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お天気豆知識

No.51

2005.4 Categories大気の立体構造

空気層の名前とその性質

 前回第50号<空気の成分、水蒸気は?>で、空気はほとんどが窒素で占められており、その成分構成比は高さの違いでは変化しない、と書きました。では高さの違いによる気温の変化はどうなっているのでしょうか。

 その調査は、フランスの科学者デ・ボール(Leon Philippe Teisserenc de Bort)によって行なわれました。デ・ボールは1899年から1902年にかけて、人が乗っていない水素を入れた小さな気球に温度計を付けて飛ばし、測量で使うセオドライト2台使ってその気球を追跡し(図1)、方位角(北から東回りに測った角度)と仰角を観測しました。2台のセオドライトで同時観測をすると、気球の位置と高さがわかります。


(図1)2台のセオドライトによる気球の観測のイメージ図

 デ・ボールはこの調査により、気温が高さとともに低くなっていることを発見し、大気の低い部分をトロポスファー(troposphere:日本語では対流圏)と名づけました。トロポスファーはギリシャ語で、“tropos”ですが、“回転”あるいは“混合”を意味し、“sphere”は“空間”を意味します。さらにデ・ボールはトロポスファーより高いところに空気の軽い層があると考え、そこをストラトスファー(stratoshphere:日本語では成層圏)と名づけました。  やがて、無人気球で観測する方法は上空を安全に観測する方法として使われるようになり、1939年には現在世界各国で高層観測に使われている、気球に観測機器と発信機を付けたラジオゾンデによる高層観測を、ロシアの気象学者マルコーノフ(Pavel A Molchanov)が初めて行ないました。
 戦後は気象ロケットの観測により更に上空の気温分布などがわかりました。上空の大気層の呼び方は研究者により違っていましたが、1961年にWMO(世界気象機関)の高層気象専門委員会で勧告した分類が使われています。

 地上から約10kmまでを対流圏、約10kmから約50kmまでを成層圏、約50kmから約80kmを中間圏、約80kmから約500kmを熱圏と呼んでいます。


(図2)大気の名前

 対流圏では上空に行くほど気温が低くなり、いろいろな運動により空気が上下方向にかき混ぜられます。雲や雨などの気象現象や、台風や低気圧など日々の天気変化と関係ある大気運動はほとんど対流圏内で起こっています。
 成層圏では、高さが増しても気温がほとんど変わらない層があり、更に高いところでは高さが増すと気温が高くなります。 このため、成層圏では大気の上下方向の運動は起こりにくく、風は対流圏よりも弱くなります。しかし、成層圏の風や温度の変化は地球全体の気候に大きな影響を及ぼしています。成層圏はとても乾燥していますが、ごくわずかにある水蒸気により雲が発生します。この雲は高緯度で観測され、真珠のような光沢をしているので、真珠母雲と呼ばれています。太陽から来る強い紫外線から地球を守っているオゾン層は成層圏にあります。
 中間圏では再び高さが増すと気温が低くなります。電離層は電子密度の分布により、下からD層、E層、F層があり、その分布は熱圏に渡っています。中間圏には電離層の一番下にある、D層があります。
 熱圏では高さが増すに連れて気温が高くなります。ただし、熱圏では空気が非常に希薄なので、我々が仮にここに居ても皮膚に衝突する分子や原子の数は少なく、熱を感じることはないでしょう。熱圏が高温なのは、太陽からの紫外線を吸収するためです。そのため熱圏の温度はその時々の紫外線の強さに影響され、例えば、日中と夜間では数百度の温度差があるそうです。高緯度で見ることが出来るオーロラは熱圏で発生します。


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