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お天気豆知識

No.110

2010.3 Categories

ホワイト・クリスマスそして

 “ホワイト・クリスマス”というと、私は子どもの頃レコード(SP版)で聞いた、“I’m dreaming of a white Christmas ・・・・“と歌いだされる、ビング・クロスビー(Bing Crosby)のソフトだけれど張りのある歌声を思い出します。これを聞くと、外は寒くても暖房のきいた室内で、くつろいでいるような気分になります。この歌はテレビが普及して海外の映画がテレビで放映されるようになってから、同じタイトルのミュージカル映画(1954年)の挿入歌というか主題歌であることを知りました。また、1942年に初演されたミュージカル映画、”スイング・ホテル(Holiday Inn)“の挿入歌であることも知りました。
 “スイング・ホテル”放映後、ホワイト・クリスマスはヒットし、シングルの売り上げが5,000万枚とのことです。1942年というと太平洋戦争が始まって翌年です。時期も時期だしあまりの人気に、アメリカ軍のラジオ局が郷愁を感じさせるために、1941年(昭和16年)のパールハーバーの18日後にこの歌を初演したという噂も流れたそうです。このような時期にミュージカル映画を作るのですから、日本とは大違いです。
 ホワイト・クリスマスの作詞者はロシア系のアメリカ人、アーヴィング・バーリン(Irving Berlin)です。彼は、クリスマスに雪が降ることはほとんどないアリゾナで、さんさんと日が降り注ぐプールでくつろいでいるときに、ホワイト・クリスマスを書きました。よく歌われているのはその一部で、オリジナルには“日が輝き、草は緑で、オレンジや椰子の木は揺れていて・・・”という内容の部分もあります。確かに、クリスマス用の飾りを付けられたモミの木、その他のクリスマス用の飾りは真っ白な雪に映えますね。そんな景色を思い浮かべると、なんとなく華やいだ気持ちになります。


(写真1)雪の朝(2007年1月23日横浜市都筑区にて)

 クリスマスに限らず程よく積もった雪はすべてを白一色に塗り替え、様々な造形を作るなど美しいのは確かです。特に雪の日の翌朝、青空に映える雪景色は美しいものです(写真1)。しかし、降る雪の度が過ぎると大変なことになります。今年(2010年)は、1月末から2月初め、アメリカの北東部では大雪となり、2月10日午後(現地時間)には積雪が139.4㎝になりました。ワシントンでは1898年~99年に記録した138.2㎝の積雪を111年ぶりに更新しました。この大雪でワシントン近郊では停電が発生し、暴風雪のため車の運転が禁止になった地域もありました。アメリカのあるウェザーキャスターが書いた記事ですが、その時期になり天気予報で「S・・」と言っただけでその地方の人々は日用品や当座の食糧を買いに走るというような内容のものを読んだことがあります。
 大雪に対する事情は日本でも同じです。古い話ですが、江戸時代後半の天保年間に、当時の雪国の生活を描いた随筆集「北越雪譜」が江戸で出版されています。著者は、越後の国塩沢(現在の新潟県魚沼市)に住む商人、鈴木牧之(ぼくし)です。「北越雪譜」の最初の方にある“初雪”いう項には次のような文章があります。

江戸には雪の降らざる年もあれば、初雪はことさらに美賞(びしょう)し、雪見の船に哥妓(かぎ)を携へ、雪の茶の湯に賓客を招き、青楼(せいろう)は雪を居続(ゐつづけ)の媒(なかだち)となし、酒亭(しゅてい)は雪を来客の嘉瑞(かずゐ)となす。・・・(中略)・・・・ 雪を観て楽しむ人の繁花(はんくわ)の暖地に生たる天幸を羨ざらんや。

 更に読み進むと、雪崩や吹雪の恐ろしさも書かれています。現在と違い、様々な情報伝達網や除雪対策が整っていない当時は大変だったと思います。そうは書きつつも、当時のその地域の名産だった“越後縮”をさらすときの雪の有用性も書かれていて、豪雪に耐えて、豪雪と戦って生きている人々の暮らしぶりも書かれています。
 今冬は暖冬気味で始まりましたが、昨年(2009年)12月中旬にいきなり強い冬将軍が来ました。(図1)は2009年12月18日の地上天気図です。典型的な冬型の気圧配置です。等圧線が何本も並んだところは新潟から西で、そこから北では北海道北部まで等圧線が描かれていません。そこが曲者で、このような地域には小さな低気圧が潜んでいます。(図2)の500hPaの天気図を見ると日本海に-42度以下のとても冷たい空気があることがわかります。つまり、それらの小さな低気圧の上空には冷たい空気があって大気の状態が不安定で、垂直方向に雲が発達しやすく、それが通過する地域で大雪が降りやすくなります。


(図1)2009年12月18日9時の地上天気図

(図2)2009年12月18日9時の500hPa天気図
(実線は等高度線、赤点線は等温線)

 12月中旬の寒波では、(図1)の天気図では等圧線が描かれていない地域にあたる、山形県の日本海側の庄内でも大雪になりました。12月17日に鶴岡市内では鶴岡公園にある市の観測記録が83㎝となり、4年ぶりに豪雪対策本部が設置されました。鶴岡市役所近くにあるお寺の知り合いのご住職から12月末に頂いたお便りに、「師走の大雪にビックリというよりもがっかりしております。」と書いてありました。別の方から頂いた年賀状にも、お墓が埋まるほどの大雪と書いてありましたので、生活するにも大変だったのでしょう。雪国のお寺はどこも同じでしょうが、ご本堂の回りに雪囲いをして、お参りに来る人に不便をかけないようにしています。準備が間に合ってくれればと思いました。

(天気図は気象庁提供)


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