お天気豆知識
No.106
2009.11 Categories秋
秋の天気図
夏を支配した太平洋高気圧が弱まり、大陸にある冷たい高気圧の勢力が強まってくると、「秋雨前線」が日本付近に現れ、日本列島の南岸まで南下してきます。年によっては8月下旬に秋雨前線が現れます。秋雨前線は太平洋高気圧の北側にできることでは梅雨前線と似ています。しかし、太平洋高気圧の勢力は梅雨期と比べると衰えていて、南から秋雨前線に流れ込む水蒸気の量が少なくなっています。このため、秋雨前線の雨は全国的にしとしと降ることが多くなります。ときには強い雨を降らせることがあるので、注意が必要です。(図1)がその例で、2006年9月10日と11日には各地で激しい雨が降りました。
(図1)2006年9月10日9時(左)と11日9時(右)の天気図
秋は、特に9月は大型の台風が日本に来襲することが多く、昔から「二百十日」「二百二十日」などと恐れられてきました。大きな被害がでている洞爺丸台風や伊勢湾台風は9月に来襲しています。(図2)は2006年9月17日9時の天気図で、長崎県に台風13号が上陸しました。
(図2)2006年9月17日9時の天気図
九州は激しい雨と暴風に見舞われ、宮崎県延岡市では竜巻が発生し、特急電車「にちりん9号」が横倒しになりました。台風による激しい雨、大雨は台風周辺だけではありません。台風が秋雨前線を刺激したり、南から暖かく湿った気流が入り込むと、台風から離れたところでも大雨になります。このような大雨で思い出されるのは、昭和49年(1974年)9月1日に多摩川が決壊したことです(図3)。
(図3)1974年9月1日9時の地上天気図
台風16号は四国に上陸して北上しましたが、奥多摩や奥秩父で豪雨が降り、東京都狛江市で多摩川が決壊しました。決壊場所は小田急線和泉多摩川駅のすぐ近くの下流側です。周辺には新興住宅地があって家が流されるなどの大きな被害が出ています。
秋は春と同じように大陸から高気圧が移動してくるため、低気圧や気圧の谷と高気圧が交互に通過します。このため、天気図を見ると低気圧や気圧の谷と高気圧が東西に順序良く並んでいることがあります。(図4左)の天気図は日本列島が大陸から移動してきた高気圧に覆われています。高気圧の西側と東側に低気圧があり、高気圧や低気圧が東西に並びました。秋の「移動性高気圧」は乾燥した澄んだ空気を運んでくるため、快晴状態となることが多く「天高く馬肥ゆる秋」などと言われています。秋の移動性高気圧の動きは速く、気持ちのよい晴れも1~2日程しか続かないことが多く、「女心と秋の空」などと言われます。(図4左)の21日に華中にある低気圧が東に移動し、24日(図4右)に低気圧を含む気圧の谷が日本付近を通過しています。雨は22日に西日本から降り出しました。
(図4)2008年10月21日9時(左)24日9時(右)の地上天気図
秋が深まると、日本付近を通過する低気圧が日本の東海上で急激に発達し、西高東低の冬型気圧配置になることがあり、「木枯らし」と呼ばれる北風を吹かせます。(図5左)は2008年に近畿地方で木枯らし1号が吹いた日の天気図です。翌日(図5右)は冬型の気圧配置になって全国的に寒気が流入し、日本海側の各地で初雪が降りました。気象庁では、東京と大阪で晩秋になって最初に吹く木枯らしを「木枯らし1号」とし発表しています。過去の統計(東京)をみてみると「木枯らし1号」は立冬の概ね前後10日間の間に吹くことが多いようです。
(図5)2008年11月18日9時(右)と19日9時(左)の地上天気図