時
今年は7月上旬の台風6号による大雨や、それによる洪水により各地で被害が出ました。(図1)は台風6号が日本に接近したときのひまわり雲画像です。
気象庁は北西太平洋域の台風については「熱帯低気圧に関する地域特別センター(RSMC Tokyo-Typhoon Center)」として、その予報・解析などの国際的な情報の作成・発信を行っています。毎年発生した台風の順番に西暦年号の下2桁を合わせて、台風番号としています。台風0206号は、2002年に発生した6番目の台風のことで、我々が目にするのは下2桁の部分で台風6号と呼んでいます。
戦後、日本では1953年(昭和28年)までは台風には女性名が使われており、台風番号は使われていませんでした。カスリン台風とかジェーン台風など、当時を知る人はいろいろな思いがあることでしょう。カスリン台風は1947年(昭和22年)に利根川流域に大洪水を引き起こしましたし、ジェーン台風は1950年(昭和25年)に大阪湾周辺に高潮被害をもたらしています。
なぜ台風に女性名を使ったかというと、当時台風の観測では海軍や空軍が飛行機で台風の中に入り、台風の中心から観測機器を投下して台風の観測をするという荒っぽい仕事をしていました。遊び心から奥さんや恋人の名前を台風に付けて、親しみを込めて呼んだことが始まりといわれています。女性名で熱帯低気圧を呼ぶ方式は、アメリカでも1950年から正式に採用されました。
気象庁は北西太平洋域に対する予報センターですから、気象庁がつけた台風番号が世界で通用していましたが、グアム島にあるアメリカの海軍と空軍の「合同台風警報センター(JTWC)」でつけられた名前も使っていました。名前には女性名と男性名の一覧表があり、順番に女性名と男性名が交互に使われています。男性名と女性名を使いだしたのは1979年(昭和54年)からで、それまでは女性名だけでした。それは、女性名だけをつけるのは男女平等に反するとの指摘が当時あったからです。
今年の台風6号は台風番号の他に「Chataan」と書いてあります。アルファベットの名前はアジアになじみのある呼び名を台風の呼び名にということで、アジア地域の国々が候補に出した名前から「ESCP/WMO台風委員会」で決めたリストに従って付けられたものです。ちなみに、「Chataan(ツァターン)」とはアメリカが選出した名前で、「雨」という意味です。台風の名前の一覧は別表に示します。
2000年からは新しい台風名のリストに従って名前がつけられていますが、過去の台風では、「洞爺丸台風」、「狩野川台風」、「伊勢湾台風」、「第2室戸台風」など特別な名前をつけられた台風があります。これは、日本に顕著な災害をもたらした台風や地震などの「顕著異常現象」に対して、気象庁長官が命名を行う制度によるものです。
1997年(昭和52年)9月の「沖永良部台風」以降、このような特別な名前を付けられた台風はありません。しかし、今でも台風が来るたびに様々な被害は出ています。(表1)に過去の主な台風による被害を示しました。災害規模や人的被害が昭和のころに比べはるかに少なくなっています。
台風名 または 台風番号 | 死者・ 行方 不明者 (人) | 負傷 (人) | 住家 半壊 など (棟) | 建物 浸水 (棟) | 耕地 流失 など (ha) | 船舶 (隻) | 上陸・ 最接近 年月日 |
室戸台風 | 3036 | 14994 | 92740 | 401157 | 不詳 | 27594 | 1934年(昭和9年) 9月21日 |
枕崎台風 | 3756 | 2452 | 89839 | 273888 | 128403 | 不詳 | 1945年(昭和20年) 9月17日 |
伊勢湾台風 | 5098 | 38921 | 833965 | 363611 | 210859 | 7576 | 1959年(昭和34年) 9月26日 |
平成2年 第19号 | 40 | 131 | 16541 | 18183 | 41954 | 413 | 1990年(平成2年) 9月27日 |
平成3年 第19号 | 62 | 1499 | 170447 | 22965 | 362 | 930 | 1991年(平成3年) 9月27日 |
平成5年 第13号 | 48 | 266 | 1892 | 10447 | 7905 | 66 | 1993年(平成5年) 9月3日 |
気象庁編「気象ガイドブック」(2002)より
これは予報技術の進歩、堤防やダムなどの災害防止施設の充実、レーダー、アメダス、ひまわり画像のようなリアルタイムに得られる気象情報などが、災害防止のために有効に利用されるようになったからです。これらの技術は「災害を未然に防ぎたい」という思いから、多くの人々による努力の積み重ねで作られたもので、現在もさらなる技術向上のための研究開発が行われています。