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異常気象時代のサバイバル

No.37

2015.08.12

吉野正敏

超高温期のバイオクリマ

超高温期の問題点・捉え方

 今年、2015年の夏はどう考えても、異常な高温期の酷暑である。2015年8月5日群馬県館林市では39.8℃を、福島県福島市で38.9℃を観測した。この原稿を書いている時点で、東京の都心では6日連続の猛暑日(日最高気温が35℃以上の日)を記録した。これは1875年の観測開始以来の最長記録である。日本ばかりでなくヨーロッパや北米各地からも猛暑のニュースがたえない。おそらく、さらに猛暑は続くのではないかと思う。そこで、このような猛暑日が連続する期間を超高温期と呼び、その実態・捉え方・などについて、特にバイオクリマの立場から考えてみたい。
 結論を先に言うと、「このような非常な暑さに関して、その現象の時間-空間スケールを正しく捉え、サバイバルの対策・効果・課題などを考えねばならない」ということである。以下、ここに重点をおいて少し詳しく述べたい。

超高温期のバイオクリマの時間-空間スケール

 日本では埼玉県熊谷市・群馬県館林市・岐阜県多冶見市など、非常に高い日最高気温を考えて対策をねり、市民の生活への効果、さらにそのニュース的な価値で、町おこしに役立てている。酷暑を逆手にとった感もする。いま、バイオクリマ対策の空間スケールを、医療・教育・事業所・公共空間などを例にとってまとめると(表1)のとおりである。

(表1)時間スケール別に見た超高温期(*)に対するバイオクリマ対策の空間スケールの例

バイオクリマ時間スケール  
対策空間数分間~数時間数時間~数日数日~数週間

[医療空間]   
病院数m-数100m数10m-数100m数10m-数km
介護施設数m-数10m数10m-数100m数10m-数km
在宅看護数10cm-数10m数m-数10m数m-数100m

[教育機関・事業所空間]   
学校数m-数100m数m-数100m数10m-数km
事業所・役所など数m-数100m数m-数100m数10m-数km

[公共空間]   
公園・広場数m-数10m数m-数100m数10m-数km
建物外シャワー数m-数10m数m-数10m数10m-数100m
建物内シャワー数10cm-数10m数10cm-数10m数m-数10m
道路散水数cm-数m――――
打ち水(路地・植木)数cm-数10cm――――

(*)超高温期とは7日(1週間)以上、猛暑日(日最高気温35℃以上)が連続、あるいは、38℃以上が4日以上連続した期間とする。1~2日の35℃以下の日があって連続しない場合、超高温期とは猛暑日が14回以上、あるいは、38℃以上が6回以上出現した期間とする。なお、表1は吉野試案につき無断転載・引用を禁止する。

 この表は大まかな目安とみていただきたい。今後の検討を必要とする試案である。また、特殊な条件がさらに加わった場合、例えば、地下街・停電時・交通機関内・過疎地域・大規模災害直後などでは、この目安の範囲を超えることが想定される。

バイオクリマの対策別に見た効果と課題

[学校・病院など]
 建物内で、特別な防暑施設空間の場合である。学校では生徒・学生が在校時か非在校時かで、対策は非常に異なるし、病院でも入院患者の病棟(日中・夜間)か、外来患者(日中)か否かで区別して対策を立てる必要がある。
 水の供給の停止・不調を考慮した対策が必要である。今夏、日本では幸い水不足は発生しなかったがアメリカ合衆国・南ヨーロッパの1部で起った。自家発電能力の限界を超える場合を想定した対策が必要である。また、利用していない空間・部屋などが周辺地域の人達の避難所になる場合などもあるので、考慮に入れておかねばならない。また保育所・幼稚園・小中学校では少子化傾向を、老人施設では高齢化傾向を抜きに対策は立てられない。 
 問題は各施設が対策を立て経費負担・予算化すべき課題と、市町村レベルか、国が予算化すべき課題かの振り分けである。ここでバイオクリマの空間スケールの考慮が重要になる。例えば、非在校時(登下校時・在宅時)の環境下のバイオクリマの考察責任は誰か、在宅時の支援介護・要介護では考察責任者は誰か、などきめ細かく考えておかねばならない。
[熱中症統計]
 日本ではあまり問題になっていないが、インドなどではカースト制もあって、屋外生活者が多くその人たちの熱中症対策がある。この人達のバイオクリマは研究されてない。日本の熱中症患者の統計は病院への搬送者数である。ニュースでよく報道されるが、室内でも一人暮らし高齢者の熱中症孤独死があるが、その統計は入っていない。 

公共生活空間における対策と課題

[公園・広場・シャワー]
 地方自治体・地域共同体・グループなどが実行するが、その予算化・実施者はもちろんその所有者・想定される利用者・マイナスエネルギー収支の負担者を特定しておかねばならない。利用者の一時避難や、特定の共同体・グループの対処宣伝の効果が優先してはならない。
[道路散水]
 物理的効果はないが心理的効果はあろう。しかし、多数の人間が集まって水を撒く事の消費エネルギーと、散水によるアスファルト道路上の気温低下に要するエネルギーとを比較すれば、いかに非効率かを知ってから、行動に移さねばなるまい。単なるお遊びではすまされないであろう。
 東京でも下町の路地の打ち水はすばらしい。路地の両側、玄関脇に植木鉢が並び、暑い夏の日の夕方、水撒きされている空間は心が安らぐ。いつまでも保存したい空間である。住んでいる人たちの生理的・心理的効果はもちろんあろう。江戸時代・明治時代を経て、人びとがはぐくんできた暑さ対策の景観の遺産として、これ以上のものはないであろう。
 しかし、この遺産確保の条件はよく検討しておくべきである。すなわち、江戸時代末期から明治初期は小氷期と呼ばれる比較的温度の低い時代であった。また、江戸にヒートアイランドは形成されていたが、人口は1オーダー小さく100万のオーダーで、最近ほどのヒートアイランド効果はなかった。これらの理由で、夏に最近のような酷暑期は出現しなかったと思われる。今後は水源(地下水)確保なども考慮しなければならない。 

あとがき

 酷暑の実態は次回にヨーロッパの例などをあげながら紹介したい。読者の皆様、この暑さにお気をつけてお過ごしください。


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