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お天気豆知識

高気圧、低気圧、前線の記事一覧

No.65

2006.6 Categories低気圧

温帯低気圧とその一生


(図1)地上天気図(気象庁提供)

 毎日の天気予報で、「今日は低気圧の通過により天気は・・・」というのを耳にしますが、「低気圧」とはどんなものなのでしょう。天気図には地図の等高度線のように、地上の気圧(海面上)が等しいところを結んだ等圧線が描かれています。低気圧は周囲よりも気圧が低く、等圧線が丸く閉じたところで、地図で言うならば窪地みたいなところです。(図1)は昨年(2005年)12月12日9時の地上天気図です。中国大陸に「L」という記号がありますが、これが低気圧です。たしかに窪地みたいになっているのが分かります。
 「低気圧は周囲よりも気圧が低く・・・」と書きましたが、気圧が周囲より低くなるためには上昇気流が必要です。上昇気流は、日射の影響、上空に寒気が入った場合や地形によっても発生します。日本全国に「アメダス」という気象観測網があります。アメダスで気圧は観測していません。もしアメダスで気圧を観測して天気図を作ると、あるいはアメダスよりも細かい地点間隔で観測したデータで天気図を作ると、地形や日射による上昇気流でできた低気圧が見えてくる場合があります。このような低気圧は規模が小さくてほとんど動かず、広い範囲の天気に影響を与えませんし、寿命も半日あるいはそれ以下です。
 「今日は低気圧の通過により天気は・・・」の低気圧は、地球規模で吹いている偏西風と関係して発生して何日かけて東に移動するため、広い範囲の天気に影響します。このような低気圧を温帯低気圧と言い、一般に低気圧と言います。(図1)の天気図には日本の南に台風や熱帯低気圧があります。これらも低気圧の仲間ですが、発生の原因や性質が温帯低気圧と違っています。


(図2)温帯低気圧の一生

 低気圧の一生はどのようなものでしょう。(図2)を見てください。寒気と暖気が接していてその境には前線が発生しました(図2-a)。前線の北側には寒気があり、南側には暖気があります。寒気と暖気が流れている方向は逆向きで、勢力がほとんど同じなため、前線は停滞前線です。
 寒気と暖気の勢力に何らかの原因で差ができると、前線は南北方向に波打ってきます(図2-b)。これを前線上の波動といい、波動の中心に気圧の低いところができて、円形の等圧線が描けるようになると低気圧の発生です。前線の南側の暖気は北方向に向かい、寒気は南方向に向かう流れとなります。前線の波動の東側(右側)は温暖前線となり、西側(左側)は寒冷前線になります。
 低気圧は発達(中心気圧が低くなる)して、寒冷前線は南の方に動き出し、温暖前線は北の方に動きだしました(図2-c)。寒冷前線のところでは、寒気が暖気を押し上げています。このため、寒冷前線付近では雲が垂直に発達し、短時間で強い雨が降っています。しかし、雨域(降水域)は狭いです。温暖前線のところでは、暖気が寒気の上を這い上がっています。雨域は広く、シトシトとした降り方です。寒冷前線と温暖前線にはさまれた暖気の部分を暖域と言います。
 寒冷前線の動きは温暖前線よりも早く、暖域はどんどん狭くなり、やがて寒冷前線が温暖前線に追いついてきました(図2-d)。低気圧はますます発達します。
 寒冷前線は完全に温暖前線に追いつき、閉塞前線ができました(図2-e)。この状態は低気圧が最も発達したときです。低気圧の周辺では広い範囲で強い風が吹いています。このあと、低気圧は衰弱に向かいます。
 低気圧を残したまま、閉塞前線は低気圧の中心から離れていきます。さらに閉塞前線はなくなって、温暖前線と寒冷前線だけが東に進んだり、停滞前線になったりします。低気圧の中心気圧も高くなり、等圧線の間隔も広くなって渦巻きは消え、低気圧は消滅します(図2-f)。

No.45

2004.10 Categories前線

前線とは

今年(2004年10月19日現在)は台風22号で上陸台風が9個となり、昭和26年から気象庁が台風の統計を取り始めてから、台風の上陸数が最大となりました。しかし、これから来年の春までは、前線を伴った低気圧が天気図の上で活躍する季節になります。天気図を見ると低気圧の中心から両側に(東や西に)、三角や半分の円が付いた線が引かれています。これが前線です。前線は、温度や湿度など性質の違う空気集団が「おしくらまんじゅう」をしているところで、前線を境にして温度や湿度、風向きなどが違っていて、前線が通過するときには天気が悪くなりがちです。


(図1)前線の概念図

北半球では一般的に前線の北側には冷たい空気の集団があり、南側には暖かい空気の集団があります。テレビや新聞で眼にする天気図では地上の様子を表しており、前線はその名の通り線で表されています。でも立体的に見ると性質の違う空気が接している面(前線面)は、(図1)のように上空に行くほど冷たい空気の方に、あるいは北側に傾いています。

前線の種類は、温暖前線、寒冷前線、停滞前線、閉塞前線の4種類で、表現する記号が違っており、構造も違っています。梅雨前線とか秋雨前線はその季節に現れる前線の総称で、特別な記号を持っているわけではありません。中学校の頃だったと思いますが、これら4種類の前線について習いました。しかし、テレビやラジオで良く耳にする梅雨前線や秋雨前線に対する記号がなかったので、参考書を一生懸命読んで納得したことがありました。

(図2)は温暖前線と寒冷前線の立体的なモデル図です。右側が温暖前線で、左側が寒冷前線です。


(図2)温暖前線と寒冷前線の構造

温暖前線では、暖かい空気の集団が冷たい空気の集団の上を這い上がっています。温暖前線の近くは厚い雲があり、そこではシトシトと降る、あまり強弱の変化がない雨が降ります。前線から冷たい空気がある方向に離れるにつれて雲の厚さは薄くなり、雲の現れる高さが高くなり、一番遠いところには刷毛で掃いたような巻雲があります。
寒冷前線では、暖かい空気集団の下に冷たい空気の集団が潜り込んでいます。このため、寒冷前線沿にはほぼまっすぐ上に発達した積乱雲が並んでいます。積乱雲があるので、寒冷前線が通過するときの雨は短時間で集中的に降る雨となり、強い風を伴うこともあります。暖かい空気の集団と冷たい空気の集団の温度差が大きいと、風や雨の強さが強くなります。

写真は伯耆大山に登っている途中で、北の方向を写したものです。

左側が日本海で、頭の上は巻雲が広がっています。また、南の方は厚い雲に覆われていました。この日の天気は、太平洋側の各地では雨でしたけれど、北に行くほど天気は良くなっていました。


(図3)1995年10月8日9時の地上天気図

(図3)の天気図は写真を撮影した日のもので、日本の南海上に前線があります。半円と三角が互い違いになっており、このマークで表される前線は停滞前線です。 前線の南側には暖かい空気があり、北側には冷たい空気があります。暖かい空気と冷たいの空気の集団が接する面(前線面)は冷たい空気の側に傾いていて、言い換えると前線の北側ほど前線面の高さは高くなっています。巻雲が頭の上にあるので、山陰あたりが前線から最も遠いところと言えるでしょう。

No.43

2004.8 Categories等圧線と風

水の流れと空気の流れ

 砂場で砂山を作りその頂上に水を溜め、そこから水を流すとその水は斜面を真っ直ぐに流れていき、斜面を斜めに流れることはありません。川の流れもそのようになっており、地図を見ると等高線と川の流れは等高線にほぼ直角になっています。(図1)にはその様子をモデル的に示しました。


(図1)水の流れ

 空気の場合はどうなっているのでしょう。テレビや新聞で見る天気図には等圧線が描かれており、気圧の低い地域、高い地域がわかるようになっています。空気は、気圧の高い地域から低い地域に向かって流れます。しかし、その流れ方は等高線に対する水の流れとは違います。それは、地球の自転が関係しており、地表面付近では空気と地表面との摩擦も影響しているからです。


(図2)空気の流れ

 地上天気図の場合、空気は等圧線とある角度を持って気圧の高い方から低い方へと流れます。(図2)のように等圧線をまたいで、右手が気圧の高い方、左手が気圧の低い方になるように立って下さい。北半球の地上では、風は気圧の高い方から低い方に向かって左手前方に向かって吹きます。つまり、気圧の低い方を左側に見るようにして、等圧線に対してある角度を持って風が吹きます。その角度は、25°~35°の範囲で、風が強いほどその角度は小さくなります。風の強さは、等圧線の間隔が狭いほど強い風となります。地図の場合等高線の間隔が狭いところ、つまり斜面の急な所では水が勢いよく流れるのと同じです。
 上空では、地表面と空気の摩擦の影響がなくなるため、ある高さで上空の天気図を作ると、その面で風は等圧線と平行に吹きます。地上天気図のときと同じように等圧線をまたいで気圧の高い方を右、気圧の低い方が左になるように立つと、風はそのように立った人の背中側から正面に向かって吹きます。強さは、やはり等圧線の間隔が狭いほど強くなります。なお、実際の高層天気図はある気圧面の天気図で、その気圧になる高さを表した、等高線が描かれています。

 話を地上天気図に戻します。テストのために、「北半球では低気圧に向かって左巻きの渦巻きのように風が吹き込み、高気圧からは右巻きの渦のように空気が流れ出す。」と覚えたと思います。例えば、低気圧の近くで、低気圧の中心(気圧の低い側)が左手の方向になるように立って考えると、(図3右)に示したような風となることがわかります。高気圧の場合は右手が高気圧の中心(気圧の高い方)に立つと、(図3左)のような風になることがわかります。


(図3)高気圧・低気圧と空気の流れ

ですから、「北半球では低気圧に向かって左巻きの渦巻きのように風が吹き込み、高気圧からは右巻きの渦のように空気が流れ出す。」となるわけです。


(図4)東海豪雨の時の天気図

 風が吹いているということは、空気が流れることを意味しています。例えば、等圧線がほぼ並行に並んでいるときは、その範囲で一定な方向の空気の流れがあることを意味します。(図4)は平成11年9月の東海豪雨の天気図です。東海地方の南の方で、気圧の高い方を右手になるように等圧線をまたいで立つと、東海方面に南から空気が流れ込んでいることがわかります。日本の南は太平洋で水蒸気の元は十分にありますし、南ほど気温が高いことから、暖かく湿った空気が東海地方に流れ込んでいることになります。中心は現れていませんが、日本の東にある高圧帯は太平洋高気圧です。この暖かく湿った空気の流れは、太平洋高気圧の西側で吹く南よりの風が沖縄の近くにある台風14号で強化されたことによるものです。前線は日本海側にあるから、普通に考えれば前線付近で大雨となりそうですが、大雨となったのは前線よりも南でした。何故前線よりも南の東海地方で豪雨になったかという詳しい原因は様々な研究者によって研究中ですが、地形の影響で一部の地域に暖かく湿った空気が集中し、前線よりも南の東海地方を中心に大雨となったようです。前線や低気圧、台風もないのに大雨という現象は、毎年のようにどこかで発生して、その多くは太平洋高気圧の西側で吹く「暖かく湿った空気」が原因です。

No.27

2003.6 Categories高気圧

高気圧でも曇り空

 ある理科の教科書によると、「高気圧の中心部では下降気流となって雲ができにくく…」と書かれています。「雲ができにくく」といっても、天気予報では「明日は高気圧に覆われて晴天に…」といっており、「高気圧=晴天」と思いがちですね。しかし、高気圧に覆われても曇ったり、雲域に覆われたりすることがあります。高気圧とはどのようなことなのでしょうか。
1気圧は1013hPa(ヘクトパスカル)ですが、この気圧以上のところを「高気圧」というのではありません。高気圧は、「1枚の天気図の中で、周辺よりも気圧(高度)が高く等圧線(等高度線)が丸く閉じたところ。」となります。ここで、カッコの中に「高度」、「等高度線」と書きましたが、これは上空の天気図のことです。今回は上空の天気図の詳しい説明は省きます。
高気圧には大きく分けて2つの種類があります。まず1つは「背の高い高気圧」です。「背の高い高気圧」があるところには、とても高いところからの下降気流があります。また、この高気圧のなかには地球規模の流れと関係しているものあり、その下降気流は成層圏に近い高さからとなります。とても高い所の空気は温度がとても低いため、空気がもともと含むことができる水蒸気の量はごくわずかです。
一般に空気は下降しながら圧縮されて温度が上がるので、とても高いところにある空気が下降しながら圧縮されると空気はますます乾燥して雲はできにくくなります(図1)。「背の高い高気圧」の代表選手が太平洋高気圧で、気象衛星の雲画像を見ると、太平洋高気圧の中心付近は雲が少ないですね。専門的にいうと、「背の高い高気圧」がある所は、上空の天気図を見ても気圧の峰や高気圧となっています。


(図1)「背が高い高気圧」の空気の流れ

もう1つですが、「背の低い高気圧」です。「気圧が高い」というのは空気の重さによるものです。シベリア高気圧のところで書きましたが、同じ体積の空気の塊を持ってくると、冷たい空気の塊の方が暖かい空気の塊よりも密度が高いので、冷たい空気の塊の方が重くなります。このように冷たい空気に覆われるとその地域は周囲よりも密度が高い空気に覆われることとなり、天気図上では高気圧となり、このような高気圧を「背の低い高気圧」といいます。
「背の低い高気圧」の場合、上下方向の空気の流れを見ると(図2)のようになり、地上へ向かう下降気流がありますが、上昇気流もあります。上下方向に気流が分かれる高さはいつも同じでなく、気象状況により変わります。上空で下降気流と上昇気流に分かれているあたりの空気が湿っていた場合、下降気流域では空気が圧縮されて温度が上がり、相対的に湿度が低くなり雲は発生しません。


(図2)「背が低い高気圧」の空気の流れ

ところが上昇気流があるところでは、上昇することにより空気が膨張して温度が下がり、相対的に湿度が高まり、やがて雲が発生します。上昇気流があるということは低気圧や気圧の谷があることを意味するので、地上では高気圧であっても上空では気圧の谷あるいは低気圧となっている場合があります。
このことから高気圧に覆われていても曇っていたり、高気圧に覆われた地域に雲がある場合は、上空に冷たい空気があることがわかります。上空の冷たい空気というよりも寒気が入った場合は地上は高気圧でも雨が降ったり、雷雨になることもあります。しかし、「背の低い高気圧」に覆われると、必ず天気が悪いとは限らないので、ややっこしいですね。


(図3)見かけ上の高気圧

梅雨期になると梅雨前線が停滞してうっとうしい天気が続きます。天気図には(図3)のような小さな高気圧が現れ、「高気圧が来るから晴れるかな」と思っていると、全然晴れなかったり、逆に雨が降ったりということもあります。
もう一度、(図3)を見て下さい。梅雨前線上には小さな低気圧が並んでいます。低気圧は「天気図の中で周囲よりも気圧が低く、等圧線が丸くなっているところ。」となります。

ところが高気圧は「1枚の天気図の中で、周辺よりも気圧が高く等圧線が丸く閉じたところ。」ですから、低気圧と低気圧の間は相対的に気圧が高くなるので、観測データから等圧線を描くと必然的に高気圧ができてしまいます。このような高気圧は見かけ上の高気圧で、地上に近い上空で気圧の谷になっていて、上昇気流も地上に近い高さからあるため、厚い雲に覆われていたり、雨が降ることさえあります。

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