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暮らしの中のバイオクリマ

No.3

2012.02.08

吉野正敏

ドイツの健康天気予報

新聞の健康天気予報欄

 現在、世界の中で、新聞の健康天気予報欄が最も充実しているのはドイツである。いわゆる全国紙で、誰もが認める新聞は数種ある。その中の一つであるフランクフルターアルゲマイネ新聞(Frankfurter Allgemeine Zeitung, 略称、F.A.Z.)の健康天気予報欄について、少し紹介しておきたい。特にわれわれが知っておかねばならないのは、(1)日本の新聞の天気予報欄とどう違うか、(2)どのような病気がとりあげられているか、(3)どのような健康状態が予報の対象になっているか、(4)どのような表現(段階区分、形容詞)で発表されているか、などである。
 天気予報はすでに100年以上の歴史があり、その間に著しい進歩をした。ヨーロッパの新聞天気図と天気予報欄の約50年前の状況は、当時、筆者はドイツにいたので、現地で集めた新聞紙面を元に調べたことがある。その結果は日本気象学会の機関紙「天気」(10(2)46-49、1963)に載っている。このような背景の下に、日本の新聞の健康天気予報欄をより充実させるため、今回は書きたい。

2012年1月のF.A.Z.の天気情報欄

  まず、天気情報欄の大きさ(紙面上での面積)だが、横幅は紙面いっぱいで縦は19cmある。1ページは51.5cmあるから、1ページの下部のほぼ36%を占めている。日本の新聞天気図欄のように、遠慮勝ちにどこかのページの片隅に載っているのとは全く感じが異なる。表題は「F.A.Z.天気情報」とある。図はもちろんカラーで4種類、すなわち、(1)ドイツ国内の18地点における当日の天気と日最高気温の予報値の分布図。大きさは縦12cm、横8.5cm。(2)ヨーロッパの当日の予想天気図で等圧線・前線・日最高気温が入っている。図の範囲は、西:イベリア半島、東:トルコ、南:北アフリカ、北:北欧。縦6.5cm、横10cm。(3)北アメリカの当日の予想天気図で等圧線と当日の日最高気温のみ。縦4.2cm、横4.6cm。(4)アジアの当日の予想天気図。大きさ・内容は北アメリカと同じ。
 この4枚の特徴は、(1)現況、または観測値でなく、当日の予報図であること。日本の新聞では、最新の観測値に基づく現況天気図が載っているのと大きな違いである。(2)図の面積は小さいけれども、北アメリカ・アジアの天気図を含むこと。つまり、ドイツから遠く離れた地域の天気図情報を提供している。現在の日本の新聞では、ありえない。(3)気温は日最高気温情報に絞っていること。人間活動はもちろん日中なのだから、生気候学的に正しい。  表は二つ載っている。すなわち、(1)各地点12時(それぞれの地点の地方時)の気温・天気について、前日(観測値)、当日・翌日・翌々日(予報値)のドイツ国内43地点の値の表。(2)同じ情報について、外国106地点の値の表である。内分けは、ヨーロッパが47地点、アフリカが11地点、北アメリカが12地点、ラテンアメリカが8地点、近東が8地点、アジアが17地点、オーストラリア・ニュージーランドが3地点についての表である。日本の新聞にも最近この二つの表のような値が載っているが、国内・国外の地点数からも、内容(情報項目)からも貧弱で、ドイツの新聞の詳しさとは比較にならない。

医学気象予報

 次に医学気象予報、あるいは、健康気象予報に関する情報(記事)はどうなっているか、紹介しよう。Biowetter(直訳すれば生天気、英語に訳せば、Bio-weather)と言う欄が、中央部に天気概況と同じ面積でのっている。語数では約65ワードである。ここがいわゆる医学気象予報の部分である。
 この欄の解析を目下行っているが、ここで結果の1部を速報しておきたい。(表1)にまとめたのは昨年12月から今年の1月中の記事に出てくる病名である。冬の状態の解析だから、多発する病名はもちろん冬のもので、季節によって変化するのは当然である。

(表1)新聞の医学気象予報欄に出る病名・健康状態・表現*

病名表現

リュウマチ痛みの訴え
関節炎・筋肉痛痛みの訴え
喘息症状悪化
頭痛ひどい、軽い、月経中起こりやすい
偏頭痛ひどい、軽い、発作的
めまい、げんうん感しばしば起こる
血圧変動気温の高低に連動
循環器軽い障害、落ち着く、完全になくなる
風邪、流感、インフルエンザ感染の危険度高い、かなりある
精神状態(機嫌)晴れやか、陽気になる、悪くなる
神経質の人・不眠症不安定になる、不安定傾向
疲労・やる気出てくる、なくなる
作業心迫(心理学)よくなる、悪化する
栄養・食品ビタミン摂取
運動・活動充分に行う、規則正しく行う

*2011年12月~2012年1月のフランクフルター・アルゲマイネ新聞の天気情報欄を筆者が集計した。

 この(表1)を見ると、幾つかのことに気がつく。例えば、日本で多い心筋梗塞などの病名がない、心理的な状態の取り上げが多い、発症の強弱・多少・傾向は定性的な表現になっている、などである。
 次の機会には、他の季節について紹介したい。また、低気圧・高気圧・前線の去来などとの関連をどう表現しているかなどについても考察したい。

天気情報欄の旅行天気予報

 また、われわれにとって興味があるのは、このF.A.Z.の欄には「ヨーロッパの旅行天気予報」と題する部分がある点である。われわれのバイオクリマ研究会は医学天気予報の他に衣食住に関する天気予報、旅行・スポーツなどに関する天気予報にも関心を払っている。そこで、少し関連した事柄を述べておきたい。
 F.A.Z.の旅行天気予報は、当日、翌日、翌々日の予報をヨーロッパを8地域に区分して行っている。内容はほとんど気温と晴れ曇りの予想である。仕事や休暇の小旅行にはこれで充分であろう。そして、旅行天気とは題しているが、ヨーロッパ天気図の解説補助の役目も果たしている。
 それにしても、日本のメディアは、「世界の天気」を最近取り上げて毎日流しているが、誰に対し、どのような情報を流すのが最適なのか、充分に検討されてないように思われる。


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