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お天気豆知識

季節と天気図の記事一覧

No.112

2010.5 Categories

夏の天気図

7月に入ると太平洋高気圧の勢力が強まり、梅雨前線を東北地方の北部まで押し上げて消えてしまうと全国的に梅雨が明けます。(図1)がその例で、2005年8月4日に東北地方南部北部とも梅雨明けになりました。1日には津軽海峡あたりに梅雨前線(停滞前線)があります。本州の南海上に中心を持つ高気圧は太平洋高気圧です。その前線は4日に北海道中部に北上し、5日には消えてしまいました。日本付近は、日本のはるか東海上に中心を持つ高気圧と、日本海に中心を持つ高気圧に覆われています。どちらも太平洋高気圧です。


(図1)典型的な梅雨明け前後の天気図(2005年8月3日~8月5日)

 このように梅雨前線が北海道まで北上して消えるのが一般的な梅雨明けですが、ときには梅雨前線が南下して、太平洋側に抜けて消えてしまうという、梅雨明けもあります。2004年は7月22日に北陸地方、東北地方南部北部とも梅雨明けとなり、日本全国で梅雨に入っている地域はなくなりました。(図2)がそのときの天気図です。7月21日には梅雨前線が東北地方にあります。すでに梅雨明けした北陸地方や関東甲信地方から西は、南西諸島に中心を持つ太平洋高気圧に覆われています。22日になると、梅雨前線は日本の東海上に抜け、日本海に中心を持つ高気圧に覆われました。ところで、前線の南北方向の位置を前日の21日の天気図と比べてください。21日よりも22日の方が前線の位置が南にあることがわかります。23日の日本付近は高圧帯になっています。この高圧帯は上空も高気圧で、太平洋高気圧もその一部の亜熱帯高気圧です。


(図2)梅雨前線が南下して梅雨明け(2004年7月21日~23日)

 夏というと太平洋高気圧に覆われて暑い日々というイメージが強いと思います。そのような天気図をお目にかけましょう。(図3)の2006年8月3日の天気図です。北海道の北に前線がありますが、関東の東に中心を持つ太平洋高気圧が西に張り出して、日本付近を覆っています。皆さんも覚えていると思いますが、2007年8月16日には熊谷の最高気温が40.9℃となりました。今まで山形で観測された最高気温40.8℃を抜いてしまいました。日本付近は西日本と関東の南海上に中心を持つ高気圧に覆われています。どちらも夏をもたらす亜熱帯高気圧です。
 夏も年によっては気温が低い日が現れることもあります。2008年8月9日(図5)がその例で、この日、北海道のオホーツク海側の網走の最高気温は18.0℃と20℃を下回っています。サハリンの中部に中心を持つ高気圧があります。日本付近に前線こそありませんが、まるで梅雨みたいな天気図です。この高気圧から送り込まれた冷たい空気が北海道に送り込まれました。


(図3)夏の天気図
(2006年8月3日)

(図4)猛暑の天気図
(2007年8月16日)

(図5)夏の低温
(2008年8月9日)

 夏の天気のもう一つの主役は夕立です。雷雨は上空に寒気が入ると起こりやすくなります。また、前線の通過のときも雷雨が起こりやすくなります。(図6)がその例です。2002年8月2日は、東北地方から能登半島の北に延びている寒冷前線が南下して、関東地方を通過しました。このため、関東甲信地方では大気の状態が不安定になり、局地的に雷雨となり、南アルプスでは落雷により登山者が亡くなっています。
 夏でも前線が停滞することがあります。前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、前線の活動が活発化して前線付近で大雨になります。2005年8月10日(図7)には東北地方南部に停滞した前線に向かって日本海側から暖かく湿った気流が流れ込み、北陸地方や東北地方南部で大雨になりました。新潟県三条市では竜巻が発生し、飛び散った屋根瓦などにより車のフロントガラスが割れたりし、怪我人も出ています。
 暖湿気流の流入は馬鹿に出来ません。2008年8月29日(図8)には前線に向かって太平洋側から暖湿気流が入り、前線付近より南の地域で大雨になりました。愛知県豊橋市と神奈川県東部から東京都八王子市で激しい雨が降り、大雨になりました。豊橋市では中小河川が溢れて家が流され死者が出ました。八王子では土砂崩れが発生しました。


(図6)前線通過の雷雨
(2002年8月2日)

(図7)前線による大雨
(2005年8月10日)

(図8)暖湿気流の大雨
(2008年8月29日)

 台風の季節は9月ですが、台風の発生数は9月よりも8月の方が多くなっています。もちろん、8月にも台風は日本列島にやってきます。秋はジェット気流が日本付近にあるので、それに台風が乗ると早い速度で通過していきますが、夏はジェット気流が日本列島より北に位置していて、上空の流れが弱くなっています。台風の動きは上空の流れに左右されるので、夏の台風は動きが遅く進路がはっきりしない場合があります。こんな場合、予報円の半径が大きくて24時間先とか48時間先の予報円が重なっています。
 2002年の台風13号は父島の方から北上してきて、8月18日から20日にかけて本州南岸をゆっくりと東に進んでいきました(図9)。18日の天気図からわかるように中心気圧が945hPaですから、かなりの勢力の台風であることがわかります。この台風で、関東各地は大雨になりました。この大雨で山梨県や神奈川県で住宅への浸水被害が発生しています。


(図9)夏の台風(2002年8月18日~20日)

(天気図は気象庁提供)

No.111

2010.4 Categories梅雨

梅雨期の天気図


(図1)梅雨前線(2002年6月12日)

 春も季節が進むと、日本の南海上では夏の主役の太平洋高気圧が勢力を強めながら北上してきます。一方、オホーツク海に高気圧が現れ、この高気圧から吹きだす東寄りの冷たい湿った気流と、太平洋高気圧から吹きだす暖かく湿った気流がぶつかるところに梅雨前線が出来ます。
 (図1)がその例です。サハリン付近にある高気圧がオホーツク海高気圧で、日本の南東海上にある高気圧が太平洋高気圧です。関東の東に低気圧があって、その低気圧の中心から東西に伸びる前線が梅雨前線です。半円と三角の記号が互い違いに並んでいるので、前線の種類は停滞前線です。

 前線には、“温暖前線”、“寒冷前線”、“閉塞前線”、“停滞前線”の4種類ありますが、梅雨前線は梅雨期に現れる前線の総称です。ここで詳しい説明は省略しますが、梅雨前線は秋~春に現れる前線と少し性質が違います。また、梅雨前線上の低気圧も秋~春に現れる低気圧と性質が違います。
 本州は6月に入ってから入梅しますが、沖縄がある南西諸島の入梅の平年は5月8日、奄美諸島は5月14日です。沖縄では連休中に入梅ということもあります。(図2)は2004年に沖縄が入梅した日です。本州でも5月中旬からあとに梅雨みたいな気圧配置になることもあり、“走り梅雨”ということもあります。その例が(図3)です。オホーツク海には高気圧があって、本州の南海上には高気圧があって本州付近に前線が横たわっています。まさに梅雨のような気圧配置です。


(図2)南西諸島の入梅(2004年5月5日)

(図3)走り梅雨(2004年5月16日)

(図4)梅雨の中休み
(2004年6月14日)

 日本全国で入梅後、大陸からやってきた移動性高気圧に覆われ、梅雨前線が天気図上から姿を消すことがあります。高気圧に覆われた地域は爽やかな空気に覆われて青空が広がります。このようなとき、“梅雨の中休み”といっています。(図4)は2004年の例で、全国で入梅の1週間後でした。梅雨前線は見当たらず、日本付近は本州上と黄海に中心を持つ高気圧に覆われています。この高気圧は中国大陸から移動してきた高気圧で、乾燥した空気でできています。13日は全国的に晴天になり、放射冷却の影響も加わって4月中旬並みの気温になったところもありました。北海道の北の低気圧に向かって吹く風でフェーン現象が起こり、札幌では30.6℃と真夏並みの気温になりました。

 6月も中旬を過ぎると、太平洋高気圧が更に勢力を強めてその中心も北に移動し、南西諸島や奄美諸島では梅雨明けが近くなります。その代わり本州上に停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気を送り込んで、各地で大雨が降りやすくなります。残念なことにこの大雨で、毎年どこかで悲惨な災害が発生しています。
 (図5)は2006年に九州北部で大雨が降った例です。九州には6月25日26日とも梅雨前線が西日本にあり、日本の南海上には太平洋高気圧があります。北半球では気圧の高いほうを右手に取ると、風は左斜め前方に吹きます。このように天気図を見ると、25日、26日とも太平洋高気圧の縁を回って東シナ海から九州北部にある梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込みやすくなっていることがわかります。


(図5)九州で大雨 2006年6月25日・26日(東シナ海から暖かく湿った空気が九州に流入)

 (図6)は静岡で大雨が降った例です。梅雨前線が静岡を通過しました。大雨のもとになる暖かく湿った空気の補給源は太平洋側からです。(図7)は新潟や福島で集中豪雨による大雨災害が発生した例です。東北地方南部から日本海を通って西に梅雨前線が伸びています。この場合、暖かく湿った空気は日本海側から流れ込んでいます。(図7)の2004年7月13日には新潟県中部で堤防が決壊し、浸水被害や死者も出て、気象庁ではこの大雨を「平成16年7月新潟・福島豪雨」と呼んでいます。


(図6)静岡で大雨 2003年7月4日
(太平洋側から暖かく湿った空気)

(図7)新潟、福島で豪雨  2004年7月13日
(日本海側から暖かく湿った空気が流入)

 台風シーズンは9月ですが梅雨期に台風が来ることがあります。梅雨期に台風が来ると、台風が梅雨前線を刺激して梅雨前線の活動が活発化して大雨が降ります。2007年は台風4号が7月14日から16日にかけて九州南部を通って本州の太平洋沿岸を通過しました。(図8)の7月13日や14日の天気図を見てください。オホーツク海には梅雨期の主役の一つのオホーツク海高気圧があります。小笠原諸島の東に中心を持つ高気圧は太平洋高気圧です。梅雨前線は本州を東西に横切っています。台風4号と太平洋高気圧の間に南北に伸びた等圧線が何本も並んでいて、この地域では南から暖かく湿った空気が流れ込んでいます。この暖かく湿った空気が梅雨前線に流れ込む地域では、前線活動が活発化して大雨が降りやすくなります。勿論、台風の通過でも大雨が降りますし、前線がなくても、暖かく湿った気流が入る地域でも大雨が降ります。このため、13日から15日にかけて太平洋側の各地では大雨になり、500㎜から600㎜降ったところもありました。これらの地域の3日間の雨量は7月の月平均雨量の1.2倍から1.5倍です。悲しいことに、各地で土砂災害や浸水被害が起こり、死者も出ています。


(図8)梅雨期間中の台風 2007年7月13日・14日・15日

 昔、かなり昔ですが、梅雨期に明治神宮へ花菖蒲を見に行きました。花菖蒲は梅雨期の花ですね。その日は小雨が降っていて、雨に濡れた花菖蒲は綺麗でした。紫陽花も梅雨期の花で、小雨に濡れた紫陽花も美しいものです。梅雨期の大雨災害のことばかり書きましたが、このような楽しみも梅雨期にはあります。

(天気図は気象庁提供)

No.108

2010.1 Categories

春の天気図

 春は、冬を支配していたシベリア気団が弱まり、低気圧と高気圧が交互に日本付近を通過するようになります。高気圧の一つは揚子江気団で、揚子江付近で発生し、日本付近に移動してきます。もう一つは、シベリア気団からちぎれて南下して来る高気圧で、両方とも日本付近に移動して来るので「移動性高気圧」と呼ばれています。
 移動性高気圧に覆われると、日中は気温が上がり暖かくなりますが、夜間は気温が下がり、霜の降りることがあります。また、移動性高気圧の前半は晴れますが、後の3分の1は雲が広がります。  (図1)は移動性高気圧に覆われた例で、2009年3月21日の天気図とひまわり画像(赤外)です。この日は日中の気温が4月上旬から5月中旬並みの暖かさになり、各地で桜が開花しました。ひまわり画像(図1右)を見るとわかるように、高気圧中心の西側に当たる九州の西は雲に覆われています。


(図1)移動性高気圧 2009年3月21日9時の地上天気図(左)と赤外画像(右)

 シベリアから南下してくる高気圧が、日本海付近までしか南下しない時は、本州付近から南に前線が出来たり、その前線上を低気圧が通過したりします。気圧は北が高く南は低いので「北高型気圧配置」と呼ばれています。北高型の気圧配置になると、北日本は晴れますが気温は上がらず、関東から東の太平洋側は曇って弱い雨の降ることがあります。桜の花の時期に重なることが多く、「花冷え」や「花曇り」などの言葉が出来ました。
 (図2)が2008年5月10日に現れた北高型の天気図とひまわり画像(赤外)です。東北地方南部から南の地域は雲に覆われていますね。関東から西は雨で、気温は全国的に低く3月中旬から4月中旬並みの気温になりました。


(図2)北高型の天気図 2008年5月10日9時の地上天気図(左)と赤外画像(右)

 移動性高気圧が日本の南海上で温まり南から日本付近を覆うことがあります。「南高北低型気圧配置」と呼ばれています。この気圧配置になると気温が高くなります。春の終わりには太平洋高気圧と一体になって南から日本付近を覆うことがあります。こうなると晴れて気温が高くなり、「初夏の陽気」と呼ばれる天気となります。


(図3)南高北低型の天気図 2009年5月10日12時の地上天気図(左)と赤外画像(右)

 (図3)は2009年5月10日に現れた南高北低型です。関東地方に気圧の谷がありますが、日本の南海上にある高気圧は夏に現れる太平洋高気圧のようですね。この日は高気圧に覆われた西日本から東日本では晴れて気温が上昇し、最高気温が30℃を超す真夏日となりました。全国45地点で最高気温が5月の観測史上で最高となっています。
 一方、春は低気圧が日本付近で発達することが多く、「春のあらし」や「メイストーム」と呼ばれるように、急激に発達して大荒れの天気となることがあります。
 (図4)は2009年の春のあらしの例です。日本付近を通過した二つ玉低気圧(4月25日)が翌日(4月26日)には三陸沖で発達しました。25日は太平洋沿岸地方では荒れた天気となり、日降水量が100㎜を超える大雨となったところもありました。26日には全国的に強い風が吹き雨量も多くなりました。東北地方では4月の最高値を越す大雨が降ったところもあります。一方、北海道では大雪になった地域もありました。


(図4)春のあらしの天気図 2009年4月25日12時(左)と26日12時(右)

 メイストームの例は(図5)です。2006年ですが、5月19日から20日にかけて日本海を低気圧が通過し、南に延びる寒冷前線が日本列島を通過しました。19日には四国の一部で激しい雨が降らせました。翌20日には関東甲信の各地で雷雨となり、埼玉県中部にある坂戸市では突風が吹き、鉄塔が倒壊しています。


(図5)メイストームの天気図 2006年5月19日9時(左)と20日9時(右)

 春の初めに本州の南岸沿いを発達しながら通る南岸低気圧は、太平洋側に大雪を降らせることがあります。ほとんどは積もっても1~2日で解けてしまうため、「春の淡雪」と言われています。めったにありませんが、花見と雪見が一緒ということもあります。
 私が3月の雪で記憶にあるのは、1969年3月12日(図6)の雪です。低気圧が発達しながら本州南岸を通過して東京ではその日の夕方頃まで雪が降り続き大雪となり、交通が大混乱になりました。この日、私はある大学の受験の日でしたが、試験開始が1時間ほど遅れました。試験会場の最寄り駅は地下鉄丸の内線で、帰りは丸の内線が止まっていて当時走っていた都電で帰ったことがありました。4月の雪として鮮明に記憶に残っているのは1967年4月17日(図7)です。その頃は東京都世田谷区に住んでいて、朝起きると庭のチューリップが雪に埋もれていたのには驚きました。


(図6)3月の大雪
1969年3月12日9時の地上天気図

(図7)4月の雪
1967年4月17日9時の地上天気図

(天気図、気象衛星画像は気象庁提供)

No.107

2009.12 Categories

冬の天気図

 冬はシベリア気団(シベリア高気圧)がユーラシア大陸北東部、つまりシベリア方面で発達します。その一方で北太平洋に大きな低気圧が居座ります。このため西高東低の「冬型気圧配置」となり、日本付近は北よりの季節風が吹きます。この季節風は日本海から水蒸気をもらい、日本海側に雪を降らせ、太平洋側に乾燥した冷たい風を吹かせます。冬型の気圧配置が強いと大陸東岸の沿海州の海岸近くから雲が出来て、日本海が筋状の雲で覆われます(図1右)。このような時は、日本海側では大雪が降ります。季節風が強いと太平洋側にも筋状の雲が現れ、滋賀県や愛知県で大雪となることがあります。そのため、東海道新幹線は京都あるいは米原と名古屋の間で徐行運転をするので遅れることがあります。


(図1)山雪型 2008年2月13日(左:12時の地上天気図、右:12時の赤外画像)

 冬型の気圧配置は大きく分けると、2つのタイプがあります。その一つが日本付近で等圧線が南北に並んだタイプで、山雪型といいます(図1左)。日本海北部に小さな低気圧があったり、気圧の谷が接近するなどして、日本海の等圧線が袋状に湾曲するときがあります(図2左)。このような時は日本海側の平野部で大雪になりやすくなり、里雪型といいます。


(図2)里雪型 2009年2月13日(左:12時の地上天気図、右:12時の可視画像)

 冬型の気圧配置は時々お休みになり、移動性高気圧に覆われます(図3)。このような日は風も弱まり、ホッとしますね。特に日本海側に住んでいる人にとって、太陽の光を充分に浴びることができるのでなおさらではないでしょうか。ただし、このような日は放射冷却が起こるので、朝晩は冷え込みます。


(図3)移動性高気圧(2007年2月13日9時)

 シベリア気団の勢力が弱い年は低気圧の通過が多くなります。また、冬型がお休みになると高気圧だけでなく低気圧も通過します。低気圧が本州の南を通ると太平洋側に冷たい空気が流れ込み、太平洋側でも雪が降ります。(図4)は2004年12月29日の天気図で翌日は冬型になりました。東日本から東北の太平洋側で雪が降り、関東各地では初雪となりました。しかも年末だったので車での帰省客は大変でした。


(図4)太平洋側の雪(2004年12月29日9時)

(図5)南岸低気圧(2006年1月14日21時)

 冬でもときには低気圧の通過で大雨が降ることがあります。2006年1月14日(図5)には本州南岸を通過した低気圧により関東では雷を伴って激しい雨が降りました。日本列島を挟んで日本海と太平洋側を通過する低気圧を「二つ玉低気圧」といいます。(図6)はそのときの天気図で、低気圧の通過により1月6日には岩手県宮古市で冬には珍しく1時間に54㎜の雨が降りました。


(図6)二つ玉低気圧から冬型に(左:2007年1月6日9時 右:2007年1月7日9時)

 2月の終わりから3月のはじめ頃にかけて、日本海に低気圧が入り発達することがあります。日本付近は南よりの強い風が吹き、気温が上昇します。一時的に春のような気温となるので「春一番」と呼ばれます(図7)。しかも、春一番を吹かせた低気圧は日本の東海上で急激に発達するので、(図7)左の天気図からわかるように翌日は冬型の気圧配置になります。日本海側で低気圧が発達すると暖かい空気が流れ込むので山岳地帯では積雪のある雪崩に対する注意が必要です。冬型になると新雪が積もるので、やはり積雪のある山岳地帯では雪崩に対する警戒が必要になります。


(図7)春一番から冬型に(左:2007年2月14日9時 右:2007年2月15日)

 1996年は11月末から12月にかけて冬型の気圧配置になり日本海側で雪が降りました。しかし、12月5日に日本海沿岸を低気圧が発達しながら通過し、暖かい空気が流れ込んだだけでなく、各地で季節はずれの大雨が降りました。このため、翌6日は長野と新潟県の県境にある長野県小谷村の姫川の上流で土石流が発生しました。山間部で作業をしていた人たちがこの土石流に巻き込まれて死傷者が出ています。

(天気図、気象衛星画像は気象庁提供)

No.106

2009.11 Categories

秋の天気図

 夏を支配した太平洋高気圧が弱まり、大陸にある冷たい高気圧の勢力が強まってくると、「秋雨前線」が日本付近に現れ、日本列島の南岸まで南下してきます。年によっては8月下旬に秋雨前線が現れます。秋雨前線は太平洋高気圧の北側にできることでは梅雨前線と似ています。しかし、太平洋高気圧の勢力は梅雨期と比べると衰えていて、南から秋雨前線に流れ込む水蒸気の量が少なくなっています。このため、秋雨前線の雨は全国的にしとしと降ることが多くなります。ときには強い雨を降らせることがあるので、注意が必要です。(図1)がその例で、2006年9月10日と11日には各地で激しい雨が降りました。


(図1)2006年9月10日9時(左)と11日9時(右)の天気図

 秋は、特に9月は大型の台風が日本に来襲することが多く、昔から「二百十日」「二百二十日」などと恐れられてきました。大きな被害がでている洞爺丸台風や伊勢湾台風は9月に来襲しています。(図2)は2006年9月17日9時の天気図で、長崎県に台風13号が上陸しました。


(図2)2006年9月17日9時の天気図

九州は激しい雨と暴風に見舞われ、宮崎県延岡市では竜巻が発生し、特急電車「にちりん9号」が横倒しになりました。台風による激しい雨、大雨は台風周辺だけではありません。台風が秋雨前線を刺激したり、南から暖かく湿った気流が入り込むと、台風から離れたところでも大雨になります。このような大雨で思い出されるのは、昭和49年(1974年)9月1日に多摩川が決壊したことです(図3)。


(図3)1974年9月1日9時の地上天気図

台風16号は四国に上陸して北上しましたが、奥多摩や奥秩父で豪雨が降り、東京都狛江市で多摩川が決壊しました。決壊場所は小田急線和泉多摩川駅のすぐ近くの下流側です。周辺には新興住宅地があって家が流されるなどの大きな被害が出ています。
 秋は春と同じように大陸から高気圧が移動してくるため、低気圧や気圧の谷と高気圧が交互に通過します。このため、天気図を見ると低気圧や気圧の谷と高気圧が東西に順序良く並んでいることがあります。(図4左)の天気図は日本列島が大陸から移動してきた高気圧に覆われています。高気圧の西側と東側に低気圧があり、高気圧や低気圧が東西に並びました。秋の「移動性高気圧」は乾燥した澄んだ空気を運んでくるため、快晴状態となることが多く「天高く馬肥ゆる秋」などと言われています。秋の移動性高気圧の動きは速く、気持ちのよい晴れも1~2日程しか続かないことが多く、「女心と秋の空」などと言われます。(図4左)の21日に華中にある低気圧が東に移動し、24日(図4右)に低気圧を含む気圧の谷が日本付近を通過しています。雨は22日に西日本から降り出しました。


(図4)2008年10月21日9時(左)24日9時(右)の地上天気図

 秋が深まると、日本付近を通過する低気圧が日本の東海上で急激に発達し、西高東低の冬型気圧配置になることがあり、「木枯らし」と呼ばれる北風を吹かせます。(図5左)は2008年に近畿地方で木枯らし1号が吹いた日の天気図です。翌日(図5右)は冬型の気圧配置になって全国的に寒気が流入し、日本海側の各地で初雪が降りました。気象庁では、東京と大阪で晩秋になって最初に吹く木枯らしを「木枯らし1号」とし発表しています。過去の統計(東京)をみてみると「木枯らし1号」は立冬の概ね前後10日間の間に吹くことが多いようです。


(図5)2008年11月18日9時(右)と19日9時(左)の地上天気図

No.23

2003.4 Categories季節

日本に来る気団

 日本の1年間の気候変化をみると、寒い季節や暑い季節、あるいは乾燥した季節やジメジメと湿った季節があります。この原因はその季節により、性質の違った空気が流れ込んで来るためです。
大陸や海上のような広い範囲で、気温や水蒸気の量が水平方向にほぼ一様である空気の塊を気団といいます。(図1)や(表1)に示したように、日本付近に現れる気団は気温や湿度(正しくは水蒸気の量)がそれぞれ異なっており、日本の四季の天候を特徴あるものにしています。


(図1)日本付近の気団
注:カッコ内は気団の記号と現れる季節、□内は気団の性質を示しています。
(表1)日本付近の気団の性質
名称発源地日本に来る時期特徴代表例
シベリア気団
cP
シベリア大陸主に冬期
(晩秋~初春)
・北西の季節風により日
  本に来る寒冷な空気
・初めは乾燥しているが
  日本海を通るときに湿る
シベリア高気圧
(冬型の気圧配置)
小笠原気団
(北太平洋気団)
mT
日本の東海上主に夏期
(晩春~梅雨~初秋)
・南東または南西の季節
  風により日本に来る
・高温、湿った空気
小笠原高気圧
(北大平洋高気圧)
オホーツク海気団
mP
オホーツク海主に梅雨期と初秋・北東気流となって日本
  に来る
・寒冷、湿った空気
オホーツク海
高気圧
揚子江気団
cT
揚子江流域春・秋・偏西風にのって西から
  来る
・温暖な乾燥した空気
移動性高気圧
赤道気団
南太平洋夏~秋・台風などと共に日本に
  流入して大雨を降らせる
・高温、多湿な空気
台風

それぞれの気団の性質は、次のように考えると理解しやすくなります。各気団が来る方向をおおざっぱにみると2つの系統に分けられます。それは、「北から来るか南から来るか」、「大陸から来るか海から来るか」です。
北から来る気団は冷たい空気をもたらし、南から来る気団は暖かい、もしくは暑い空気をもたらします。大陸は海よりも乾燥しているため、大陸から来る気団は乾燥しています。海から来る気団は湿っています。このような見方で表を見直すとよくわかるでしょう。
冬は日本よりも北(冷たい)にあるシベリア方面(乾燥している)から空気が流れ込んで来ます。このため、冬は寒く太平洋側では乾燥しています。シベリア気団は元々乾燥していますが、暖流の流れている日本海を渡るときに、海上から熱と水蒸気を補給しその性質が変わってしまいます。このようなことを「気団の変質」といっています。このため、冬の日本海側では大雪が降りやすくなります。
逆に、夏に太平洋高気圧として日本にやって来る小笠原気団は南から来て、発源地は海上です。このため小笠原気団は日本に暑い湿った空気をもたらし、日本の太平洋側の夏は蒸し暑い天気の日が多くなります。
また、日本に来る空気の性質のおおざっぱな見方は、気団だけでなく気圧配置の関係で日本付近に流入する気流に対してもいえます。南(低緯度)から入って来る気流は暖かく湿っていますし、大陸から入って来る気流は冷たく乾燥しています。つまり、どのような性質(暖かいか冷たいか、湿っているか乾燥しているか)の空気が入って来るかを理解する手段としても役立ちます。

No.16

2002.12 Categories

シベリア高気圧

 最近の鉄道のレールは、繋ぎ目の少ないロングレールが使われているので、電車に乗ったとき、規則正しい「ガタゴト~ン、ガタゴト~ン」という音を聞く機会が少なくなりました。レールとレールの繋ぎ目は隙間があるので、あの音はそこを通過するときの音です。レールとレールの繋ぎ目の隙間は、冬に広くなり夏は狭くなります。これは、レールが温度によって伸び縮みするからです。昔は、夏にレールが伸びすぎてあらかじめとってあった隙間では足らず、レールが曲がってしまい電車が止まったこともありました。


(図1)体積が同じで温度の違う空気の比較
(温度の低い空気の方が空気の分子がたっぷりと
入っていて重い。)

レールのように、ある一定量の金属を暖めるとその体積は変わりますが、重さは変わりません。逆に同じ体積で、温度が違う金属の重さを比べると、温度の低い金属の塊の方が重くなります。これは温度により密度の変化が起きているからです。空気も同じ性質があります。同じ体積で温度の違う空気を比べると、温度が低い空気の塊の方が密度が高くなり、重くなります(図1)。

よく晴れた夜、放射冷却で地面が冷やされると、それに接した空気も冷やされて重くなります。冷たい重い空気は谷筋や低いところを流れるため、畑や果樹園では一部の地域だけが霜の被害に遭うことがあります。
冬、シベリアには発達した高気圧が現れます。これをシベリア高気圧といいます。このときの上空の天気図(約5,500mの高さ)をみると、シベリアにはしっかりとした気圧の峰があり、この高さには周囲よりも暖かい空気があります。
北半球の冬は夏に比べて夜が長く、特に緯度の高い地域は太陽が出ている時間はごくわずかです。そうなると太陽で地面が暖められる時間は少なく、放射冷却が起こっている時間の方が遙かに長くなり、そこに接している空気も冷える一方で、地面付近には密度が高い、重たい空気ができます。


(図2)冬型の気圧配置

シベリアの周りを広い範囲で見回すと、東には日本海や太平洋があり、南にはインド洋があります。海と陸の間で吹く海陸風では夜は陸から海に向かって風が吹きます。つまり空気が流れているのです。これは、海(水)は陸に比べて暖まりにくく冷えにくいので、夜の海上は陸よりも温度が高くなり、そのため海上の空気が陸上の空気に比べて暖かくなり、海上では上昇気流が起こりそこに向かって陸から空気が流れ込むからです。
北半球の冬は、陸上が冷えて海上の方が温度が高く、夜に海陸風が起きるときと同じような状態となり、シベリアから海に向かって空気が流れ出そうとします。
ところが南には標高が高いチベット高原や、8,000m級のヒマラヤがあるため、シベリアで作られた冷たく重い空気はここで遮られ、向きを変えて日本に流れ込んできます。このため、日本の冬は格別の寒さとなり、日本海側では大雪となりやすく、太平洋側では風が強く乾燥した晴天となります。しかも、シベリア高気圧の動きは遅いので、このような冬型の天気は何日も続きます。(図2)は冬型の気圧配置のときの天気図です。
ちなみに、コンピューターでのシミュレーション結果ですが、ヒマラヤをなくすと冷たい空気がインドの方に行ってしまった、という話を聞いたことがあります。

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