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健康コラム

No.6

2003.8 Categories生活コラム・夏

避暑~森の空気を意識する~

自然の大気を満喫し、健康増進という観点から避暑を改めて見直してみましょう

避暑というと、猛暑の都会を離れて高原の別荘に滞在するという、ステイタス感覚をくすぐるようなイメージがあります。そもそも避暑は、明治期に日本に滞在していた欧米人が、高温・多湿の夏に耐えられず、すごしやすい場所を探したことに端を発しています。
日本最初の高原避暑地である軽井沢は、明治中期にイギリス人宣教師ショーが移り住んで以来、発展したものです。軽井沢の夏はイギリスの気候に似て高温・多湿ではなく、ブナなどの落葉広葉樹林の植生も共通しています。軽井沢には、欧米人が慣れ親しんだ風景が広がっているのです。避暑地は、欧米人がなじんだ快適環境といえるでしょう。
では、彼らは避暑地でどのように過ごしてきたのでしょうか。欧米人にとって、避暑地での生活の中心は森にありました。森の中を歩きながら歓談し、気持ちを落ち着かせました。森は思索にふけったり体調を整えたりする場所だったわけです。避暑とは、屋外で自然の大気を満喫することだったのです。
森を歩く習慣は、日本では後に森林浴としても注目されることになります。しかし、そこでは樹木が発するフィトンチッドなる物質の効果ばかりが語題になりました。森の空気を意識し、程よい運動をしながら呼吸を整えリフレッシュをするという、本来の意図はあまり普及しませんでした。そのために、森を歩くという習慣を持たない日本人にとって、森を利用した避暑のあり方も、十分には定着してこなかったといえます。
ところで、大気を利用した休暇は、病気の治療と関連しています。ドイツでは、豊かな森や海岸に療養所が設けられ、長期滞在による治療が施されました。日本でも明治期には都市郊外や農村に療養所が作られ、大気を利用した治療が行われました。しかし、細菌学の発展とともに大気療法は影を潜め、治療の舞台は都会の病院に移っていきました。以後、身体にとっての大気の意味は、軽視されてしまうことになります。
避暑を、大気や植生などの身体に影響を与える環境を積極的に利用して、健康増進をはかるものと考えることによって、とかくイメージでとらえられやすい避暑を、改めて見直すことができるのではないでしょうか。


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