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お天気豆知識

気象の観測の記事一覧

No.22

2003.3 Categories気象の観測

気象衛星ひまわりの「可視画像」と「赤外画像」

 静止気象衛星「ひまわり」は、赤道上空で地球の自転と同じように、24時間かけて地球を一周しています。地球上から見ると止まっているように見えるため、静止気象衛星と呼ばれています。日本で初めて静止気象衛星「ひまわり」が打ち上げられたのは1977年7月です。現在(2003.3)運用されているのは「ひまわり5号」(1995年 6月14日運用開始)で、東経 140度の赤道上空約35,800kmから、直下点を中心として半径 6,000km、地球の約 1/4の広い範囲を絶えず観測しています。
世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)では、地球上をくまなく観測しようという世界気象監視計画(WWW:World Weather Watch)を推進しています。世界気象監視計画では、(図1) に示すように、赤道上の5個の静止気象衛星と、静止気象衛星の盲点となる南北両極地方をカバーするため、地球縦方向に回る極軌道衛星とで、世界気象衛星ネットワークを構成しています。「ひまわり」もその一翼を担っています。「ひまわり5号」から水蒸気の様子もわかるようになりました。


(図1)世界の気象衛星  参考:「気象ガイドブック(気象庁)」

「ひまわり」は可視光と赤外線により、雲や地表などの観測を行っています。
1.可視画像  ◇ひまわり雲画像 可視画像を見る
可視画像では雲や地表などからの太陽光の反射を捉えているので、太陽に照らされている部分しか写りません。反射光が強いものほど白く写るので、厚い雲ほど白く写ります。
2.赤外画像  ◇ひまわり雲画像 赤外画像を見る
地球上のあらゆる物質はその温度に応じて赤外線を放射しています。陸地からも、海からも、雲からも赤外線がでています。もちろん、これを読んでいるあなたからも赤外線が出ています。赤外画像は地表面や大気、雲から宇宙空間に向かって放射される特定の波長帯の赤外線を画像化しており、温度が低いところほど輝度が強く、温度が高いところほど輝度が弱くなるように処理されているものがほとんどです。そのため高いところにある雲ほど温度が低くなるので、赤外画像では明るく輝くように(白黒画像なら白く写る)なります。
可視画像は太陽に照らされている部分の画像のため、夜は見ることができません。しかし、赤外線は夜でも観測できます。新聞やテレビの天気予報で使われている気象衛星の雲画像は赤外画像です。
雲の種類による可視画像と赤外画像の違いは次のようになります。
(イ) 上層雲(高いところにある雲)
雲の大きさはさまざまですが、対流圏上部にあるため非常に冷たく、赤外画像では白く写ります。しかし、薄い上層雲では下層の温度も合わせて観測するため明るさが落ちます。可視画像では、低気圧に伴う厚い雲域は白く見えますが、それ以外のところでは薄い上層雲の隙間を通して下の雲や陸地が見えることもあります。
(ロ) 中層雲
低気圧といっしょに現れることが多いので厚い雲域となる場合が多く、可視画像では真白に写ります。中層雲は上層雲に比べてやや低い高さに存在するため、温度は上層雲よりも高くなり、赤外画像では淡白色や薄白色に写ります。
(ハ) 下層雲(低いところにある雲)
可視画像では不規則ですが一様で滑らかに見えることが多くなります。雲頂温度は地上の気温とあまり変わらないので、赤外画像では濃灰色に写ります。特に霧などは、地上気温あるいは海面水温とほとんど差がないので識別できない場合が多くなります。
(ニ) 積乱雲
大きさは様々で、発達した積乱雲では可視・赤外画像とも非常に白く写ります。あまり発達していない積雲の場合、赤外画像では薄灰色に写り、可視画像では灰色または白色に写ります。晴天積雲(綿雲)のようにひまわりの放射計の分解能よりも小さい雲の場合は、可視・赤外画像ともに写らないこともあります。

No.9

2002.10 Categories気象の観測

メリーポピンズ

 ウォルト・ディズニーのミュージカル映画「メリーポピンズ」は、バンクス家の家庭教師になるため、ポピンズが傘を広げて空からやってきて繰り広げられる 様々な楽しいお話です。お話の最初の方は、バンクス家を紹介しながらのジョークの連発でした。その中で、グリニジ天文台のことを言っていたのに気が付いた でしょうか。

彼女が行ったバンクス家の隣には海軍を退役した人が住んでいて、「お昼のドン」のよう に毎日決まった時間に大砲を撃ち時間を知らせていました。その時刻があまりに正確なので、グリニジ天文台が時間を聞きに来るというのです。その字幕を読ん だときは、吹き出しそうになりました。映画では、その大砲の音による振動が大変なので、それに備える準備やその後動いた家具を直す仕草がおかしくて笑って いる人が多かったのですが、このジョークに気が付く人は少なかったようです。

世界地図を見ると、緯度のゼロ度は赤道ですが、経度のゼロ度はイギリスを通っていま す。イギリスにある、グリニジ天文台が経度ゼロ度の子午線上にあります。ここでの時刻をグリニジ標準時といい、世界標準時になっています。日本では、東経 135度の子午線が通っている明石天文台の時刻が日本標準時になっています。つまり、その大砲は、グリニジ標準時、世界標準時よりも正確だというジョーク です。

大気に国境はありません。天気予報を行うには世界中の気象データが必要です。このた め、各国の気象機関には気象観測データや解析・予報資料などを国際交換するネットワークがあり、気象庁はアジア諸国や環太平洋地域に対して重要な役割をし ています。その情報の中には予想図を含む天気図もあります。このため、専門向けの天気図や予想図は世界標準時が使われています。


(図1)国際式記号を使って描かれた地上天気図
(2002年10月1日午後9時:日本時間)

天気記号はすべて全世界共通の記号が使われており、新聞などで目にする天気図の記号とは違っています。様々な説明も英語で書かれています。天気図の左上と右下に四角で囲まれた部分があり、その中段には「011200UTC OCT.2002」と書かれている部分があるのがわかるでしょうか。これは、世界標準時で2002年10月1日12時という意味です。日本とイギリスの時差は9時間ですから、日本時間に直すと2002年10月1日午後9時となります。

ところで、この天気図を見ると台風21号が関東地方にあり、この時間に茨城県南部の潮来では強い風で、高圧線鉄塔が倒れました。台風21号の国際名はHigos(ヒーゴス)で、「イチジク」という意味です。大変なイチジクでした。

気象観測も世界標準時によって、全世界同時に行われています。天気予報では立体的な空気の流れを考える必要があるので、地上の気象データだけでなく上空の気象データも必要です。高層気象観測所は地上観測所ほど数が多くありませんが、そこではヘリュームを入れた気球に観測機器をつけて上空に揚げ、気温・湿度・気圧・風を観測しています。(図2)は世界の高層気象観測網、(図3)は日本の高層気象観測所がある場所です。


(図2)世界の高層気象観測網(1995年現在)

(図3)日本の高層気象観測所

この観測は1日2回行われており、日本時間では午前9時と午後9時です。観測は観測時刻の少し前に終わります。例えば、午前9時の観測ならば、午前8時50分から午前9時の間です。その後、観測結果を整理して送るのには1時間近くかかります。しかし、9時間の時差があるイギリスでは、観測時間が午前0時と正午になります。真夜中と、昼ご飯のときです。でも、観測されたデータは世界中で使われますからすぐ送らなければなりません。イギリスでは眠い目をこすりながらデータを整理し、空腹を我慢しながらデータを整理して送っていることになるのでしょうか。本当にご苦労様です。

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