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異常気象時代のサバイバル

No.34

2015.04.30

吉野正敏

暖冬・寒冬の中の低温・豪雪・積雪

2014年12月から2015年3月までを振り返る

 地球温暖化の流れの中、日本の冬は暖冬傾向である。しかし、これは「大きな流れで見ると」と言う前置きが必要である。個々の年を見ると、寒冬の年もあるし、冬全体としては暖冬でも一時的に低温になる期間があったり、低温な日がある場合はまれでない。このような時、豪雪・積雪はどうなっているのか、われわれの知識は充分でない。
 2014年12月から2015年2月の冬をはさんで3月までは、まさにその典型であった。北日本の例で特徴を紹介すると、12月は低温、1月になって温暖化に転じ、3月になっても平年よりかなり高温であった。(表1)に北日本太平洋側の旬別の状態をまず示しておこう。

(表1)北日本太平洋側の旬別に見た気温の平年差および降雪量平年比

気温平年差降雪量平年比

201412上旬-1.4℃107%
 12中旬-0.5174
 12下旬-0.7103

20151上旬+0.547
 1中旬+1.678
 1下旬+2.2104
 2上旬+0.572
 2中旬+2.274
 2下旬+2.769
 3上旬+2.6122
 3中旬+1.756
 3下旬+2.736

 このように冬の初めの12月は平年よりかなり低温であった。2015年1月からは一転して平年より高温となり3月までもその傾向は続いた。
 興味があるのは、降雪量である。平年比は寒冬の12月には100%以上、暖冬の1月になってから100%以下になった、すなわち、降雪量が少ないのは常識的だが、暖冬に転じてからでも、1月下旬、3月上旬には100%を越える降雪が見られた点である。暖冬中の豪雪が発生していたのである。表にはあげてないが、1月下旬、3月上旬には日照時間も平年の60~80%であった。

寒冬の豪雪・暖冬の豪雪

 (表1)に示したような寒冬期間の豪雪、暖冬期間の豪雪をもう少し詳しく調べてみた。岩手県北部、盛岡の西に位置する雫石におけるアメダス観測地点の観測結果を(表2)にまとめた。2014年12月から2015年3月までの間の典型的な場合を抜き出した。その選び出した期間(2~3日から数日)は次のとおりである。
 (a)典型的な温暖期間:2015年1月、11-16日、20-25日。2月4-8日、12-16日、21-25日。3月6-9日、16-18日。
 (b)典型的な温暖日:2014年12月1日。2015年1月13日、23日。2月8日、16日、24日。3月8日、18日。
 (c)典型的な寒冷期間:2014年12月13-16日、17-21日、22-25。2015年1月1-3日、28-29日。2月9-10日、13-14日。3月11-12日、23-24日。
 (d)典型的な寒冷日:2014年12月13日、16日、27日。2015年1月7日、21日、25日。2月7日、16日、23日。3月1日、5日、11日。

(表2)典型的な温暖または寒冷な期間・日における平均気温・最深積雪・降雪量合計・日照時間の平年差、2014年12月~2015年3月

期間または日平均気温最深積雪深降雪量合計日照時間

(a)温暖期間+2.1℃+13.6cm-2.3cm+1.7時間
(b)温暖日+4.3+7.0-2.4+1.6
(c)寒冷期間-1.9+27.0+8.2-1.5
(d)寒冷日-3.3+19.8+3.9+0.4

 この表を見ると注目しなければならない現象が幾つかある。まず、最深積雪である。 寒冷な期間にプラス、すなわち豪雪に見舞われるのは当然であろうが、温暖な期間もしくは温暖な日にも最深積雪はプラスである。つまり暖かくてもドカ雪が降り、積もることがある。これは大気下層には温暖な空気があって上空に寒冷な空気が侵入してきた場合で、地上天気図では前線が近くにある場合である。寒冷な期間もしくは寒冷な日は冬型気圧配置が発達した場合で、平年の状態がさらに発達した時である。温暖な期間と寒冷な期間の降雪量の旬の値は(表1)に示したが、典型的な期間や日について示すと、このようにさらにはっきりする。
 ついで興味があるのは温暖な期間・日と、寒冷な期間・日の値である。(a)と(c)、(b)と(d)の最深積雪深(平年値)を比較してみよう。(a)と(c)は、(b)と(d)よりそれぞれ2倍以上である。
 日照時間の平年差は温暖な日、寒冷な日について、(表2)に示すような一般的な傾向は出ているが変動が大きい。例えば、温暖な日の平年差の平均は+1.6時間だが、実際にはマイナス3.5時間から+6.1時間までの開きがある。同じく寒冷な日の平年差の平均は+0.4時間だが実際にはマイナス4.2時間から+9.8時間の開きがある。これを言い直すと日によって、太陽が顔を出す状態(日照時間)には、気温の平年差や積雪・降雪の平年差に及ぼす原因とは違った気象原因、例えば雲量が関係していることである。また、融雪には日照時間が関係するので、今後の詳しい調査が必要であろう。

温暖期間・温暖日の雪景色

 雪景色は新雪が積もった時がよく紹介される。大雪の中で立ち往生した車の列など毎年報道される。雪国のサバイバルには見逃せないインパクトであることはこの連続エッセイで何度か触れた。しかし、雪国の人びとにとっては雪が解けて暖かくなり、待ち遠しい春を感じさせる風景が嬉しい。一つのサバイバルを抜け出せた喜びでもあるからだ。
 (写真1)は2015年1月23日に撮影したつらら(左)と、屋根から滑り落ちる雪(右)である。上記のように、2015年1月21日から25日は温暖な日々であった。23日は早朝から屋根の雪が落ち、好天に恵まれて家の東側の軒先のつららは陽の光に輝いた。1月下旬とは考えられない春の光であった。23日の雫石観測地点の日照時間は4.4時間、平年差は+1.5時間であった。ちなみに、気温平年差は+4.5℃、最深積雪平年差は+19cm、降雪の合計の平年差はマイナス1cmであった。平均状態を示す(表2)の値と比較して、それぞれ、かなり近い値で、1月下旬の典型的温暖日としてよかろう。


(写真1) (左)つらら(2015年1月23日9時35分)
(右)屋根から滑り落ちる雪(同日、9時40分)

 次に、雪面上の気温逆転層の写真を紹介したい。(写真2)は2015年2月6日早朝の7時05分に撮影した。日本の秋、風穏やかな、晴れた夜間、接地逆転層が発達し濃霧となることが特に山間地では多い。視界不良で交通事故の原因となり、サバイバル問題の一つである。
 北日本や本州の日本海側で積雪がある季節、「晴れて、風が穏やかな夜間」はあまりない。ところが、最近、様変わりしてきて、冬でも明け方、濃霧に見舞われることがある。2015年の場合、2月6日、12日、3月19日の早朝、7~8時に雪面上5~6mの濃い霧が発生した。高気圧に覆われるため、風は弱く、日中・夜間とも雲が少なく、夜間、雪面の放射冷却が進んで濃い霧の層を発生させた。(写真2)はその時の例である。


(写真2)積雪面上の逆転層(2015年2月6日7時)

 濃い霧の層は厚くても10mくらい、普通は4~5mで薄いが、霧の層の中は濃く、視程1~2mでほとんど先が見えないこともある。


(写真3)春近い林の残雪(2015年2月25日7時)
(写真はいずれも雫石にて吉野撮影。不許複製)

 融雪の状況は林の中や周辺でよく捉えられる。木々の幹の周りの雪は早く消え、根元はリング状に土が現われる。待ちに待った春の景色である。しかし、一夜にしてまた雪に覆われ、冬の雪景色になる非情を味わうこともある。(写真3)は2015年2月25日に撮ったが、前日の24日の日照時間は9.3時間、25日は9.4時間で、平年値はこの頃4.0時間だから平年差は5.3、5.4時間に及んだ。
 いよいよ春本番となることを、人びとはこのような雪景色から感じとるのである。


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