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お天気豆知識

No.111

2010.4 Categories梅雨

梅雨期の天気図


(図1)梅雨前線(2002年6月12日)

 春も季節が進むと、日本の南海上では夏の主役の太平洋高気圧が勢力を強めながら北上してきます。一方、オホーツク海に高気圧が現れ、この高気圧から吹きだす東寄りの冷たい湿った気流と、太平洋高気圧から吹きだす暖かく湿った気流がぶつかるところに梅雨前線が出来ます。
 (図1)がその例です。サハリン付近にある高気圧がオホーツク海高気圧で、日本の南東海上にある高気圧が太平洋高気圧です。関東の東に低気圧があって、その低気圧の中心から東西に伸びる前線が梅雨前線です。半円と三角の記号が互い違いに並んでいるので、前線の種類は停滞前線です。

 前線には、“温暖前線”、“寒冷前線”、“閉塞前線”、“停滞前線”の4種類ありますが、梅雨前線は梅雨期に現れる前線の総称です。ここで詳しい説明は省略しますが、梅雨前線は秋~春に現れる前線と少し性質が違います。また、梅雨前線上の低気圧も秋~春に現れる低気圧と性質が違います。
 本州は6月に入ってから入梅しますが、沖縄がある南西諸島の入梅の平年は5月8日、奄美諸島は5月14日です。沖縄では連休中に入梅ということもあります。(図2)は2004年に沖縄が入梅した日です。本州でも5月中旬からあとに梅雨みたいな気圧配置になることもあり、“走り梅雨”ということもあります。その例が(図3)です。オホーツク海には高気圧があって、本州の南海上には高気圧があって本州付近に前線が横たわっています。まさに梅雨のような気圧配置です。


(図2)南西諸島の入梅(2004年5月5日)

(図3)走り梅雨(2004年5月16日)

(図4)梅雨の中休み
(2004年6月14日)

 日本全国で入梅後、大陸からやってきた移動性高気圧に覆われ、梅雨前線が天気図上から姿を消すことがあります。高気圧に覆われた地域は爽やかな空気に覆われて青空が広がります。このようなとき、“梅雨の中休み”といっています。(図4)は2004年の例で、全国で入梅の1週間後でした。梅雨前線は見当たらず、日本付近は本州上と黄海に中心を持つ高気圧に覆われています。この高気圧は中国大陸から移動してきた高気圧で、乾燥した空気でできています。13日は全国的に晴天になり、放射冷却の影響も加わって4月中旬並みの気温になったところもありました。北海道の北の低気圧に向かって吹く風でフェーン現象が起こり、札幌では30.6℃と真夏並みの気温になりました。

 6月も中旬を過ぎると、太平洋高気圧が更に勢力を強めてその中心も北に移動し、南西諸島や奄美諸島では梅雨明けが近くなります。その代わり本州上に停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気を送り込んで、各地で大雨が降りやすくなります。残念なことにこの大雨で、毎年どこかで悲惨な災害が発生しています。
 (図5)は2006年に九州北部で大雨が降った例です。九州には6月25日26日とも梅雨前線が西日本にあり、日本の南海上には太平洋高気圧があります。北半球では気圧の高いほうを右手に取ると、風は左斜め前方に吹きます。このように天気図を見ると、25日、26日とも太平洋高気圧の縁を回って東シナ海から九州北部にある梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込みやすくなっていることがわかります。


(図5)九州で大雨 2006年6月25日・26日(東シナ海から暖かく湿った空気が九州に流入)

 (図6)は静岡で大雨が降った例です。梅雨前線が静岡を通過しました。大雨のもとになる暖かく湿った空気の補給源は太平洋側からです。(図7)は新潟や福島で集中豪雨による大雨災害が発生した例です。東北地方南部から日本海を通って西に梅雨前線が伸びています。この場合、暖かく湿った空気は日本海側から流れ込んでいます。(図7)の2004年7月13日には新潟県中部で堤防が決壊し、浸水被害や死者も出て、気象庁ではこの大雨を「平成16年7月新潟・福島豪雨」と呼んでいます。


(図6)静岡で大雨 2003年7月4日
(太平洋側から暖かく湿った空気)

(図7)新潟、福島で豪雨  2004年7月13日
(日本海側から暖かく湿った空気が流入)

 台風シーズンは9月ですが梅雨期に台風が来ることがあります。梅雨期に台風が来ると、台風が梅雨前線を刺激して梅雨前線の活動が活発化して大雨が降ります。2007年は台風4号が7月14日から16日にかけて九州南部を通って本州の太平洋沿岸を通過しました。(図8)の7月13日や14日の天気図を見てください。オホーツク海には梅雨期の主役の一つのオホーツク海高気圧があります。小笠原諸島の東に中心を持つ高気圧は太平洋高気圧です。梅雨前線は本州を東西に横切っています。台風4号と太平洋高気圧の間に南北に伸びた等圧線が何本も並んでいて、この地域では南から暖かく湿った空気が流れ込んでいます。この暖かく湿った空気が梅雨前線に流れ込む地域では、前線活動が活発化して大雨が降りやすくなります。勿論、台風の通過でも大雨が降りますし、前線がなくても、暖かく湿った気流が入る地域でも大雨が降ります。このため、13日から15日にかけて太平洋側の各地では大雨になり、500㎜から600㎜降ったところもありました。これらの地域の3日間の雨量は7月の月平均雨量の1.2倍から1.5倍です。悲しいことに、各地で土砂災害や浸水被害が起こり、死者も出ています。


(図8)梅雨期間中の台風 2007年7月13日・14日・15日

 昔、かなり昔ですが、梅雨期に明治神宮へ花菖蒲を見に行きました。花菖蒲は梅雨期の花ですね。その日は小雨が降っていて、雨に濡れた花菖蒲は綺麗でした。紫陽花も梅雨期の花で、小雨に濡れた紫陽花も美しいものです。梅雨期の大雨災害のことばかり書きましたが、このような楽しみも梅雨期にはあります。

(天気図は気象庁提供)


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