スマートフォンサイトを見る

お天気豆知識

No.114

2012.4 Categories臨時掲載

低気圧(温帯低気圧)と台風

 今年(2012年)は4月に入ったとたん、嵐が来ました。3日は日本列島各地で20m/sを越すとても強い風が吹き、各地で交通混乱が起きて死傷者も出 てしまいました。特に首都圏では強い風のピークが退社時間と重なる予報のため、社員に早めの退社を促した企業もありました。翌日4日も北日本では暴風雪に なっている地域があります。3日から4日の天気予報解説では、「台風並みに発達した低気圧」という言葉が何回も使われていました。また、気象庁は低気圧が 通過する前日に暴風や高波に対する注意喚起を促す会見を行っています。台風ではよくあることですが、低気圧の嵐では異例のことです。
 今回の嵐をもたらした低気圧は専門的に言うと、“温帯低気圧”です。“温帯低気圧”も“台風”も広い意味で、低気圧の仲間です。温帯低気圧と台風の違いはどうなっているのでしょう。
 (図1)(左)は4月3日、(右)は4月4日の地上天気図です。3日は日本海西部に中心気圧が986hPaの低気圧があり、4日はオホーツク海に中心気 圧952hPaの低気圧があります。どちらも中心気圧が低く、「台風並みに発達した」と言われる所以です。低気圧を取り巻く等圧線の形は歪んでいて、中心 を通る前線があります。等圧線の間隔の狭い地域が広範囲に渡っています。地図の等圧線を地図の等高線のように見ると、間隔が狭く、急斜面に対応しているこ とが分かります。つまり、強い風が吹きその範囲が広範囲に渡ることが分かります。


(図1)低気圧(温帯低気圧)の天気図

 (図2)は台風の天気図です。昨年(2011年)9月21日に東海地方に上陸した台風15号です。夕方、台風が関東地方に最も接近したため、強風で電車が止まり帰宅の足が乱れたので、覚えていると思います。天気図を見ると、台風中心付近の等圧線は同心円で、その間隔はとても狭くなっています。ただし、等圧線間隔の狭い地域は(図1)の温帯低気圧に比べて広範囲に渡っていません。強い風の吹く範囲は、温帯低気圧よりも狭いことを意味しています。日本列島に前線がありますが、台風の中心を通っていません。ここでは天気図を示していませんが、台風がもっと南にあるときは前線を伴っていません。


(図2)台風の天気図

 ひまわり画像で温帯低気圧と台風の違いを見てみましょう。(図3)左が今回の低気圧のひまわり画像で、低気圧の中心は日本海西部にあります。右が台風15号の画像で、台風の中心は九州の南にあります。温帯低気圧の雲域は広い範囲に渡っていますが、その形を言葉で表すことはできません。強いて言うならば、雲域の北の縁が丸くなっていて、薄い雲域になっています。一方、台風は中心を取り巻くほぼ円形状の白く輝く雲域があり、その回りに螺旋状の白く輝く雲域があります。これらは背の高い積乱雲で、その下では非常に激しい雨が降っています。大きな特徴は、台風の雲域には中心に雲のない「眼」があることです。温帯低気圧の雲域には、一般的に眼がありません。


(図3)温帯低気圧(左)と台風(右)のひまわり画像

 温帯低気圧と台風の故郷はどこでしょう。台風は熱帯の海上です。温帯低気圧は、その名が示すとおり、中緯度帯、つまり温帯です。
 故郷の違いは、温帯低気圧と台風の発達する原因の違いにも現れています。“温帯”では季節によって、暖かい空気と冷たい空気が交互に訪れます。温帯低気圧は温度が違う空気がぶつかりあるところに発生し、その温度差が大きければ大きいほど急激に発達(中心気圧が低くなる)します。温度差が違う空気の境界に前線があります。今回も3日は北海道で雨が降り4日は吹雪になっていることから、このことが実感できると思います。台風は、暖かい海上から水蒸気が蒸発し、上昇して再び水蒸気に戻る(凝結)するときに発生する熱(潜熱)がエネルギー源です。(図2)をもう一度見てください。20日(図2左)の台風15号の中心気圧は960hPaですが、21日には950hPaに発達しています。普通、陸地に近づくと台風は衰えますが、台風15号は逆でした。本州沿岸には黒潮が流れていて、そこから水蒸気の補給を受けて発達しました。このことからも、台風発達のエネルギー源は“海上からの水蒸気”であることが分かります。
 いずれにせよ、発達した温帯低気圧や台風が接近通過するときは陸上では強い風が吹き、強い雨が降ります。海上でも強い風が吹き、高波、高潮が起きます。このような時は地元気象台から発表される気象情報に充分ご注意ください。
 低気圧と台風の違いの表が、お天気豆知識の“台風”に掲載していますので、併せてご覧ください。


PC用サイトを見る

Contactお問合せ

PC用サイトを見る

気象情報Weather Information
健康予報BioWeather
生気象学についてAbout BioWeather
コラムColumn

スマートフォンサイトを見る

ページ上部へ
Page
Top

Menu