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お天気豆知識

No.117

2014.7 Categories臨時掲載

平成26年6月の雷雨

 平成26年の梅雨は、6月5日までに東北北部まで梅雨に入ったとみられると気象庁から発表がありました(速報値による)。しかし、梅雨入り後の関東の雨の降り方はいつもと違いました。関東各地の6月の雨量は平年より多く、関東各地では雷を伴った局地的に激しい雨の降る日が多くなりました。栃木県の宇都宮では、6月の平均雷日数は3.2日ですが、今年は11日となっています。宇都宮の雷日数は8月がもっとも多くその平年値は6.4日ですから、今年の6月はいかに雷の日が多かったかが分かります。
 私の職場は、横浜市都筑区にありますが、やはり6月はシトシト降る雨の日は少なかったという印象です。(写真1)は6月13日午後12時半ごろ、横浜市都筑区で撮影した雄大積雲(雷雲の仲間)です。写真の赤い矢印が北方向なので、雲はほぼ南西から北東方向に広がっています。


(写真1)雷雲からの雨(平成26年6月13日12時31分 横浜市都筑区早渕にて)
中央の白い建物(赤い矢印)は北方向

写真の右上は青空でその付近の雲は白く輝いていますが、雲の底は黒くなっていることから、かなり厚い雲であることが分かります。地面から雲の底まで黒っぽくなっている部分はこの雲からの雨です。この雲を撮影した時は雷鳴が聞こえました。都筑区周辺でもこの雲の一部の通過により弱いながらも雨が降りました。
 (図1)はこの写真を撮影した時刻ごろのレーダー画像です。


(図1)レーダー画像(平成26年6月13日12時30分)

東京都の中央付近に50mm/h以上の降雨強度を持ち、ほぼ南西から北東方向に広がる雨域があります。(写真1)の雲から降っている雨域はこの雨域に相当します。レーダー画像を連続して見ていくと、この雨域は13日の11時頃奥多摩に現れて東南東に進み、神奈川県境付近を東進し午後1時半過ぎには東京湾に出て消滅しました。雷雲の通過した地域は一時的に雷を伴って強い雨が降ったことでしょう。
 (図2)はこの写真が撮影された時刻に近い、13日12時の地上天気図です。


(図2)平成26年6月13日12時の地上天気図

北海道付近に中心気圧が988hPaの発達した低気圧があります。真冬にこれだけ発達した低気圧があると、日本付近の等圧線間隔が狭くなり、関東でも北寄りの強い風が吹きますが、この天気図では等圧線の間隔が広いため、そのようなことにはなりませんでした。等圧線の様子から関東付近は気圧の谷になっているのがお分かりいただけるでしょう。ところが、梅雨の主役の梅雨前線は、日本の南海上にあります。(写真1)の雷雲は、この気圧の谷と関係していたと見ていいでしょう。
 次に(図3)の500hPa天気図を見てみましょう。


(図3)平成26年6月13日9時の500hPa天気図

この天気図は冬に「上空に強い寒気が入って、日本海側では大雪・・・」という解説がある時に使われる天気図です。
 津軽海峡のすぐ西に低気圧があって、それを中心に等高度線(実線)がほぼ円形に取り巻いています。関東地方はこの渦の中に入っているように見えませんか?専門的に言うと、偏西風の南北方向の蛇行が何らかの原因で大きくなり、このような状況になってしまいました。
 破線は等温線で、日本付近にある、-6℃、-9℃、-12℃、-15℃を彩色してあります。本州付近で等温線が南の方(画面の下方向)に垂れ下がっていて、-9℃の等温線は関東の南にあります。これは、日本の上空に寒気が入っていることになります。つまり、上空に寒気が入り地上との温度差が大きくなって雷雲ができました。
 もう少し堅苦しい話にお付き合いください。
 高層天気図を作るための観測は、関東平野ではつくば研究学園都市にある館野の高層気象台で1日2回、日本時間で9時と21時に行われています。館野の500hPaの6月の毎日 9時のデータを見てみましょう。(図4)です。


(図4)平成26年6月の毎日9時の館野の500hPaの気温と平年値

赤い実線は毎日の気温で青い実線は平年値です。(写真1)の雲を撮影した6月13日は平年よりも低い-12.6℃でした。これは、10月の平年値に匹敵します。この日以降、月末までほとんどの日が平年よりも低くなっています。いかに関東平野の上空に寒気が入った日が多く、大気の状態が不安定になりやすかった日が多かったかが分かります。これは、500hPa天気図のところで述べた上空の偏西風の蛇行の影響によるものです。
 6月最後の日曜日の29日、昼頃は青空に白い積雲(綿雲)が沢山浮かんでいました。しかし、夕方は都心で激しい雷雨となり、渋谷区では小田急線の下を通る道路、いわゆるアンダーパスに雨水が流れ込み、数台の車が水没しています。幸いにも死者は出ませんでした。写真は撮影しませんでしたが、このときの雲は午後4時過ぎに横浜市青葉区で見ました。空全体が黒に近いこげ茶色の雲で覆われ、雲の底には黒っぽい千切れ雲があり、いかにも不気味な空で、雷鳴も聞こえました。雲の奥の方は黒っぽい壁のようになっていて、強い雨が降っていたことがうかがわれました。
 (図5)は29日16時15分のレーダー画像です。


(図5)レーダー画像(平成26年6月29日16時15分)

都内に80mm/h以上の強度を伴った雨域があります。雲の奥の黒っぽい壁はこの雨域に対応していたのでしょう。(図6)の29日15時の地上天気図を見ると、関東の東海上と秋田沖に低気圧があって、関東付近はこれら二つの低気圧を含む気圧の谷になっています。


(図6)平成26年6月29日15時の地上天気図

梅雨前線は日本の南海上から奄美諸島にあります。レーダー画像にある雨域は、梅雨前線と関係の無いことが分かります。(図7)の500hPa天気図は日本海に低気圧があって、等高度線がその低気圧を中心にするように袋状になっています。


(図7)平成26年6月29日9時の500hPa天気図

破線で表される等温線は日本付近で谷状になっていて、日本海に中心を持つ-12℃の冷たい空気の塊があります。等高度線が袋状に南に垂れ下がっていることは、偏西風が南北に大きく蛇行していることを意味していて、そのため、日本列島の上空には寒気が入りやすくなっています。そのため、関東でも雷雨となりました。
 このように、今年の6月は大陸から寒気が流れ込み、関東地方では雷雨が発生しやすい気象状況の日が多くなりました。

(レーダー画像、天気図は気象庁提供)


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