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お天気豆知識

天気図の記事一覧

No.62

2006.3 Categories天気図

高層天気図と温度

 電車が走る音は、私が子供の頃は「ガタンゴトーン、ガタンゴトーン……」でしたが、今なら「ゴーッ」かもしれません。現在のレールは繋ぎ目の少ないロングレール(写真1右)が主流ですが、昔は(写真1左)のような繋ぎ目だけでした。(写真1左)から分かるように繋ぎ目には隙間があります。だから電車の走る音は「ガタンゴトーン、ガタンゴトーン……」でした。もし(写真1左)の繋ぎ目で、そこに隙間が無かったらどうなるでしょう。夏の暑い日には熱でレールが延びて盛り上がり、電車が走れなくなります。そのようなことが起こり、電車が走れなくなったというのを、ニュースで聞いたことがありました。


(写真1)線路の繋ぎ目

 このように金属は暖められると延びます。しかし、長さが変わっても重さは変わりません。さて、空気の場合はどうなのでしょう。空気の重さは圧力、気圧です。地上での気圧は同じで、暖かい空気の柱と冷たい空気の柱を考えると、ある気圧になる空気の柱の長さ、高さが違います。冷たい空気の方が暖かい空気よりも、柱の高さが短くなります。(図1)を見てください。例えば、地上の気圧が1000hPaで、暖かい空気の柱と冷たい空気の柱で500hPaの気圧になる高さを比べると、冷たい空気の柱の方が暖かい空気の柱よりも、500hPaの気圧となる高さが低くなります。


(図1)冷たい空気の柱と暖かい空気の柱の高さの比較

 (図1)のようなことは天気図ではどうなのでしょう。(図2)の500hPa高層天気図を見てください。


2005年8月8日午前9時                 2005年12月13日午前9時
(図2)500hPa高層天気図

 左は太平洋高気圧に覆われ、東北地方南部より西の日本各地で最高気温が30度を超えた日の500hPa天気図で、右は冬型の気圧配置となり、関が原付近の雪で東海道新幹線が遅れた日の500hPa天気図です。点線は気温が等しいところを結んだ線、等温線です。夏の天気図(左)は-6℃の等温線が日本付近にあり、中国大陸東岸から台湾にかけては-3℃の等温線があります。一方、冬の天気図(右)は-30℃の等温線が本州中部を東西に伸びていて、北海道北部から樺太には-42℃の等温線があります。冬の天気図ではとても冷たい空気が日本列島の上空にあることが分かります。
 今度は実線を見てください。前にもお話しましたが、実線は気圧が500hPaとなる高さの等しいところを結んだ線で、等高度線と言います。左の夏の天気図で日本列島付近にある等高度線は、5,880mか5,820mです。一方、冬の天気図(右)は5,400mの等高度線が本州の南海上から九州を通っています。その差は約400mとなっています。地上気圧は両方の天気図で同じではないですが、冬の方が、気温が低いときの方が、500hPaとなる高さが低いことが分かります。
 500hPaよりももっと高いところでも、(図1)のようなことは同じで、空気の柱の温度が低い方が、ある気圧になる高さが低くなります。我々が生活していて、いろいろな気象現象が起こっているところを対流圏と言い、その上には成層圏があります。対流圏と成層圏の境目を圏界面と言いますが、冬の圏界面は夏よりも低くなっています。同じ空でも、冬の方が空が低い?と言えるかもしれません。(図1)のように、「暖かい空気のほうが、冷たい空気よりも、ある気圧になる高さが違う」ということは、さまざまな気象現象を理解するための、重要な性質の一つです。

No.61

2006.2 Categories天気図

高層天気図と風

 「高層天気図」では、いろいろな高さの天気図が作られ、使われ方もさまざまであることをお話しました。今回は高層天気図と風の関係をお話しましょう。地図を見ると、川の流れは等高線をほぼ直角に横切るように流れています。地上天気図で、気圧の高い方から低い方に向かって等圧線に対してある角度で風が吹きますが(空気が流れる)、高層天気図ではどうなるのでしょう。もともと空気は気圧の高い方から低い方へと流れようとします。しかし、地表面との摩擦がほとんど無い高いところ、つまり高層天気図を作る高さになると、地球が自転していることにより、ほぼ等圧線(高層天気図では等高度線)に沿って空気が流れます。北半球では、高度の低い方が左になるようにして、等高度線に沿って空気が流れています、風が吹きます(図1)。


(図1)等圧線、等高度線と空気の流れ(風の吹き方)<北半球の場合>

 空気の流れる速さ、風の強さはどうなるのでしょう。急な斜面でボールは勢いよく転がります。地図で等高線の間隔が狭いところを流れる川では、流れが速くなっています。地上天気図も等圧線の間隔が狭いと、強い風が吹きます。高層天気図も同じで、等高度線間隔が狭いところでは、強い風が吹きます(図2)。


(図2)等高度線間隔と風速

 それぞれの観測所で観測された風は、高層天気図に矢羽根で風向と風速が表現されています。軸が風向を表し、それに付いている棒や旗が風速を表します。棒が1本だと10ノット、2本だと20ノット、三角の旗が1つで50ノット、2つで100ノットという具合です。半分の棒は5ノットを意味していて、これらの組み合わせで風速を表します。例えば(図3)右図で赤丸をつけた地点を見ると、軸が西南西から東北東に向かっていて、三角の旗が1つ、棒が4本、半分の棒が1本となっています。これは、西南西の風で95ノット、約43m/sの風が吹いていることを意味します。時速に直すと約155kmとなります。特急電車並みの早さで空気が流れている、風が吹いています。
 (図3)は去年(2005年)の8月8日(左)と12月13日(右)の500hPa天気図です。去年は夏が暑く、真冬の寒さが12月に入ったら急に訪れました。8月8日は東北南部より西で日中の最高気温が30℃以上の真夏日となりました。12月13日は冬型の気圧配置が強まり、関が原付近の雪でこの冬初めて東海道新幹線が遅れました。


2005年8月8日午前9時(日本時間)         2005年12月13日午前9時(日本時間)
(図3)500hPa高層天気図

(図3)の天気図には太い線や細い線(どちらも実線)がありますが、この線は気圧が500hPa となった高さを表しています。つまり等高度線です。点線は等温線です。等温線のことは考えず、等高度線と、風のデータだけに注目して両方の天気図を比べてください。日本付近の等高度線の間隔を見ると、12月13日の天気図は間隔が狭く、8月8日の天気図は間隔が広くなっています。風速を表す記号も、12月13日の天気図の方が三角の旗が付いていて、棒もたくさん付いています。一方、8月8日の天気図は、三角の旗は見ることができず、棒が付いていても1本と2本で、中には半分の棒だけのところもあります。12月13日の天気図のほうが、8月8日の天気図よりも日本付近の上空で強い風が吹いていることが分かります。共通していることは、軸の向きがほぼ等高度線に沿っていることです。  上空の強い風は、地上で生活しているとあまりピンときません。しかし、旅客機の運行には影響があります。東西方向に飛行するような路線、例えば東京と九州を飛行する場合で、(図3)右の12月13日のように上空で強い西よりの風が吹いているときは、東京から九州に向かうときよりも、九州から東京に向かうときの方が、飛行時間が短くなります。日本からアメリカに向かう場合は上空の西寄りの風が強い所を飛ぶと、燃料代が節約できるそうです。

No.59

2005.12 Categories天気図

高層天気図

 「天気図」では地上天気図のことをお話しました。気象の観測は地上だけでなく、上空の温度や湿度、風や気圧の観測も世界中で同時に行われています。どうやって観測するかというと、水素またはヘリュームガスを入れた大きなゴム風船に観測機器をぶら下げて(ラジオゾンデ)放ちます。ラジオゾンデは上昇しながら測定し、電波でデータを送ってきます。このデータを使えば、いろいろな高さの天気図、高層天気図を作ることができます。

 地上天気図は海面上の気圧分布ですが、高層天気図はある気圧になった高さの分布を示した天気図です。毎日の天気予報に使われる天気図は、下から850hPa天気図、700hPa天気図、500hPa天気図、300hPa天気図です(図1)。


(図1)高層天気図の種類

① 850hPa天気図
 上空約1500mの高さの天気図で、地表面の摩擦や熱などの影響がどうにかなくなる高さです。例えば、晴れた日には太陽の光で地面が温められると、それに接している空気も暖められます。しかし、850hPa面の高さになると、その影響がほとんどなくなります。このため、どのような性質の空気、つまり“暖かい空気が覆っているか”、“冷たい空気が覆っているか”などの判断に使います。もちろんこれ以上の高さの高層天気図は地表面の影響がさらに小さくなります。
 この高さの湿度と気温を組み合わせて、大雨になるかどうかの判断にも使います。よく天気予報で、「暖かく湿った空気が入り込むため大雨になります。」と言っているのを聞いたことがあると思いますが、この高さの空気のことを言っています。

② 700hPa天気図
 上空約3000mの高さの天気図です。気圧の谷や峰の動きや、それに関連した寒気や暖気のようすが分かります。少し専門的な話になりますが、この高さで上昇流や下降流を計算し、これより下の850hPa面の水蒸気の状態と組み合わせて、どの地域に雨が降りやすくなるかの判断に使います。“雨雲”もこの高さです。
 この高さで、気圧の谷が来れば天気が悪くなり、気圧の峰が来れば天気が良くなるのは地上だけでなく山でも同じです。日本アルプスがこの高さなので、日本の高い山に登る人は、この高さの天気図は重要です。


(図2)2005年2月1日午前9時の500hPa天気図

③ 500hPa天気図
 上空約5500mの高さの天気図です。いろいろな気象現象が起きている対流圏のほぼ中間に位置していて、対流圏のほぼ平均的な空気の流れを見ることができます。台風はこの高さの空気の流れに流されます。
 冬に天気予報で、「日本の上空(主に輪島や秋田)に氷点下××度の空気が入っているため、日本海側では大雪・・・」と言っていますが、この高さの天気図のことです。
(図2)は2005年2月1日午前9時の500hPa天気図です。地上天気図は西高東低の冬型で、この冬一番の寒気が入りました。高知市ではこの日に6cmの雪が降り、18年ぶりの大雪になりました。九州の南にある種子島でも6年ぶりに雪が降りました。
 黒い実線は気圧が500hPaとなっている高さを表しています。点線は温度が等しいところを結んだ等温線です。北陸地方で大雪の目安となる-36度の等温線が関東から瀬戸内海付近まで南下しています。-40度以下を観測したところは赤紫に色を付けました。日本列島の上空に、とても冷たい空気の入っていることが分かります。
 北海道の西に「L」のマークがありますが、500hPaの高さの低気圧の中心です。矢羽根は風の強さと風の向きを表しています。高層天気図と風については別の機会に説明しましょう。

④ 300hPa天気図
 対流圏の高いところで、約9000mの高さの天気図です。地球をグルット回っているジェット気流がどこにあるかを判断します。ジェット気流の位置や強さは、冬の寒気の様子や、日本の東海上から大陸まで連なる梅雨前線のような大規模な前線と密接な関係があります。
 国際線のジェット機はこれよりも高いところを飛びますが、強いジェット気流を利用したり避けたりして飛ぶので、航空機の運行にも欠かせない天気図です。

No.58

2005.11 Categories天気図

天気図

 各地にある気象台や測候所では、毎日決まった時間に天気だけでなく、気圧や風、温度・湿度、降水量(雨や雪の量)などを観測しています。このような観測は、地球上の全ての観測所で同時に行われています。それぞれの観測所で得られた結果を天気図に記入し、同じ気圧のところを結んで線(等圧線)を引くと天気図が描けます。

 しかし、観測所は場所により高さが違います。各観測所の気圧をそのまま地図に記入して等圧線を描くと、高いところにある観測所ほど気圧が低いため、高度の高い地域は必ず低圧部となってしまいます。そんな不自然なことはないですよね。天気図には海面上の値になおされた気圧(海面更正値)を記入して等圧線を描きます。地上天気図とは、つまり新聞やテレビで見る天気図は高さ0m、海面と同じ高さの圧力分布図です。

 天気図には高気圧・低気圧が記入されていますが、何hPa 以上を高気圧と呼び、何hPa 以下を低気圧と呼ぶのかという疑問をもったことはないでしょうか。「高さと気圧」では高さ0mの標準的な気圧は1013hPaだと書きましたが、1013hPaを境にしてそれより気圧が高い地域を高気圧、それより気圧が低い地域を低気圧にしているのではありません。1枚の天気図の中で、周辺よりも気圧が高く等圧線が丸く閉じているところが高気圧で、低気圧は周囲より気圧が低く等圧線が丸く閉じているところです。

 高気圧の中心は広いので、尖った一点ではなく、地形図で言うならば高原のようなものです。低気圧は噴火口や盆地に対応します。また、地形図と同じように、等圧線(等高度線)が谷状になっているところを気圧の谷、尾根状になっているところを気圧の尾根(気圧の峰ともいう)と呼びます。


(図1)2005年11月7日12時の地上天気図
 赤い両矢印:気圧の谷 青線:気圧の峰

 (図1)を見てください。高気圧は揚子江河口付近や日本の南海上、北海道の東海上にあります。低気圧は関東の東海上と北海道の西の海上とシベリアにあり、アリューシャン列島にもあります。気圧の谷は、渤海から中国大陸かけて(赤の両矢印)あります。気圧の峰は日本の南海上にある高気圧をほぼ東西に貫くような位置(青の二重線)にあります。前線も描かれています。線の右に半円が並んでいるのが温暖前線で、やはり線の右に三角が並んでいるのが寒冷前線です。北海道の西にある低気圧からは途中まで半円と三角が線の右側に同じ方向を向いて交互に並んでいます。これが閉塞前線です。この天気図にないですが、線の上に半円、下側に三角があり、それが交互に並んだのは停滞前線です。

 高気圧や低気圧に白抜きの矢印があってその脇に数字が書いてあります。例えば、関東沖の低気圧ならば、「20KT」と書いてあります。矢印は北東に向いています。「KT」は速度で、「ノット」です。2倍すると時速になります。関東沖の低気圧は「北東方向に時速40kmで進んでいます。」ということを表しています。高気圧や低気圧の場合は、半日程度はこのままの方向と速さで進みますから、いつごろどこに高気圧や低気圧が進み、天気がどうなるか、大体見当がつけられます。


(図2)2005年10月16日9時の地上天気図

 (図2)は今年(2005年)の10月16日9時の地上天気図です。 日本の南海上には台風20号がありますね。この台風はなかなく動かなくて、「いろいろ予定があるのにどうなるだろう。」と、気をもんだと思います。矢印が東北東に向いていて、速度は「ゆっくり」となっています。しかし、台風の進路予測では北上して日本に向かうようになっていました。台風は、進路を変えたり、スピードが速まったりすることがよくあるので、「今こう進んでいるから、こっちにはこない。」と思わないで、必ず台風情報を、最新の台風情報を確かめてください。

 (図2)の天気図を見ると、本州の太平洋側に半円と三角がそれぞれ反対方向を向いて互い違いに並んでいる線がありますね。これが停滞前線です。

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